第十二話 ランクアップ、シンシアとの夕食

 ロングロングの洞窟の全モンスターを一掃した僕たちだったが、ドロップ品の数があまりにも多すぎて拾いきれないために、一度ギルドに戻って人を呼んでくることにした。


 疲れて眠っているシンシアを背負い、ギルドに戻った僕は、彼女を医務室に連れて行き、ベッドに寝かせた。


 そして酒場にいた冒険者たちに事情を説明し、いっしょにロングロングの洞窟に来てもらった。


 もちろんみんなにも報酬を分け与えるということを説明した。そしてギルド長にもたくさんのドロップ品をギルドに納品するという条件付きで、大勢でダンジョンへ行く許可をもらった。




「うひゃあああ! なんだこのドロップ品の山は!」

「これはすげえや!」

「ラルクさん、これ俺たちにも分けてもらえるんですかい?」


 数十人の冒険者たちを連れて、ダンジョンに戻った僕は、全員で手分けしてドロップ品をギルドへ運んだ。


「こんな山のような報酬見たことねえや」

「先日のダークロード討伐に引き続き、ラルクさんはすげえことやってくれるなあ」

「俺あの人についていこうかなあ」


 僕は、嬉しい声をかけてくれる彼らといっしょに、談笑しながらギルドへ戻った。


 結局一度では運べなかったので、二度、三度と往復して、ギルドの倉庫にたくさんの素材やアイテムを運び込んだ。


 中にはかなり貴重なアイテムもあったらしく、ウワサを聞きつけた商人たちもゾクゾクと集まって来て、夜まで品定めが続いていた。


 ギルド長は申し訳ない顔で僕に報酬金を渡してきた。


「いやあ、これ、今回の報酬金なんだが、調査クエストということもあって非常に少なくてなんだか申し訳ない……」


 僕はギルド長から10000ゴールドを受け取った。


「全然いいですよ。元々はこれだけの報酬金でしたからね」


「本当に悪いなあ。あんなにたくさんのドロップ品も納品してもらったのに、まあ

納品してくれたアイテムの代金は後日渡すから待っててくれ。それに商人ギルドでもラルクさんの名前は有名になったと思うから、彼らから個別に案件が来ることもあると思う。その時はまたよろしく頼むよ」


「わかりました。ではまた」


 商人ギルドや、貴族からの個別依頼のクエストは、通称『案件クエスト』と言って、かなり報酬がいいことで有名だった。


 僕とシンシアの冒険者ランクはCランクになり、パーティとしてのランクもCランクに上がった。

 これで次から受けられるクエストの幅がまた広がった。




 僕はギルド内で他の冒険者と雑談していると、しばらくして、シンシアが目を覚ましたらしく、医務室から出てきた。


「あ、シンシアさん、気が付いた?」


「ラルクさん、わたしまた寝ちゃったみたいで、ごめんなさい」


「いいよいいよ。じゃあ宿舎に帰ろうか」


「はい」


 ──ぐううぅぅ。


 その時、腹の鳴る音がした。僕の腹じゃない。


「あ、やだ、私ったら」


「おなかすいたんだね。ここで何か食べてく?」


「ここはちょっと、もう少し静かなところがいいですね」


「そうだね。ここは他の冒険者がうるさいしね」


 夜の冒険者ギルドの酒場は、大勢の人で溢れかえっており、大声で喋らないと、話声も聞き取れないほどだ。


「じゃあ、僕の行きつけの食堂でいっしょに食事していかない?」


「ええ! ラルクさんの行きつけのお店ですか! 是非案内してください!」


 こうして僕たちはギルドを出て、帰路に着いた。


 そして僕は、よく食事をするお店へシンシアを案内した。


「ここは小さなお店なんだけどチーズオムライスがおいしくってね。僕はいつもこれなんだ」


 僕たちは席についてメニューを決めた。


「じゃあわたしは、このミートシチューを食べてみたいです。あとそのチーズオムライスとチーズハンバーグも」


「いいね、じゃあ注文しよう。おばちゃーん!」


 僕とシンシアは、その後楽しく食事をした。


「そうそう、今日の大量のドロップ品は商人ギルドがまとめて買い取ってくれることになったよ。お金は今度ギルドからまとめて支払われるってさ。かなりの額になりそうだよ」


「そうなんですか」


「うん、だから今日のここの代金は僕がまとめて払っとくね」


「本当ですか? じゃあお言葉に甘えますね」


 そう言ってシンシアは箸を進めた。彼女はおとなしい性格だが、その食べっぷりはなかなかのものだった。


「ここのお料理、おいしいですねえ。ラルクさん、デザートも食べてもいいですか?」


「ああ、いいよ。僕もハニーソフトを食べようかな。これがオススメでおいしいんだ」


「じゃあわたしは、ハニーソフトとタルトケーキをお願いします」




 僕たちは二人ともおなかいっぱいに食べた。


(シンシアはホントによく食べるなあ)


「おばちゃん、ごちそうさま。いくら?」


「1800万ゴールドだよ」


「ほい、じゃあ2000万ゴールド!」


「はい、おつり」


 僕はおばちゃんとお決まりのやり取りをして、お釣りの200ゴールドを受け取った。


「その子は新しい仲間かい? かわいい子だねえ」


「おばちゃん、よしてよ」


「おばさん、とってもおいしかったです。ごちそうさまでした」


「いい子じゃないか。ラルク。いい仲間ができてよかったねえ」


「はは、じゃあまた来るよ」


 僕たちは、お店を後にして宿舎に帰ることにした。


「じゃあ、シンシアさん。またね!」


「はい、ラルクさん。今日はお疲れさまでした」


「うん」


「あの、わたしのことは、さんづけじゃなくて呼び捨てにしてもらっていいですよ?」


「え! そう?」


「はい、その方が早いですし、わたしはかまいませんよ」


「シンシアさんがそう言うなら、あっ、シンシアがそう言うなら、じゃあシンシアって呼ばせてもらうね」


「はい、わたしはラルクさんって呼びますけどね」


 彼女はそう言って、無邪気に笑った。


「うん、わかった。じゃあまたね! シンシア」




 こうして僕らは帰路に着いた。


 後日、今日のクエストで得たドロップ品の買取金を、ギルドからもらった僕たちは驚愕することとなる。






──────────────────────



次回は、またエリックたちのお話になります……



あとがき


読んでいただきありがとうございました。


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