第九話 大聖女の日記 シンシア視点
今日はとても嬉しいことがありました。
今までの人生で一番嬉しいことだったかもしれません。
初めて自分のスキルを使って、仲間と困難に立ち向かうことができました。
あ、嬉しいことというのは、その彼からプレゼントをもらったことなんですけどね。
聖女として冒険者にスカウトされたあの日、覚悟を決めて旅に出ました。
それはとても大変なことでした。パーティの皆さんは私のことを足手まといだと言い、たくさんの非難を受けました。
ですが逃げてはいけないと思いました。私を期待して送り出してくれた教会の皆さんが失望してしまうと思ったからです。
それはとてもつらいことではあるのですが、やはりパーティの皆さんに厳しくされることのほうが、ずっとずっとつらかったのです。
パーティを追放されたとき、少しホッとしたのは事実です。なぜなら、あの粗暴な方たちとようやく別れることができたからです。
そして、彼との運命の出会いが待ってました。
彼は私にとってのよき理解者でした。彼もまた私と同じ境遇だったので、私たちはすぐに打ち解けました。
そして、仲間からさんざん使えないと言われた私のスキルのことを聞いても、否定することなくいっしょに検証してくださったのです。
結果は、言葉では説明できないくらい、ここに書ききれないくらいすごいことが起こったのですが、その後にもっと驚くことが待っていました。
彼が、素敵なペンダントをプレゼントしてくれました。
私は、母からもらったペンダントを無くしたことを、すごく悔やんでいました。一生大事にしようと思っていた物を簡単に無くしてしまった自分を責めていましたから。
そんな私を励まそうとしてくれた彼の思いやりが、温かくてとてもとても嬉しかったのです。
このペンダントは一生大事にしていこうと思います。
もちろん彼のこともずっと大事に……
「はぁっ! わたしったらなんてことを」
わたしは、最後の一文を慌てて消しました。なんだか今は変な気分になっているようです。
日記を書き終えた私は、シャワーを浴びて就寝の準備をしました。
いつもなら寝る時間なのですが、今は心が落ち着かず、眠くありません。
「早く寝なければ明日に差し支えますね」
鏡を見ながら胸元にあるペンダントを見つめました。
「ラルクさん、今頃何してらっしゃるんでしょう。もうおやすみになってるでしょうか」
彼のことを考えると、なんだか恥ずかしくて、明日からまともに顔を見れないかもしれません。
わたしは、そんな心配をしながら、その夜は布団に入りました。
「今夜はいい夢が見られますように……」
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