Sランクパーティを追放された荷物持ちは、大聖女とイチャラブしながら成り上がる。ヘイト管理の重要性にようやく気付きましたか?~今さら戻ってこいと言われても、もう手遅れです~
『†栄光の騎士団†』の栄光への道 Ⅵ エリック視点
『†栄光の騎士団†』の栄光への道 Ⅵ エリック視点
先日、使えない荷物持ちのラルクを追放した勇者パーティのリーダー、俺ことエリックは、仲間と共に冒険者ギルドを訪れていた。
「ちょっとエリック! この前みたいなことには絶対にならないようにしましょうね」
「わかってるって!」
ノエルが、先日のクエスト失敗の件で、小言を言ってくる。
「アリサ! あなたもしっかりと支援を切らさないように頑張ってよね!」
「わかったわよ。ちゃんとMP回復ポーションを持てばいいんでしょ!」
ノエルとアリサの仲が、少し険悪になったようだ。
(はあ、めんどくさい)
「やあ、エリックさん! 聞いたかい。あんたのところにいた荷物持ちが、また手柄を立てたらしいぜ!」
他の冒険者が急に声をかけてきた。
「なんだと?」
「ほら、ラルクさんだよ。ずっと放置されていた中級ダンジョンにすごい量のモンスターがいたらしくてな、それを彼が一掃したらしいんだよ。そしたらなんとドロップが大量に出たらしくて、俺もおこぼれに預かったんだよ。いやあ儲かった!」
ドンッ!
俺は、そいつの胸をどついて、突き飛ばした!
「イテテ! 何すんだ?」
「貴様、二度と俺の前にツラを出すな。あとラルクの話を広めるのもやめろ。命が惜しかったらな!」
俺は、そいつを睨みながら凄んだ。
「ちょっと、エリック、やめなよ」
ノエルが止めてきた。
「な、なんだよ! あんた、どうかしてるぜ!」
その冒険者は、そう言うと去っていった。
しばらくしてアーサー殿下も合流した。今日はアレスとかいう騎士団長のおっさんは見当たらない。俺は少し胸をなでおろした。
「アーサー殿下。その後、傷はどうですか」
「大丈夫。問題ない。前回は君も調子が悪かったのだろう。厳しいことを言ってすまなかったな。またよろしく頼む」
「いえいえ、とんでもございません。こちらこそよろしくお願いします」
先日のダンジョン攻略の際は、アーサー殿下に大ケガを追わせてしまい、かつて英雄と呼ばれたアレスという騎士団長にお叱りを受けてしまった。あんな屈辱は初めてのことだった。
だが、同じ失敗を二度もするわけがない。あの日は特別に調子が悪かっただけなのだ。
「何やら、ギルド内が騒がしいな。何かあったのか」
「さあ? なんでも誰かが放置されていた中級ダンジョンをクリアしたとかで話題になってるみたいですが、たかが中級ダンジョンなんでね。何をそんなに騒いでいるのやら」
俺は、ぶっきらぼうに答えた。
「ふーん、そうか。なあ、エリック。実は知り合いから個別に依頼を受けたんだが、今日はいっしょにここへ行ってくれないか。詳細はこれだ」
アーサー殿下はそう言って、クエスト受注表を見せてきた。
「お、案件ですか! いいですねえ。どれどれ」
『緊急クエスト: マウリの里を救え! 禁忌の洞窟の封印。強者求む 報酬:50000ゴールド』
(50000……、5万ゴールドだと? 少なすぎる)
普通にこなせる上級クエストでも少なくとも30万ゴールドは報酬がもらえる。Sランクパーティが受けるクエストとして、この金額は余りにも少なすぎる。
(クソッ! とんだハズレ案件だ)
俺はすでに受ける気はなく、当たり障りなくどう断ろうかを考えていた。
「へぇ〜、緊急クエストですか。けっこう急な案件なんですね」
殿下の頼みとなると断りにくい。なるべく、角が立たないように断りたい。
「このマウリの里ってのは、どこにあるんですか。遠いんですかね」
聞いたことない村の名前だった。どうせ山奥にある小さな村だろう。こんな村がどうなろうと知ったことではない。
「西の山奥にあるらしい。行くだけで半日はかかるから、何泊かすることになるだろうな」
(勘弁してくれ。たった50000ゴールドぽっちの報酬のために何日も潰せるかよ)
俺はなんとか断る理由を考えて口に出してみる。
「遠いんですねえ。あっ! そーいえば! 明日か明後日に知り合いから案件クエストを頼まれているんですよ。確か簡単そうなクエストで報酬は150万ゴールドだったかなあ」
「え〜! 150万? すごいじゃーん!」
アリサが反応してくれる。
「父上の知り合いの貴族からの頼みでな。小遣い稼ぎとしては最適かなあ」
「そうか。では申し訳ないが、それは断ってくれるか?」
アーサー殿下は申し訳ない素振りなど一つも見せずに、即答した。
「え、本当に言ってますか?」
「ああ、マウリの里の者が困っているのなら見過ごせないだろう。Sランクパーティの受けるクエストは報酬金だけで決めるのではなく、世の中に対する貢献度においても決めねばならないと思うのだが」
「はは、さすが殿下! おっしゃる通りです」
(クソッ、殿下のやつ最初から受けるつもりで話を持ってきてやがる。断れる雰囲気じゃないな。しょうがねえ行くだけ行くか)
「もちろんですとも。では、行きましょう! マウリの里を救うために」
「やってくれるか! さすがだエリック!」
こうして俺たち『†栄光の騎士団†』は山奥の村、マウリの里を救うために出発した。
道中は大変険しい道のりで4時間もかかった。マウリの里に着いたのは夕方で、もうクタクタだったので休みたかったが、村には宿も無いという。
仕方なく、泊めてもらうために、まずはマウリの村長に挨拶をすることにした。
「ワタシが村長だ! 今回は危険な任務を引き受けてもらってすまないな! オマエたちがSランクパーティと聞いて安心した。どうかよろしく頼むぞ!」
出てきたのは大柄な女だった。身長が2メートルくらいある女で、歳は20代後半だろうか。村長と呼ぶにはかなり若い。
短い赤髪を逆立たせて、頭には民族の物と思われる髪飾りをつけている。無表情で無骨な筋肉質の女だった。
(なんだこの怖そうな女は! しかしけっこういいスタイルしてやがる)
彼女は肌をたくさん露出したビキニのような鎧を着ていた。嫌でも胸と尻に目がいってしまう。
「村長、礼には及びません。洞窟には明日、足を運びます。今日はもう休みたいのですが、さっそく宿を提供してもらえませんか」
「実は、この村は男子禁制でな。女人しかおらぬゆえ。男性であるオマエたち二人には馬小屋で寝てもらうことになるが、それでもよいか」
「はっ? 馬小屋だと?」
(こいつ、ふざけてるのか。クエストを依頼したのはお前らだろうが、しっかり宿を用意しとけよ)
「アーサー殿下。だそうですけど、どうしますか」
「仕方あるまい。お心遣いいただきありがとうございます」
「オマエたち! 寝る前に少しいいか。見てほしいものがあるので、ワタシについてきてくれないか」
村長は有無を言わさない威圧感で俺たちに言ってくるので、しぶしぶついていった。
案内されたのは村の外れだった。
そこには、一本の剣が地面に刺さっていた。
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次回、果たしてエリックは剣を抜くことができるのか……
あとがき
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