Sランクパーティを追放された荷物持ちは、大聖女とイチャラブしながら成り上がる。ヘイト管理の重要性にようやく気付きましたか?~今さら戻ってこいと言われても、もう手遅れです~
『†栄光の騎士団†』の栄光への道 Ⅴ エリック視点
『†栄光の騎士団†』の栄光への道 Ⅴ エリック視点
俺はアーサー殿下を抱えたままダンジョンを
その後、俺たちは冒険者ギルドまで戻り、急いでアーサー殿下を医務室へ運んだ。すぐにギルドから報告がいったらしく、宮廷医が飛んできた。
アーサー殿下の傷の治療が行われている間、俺は医務室の前で待っていた。ノエルとアリサはくたびれたようで、別室で休んでいる。
するとそこへ、ギルド長が渋い顔でやって来た。隣には見知らぬおっさんがいる。
「やあ、エリックさん。あんたのパーティがクエスト失敗なんて初めてのことで、俺もなんて言ったらいいかわからんのだが……」
「ギルド長。今回はとんだ災難だったよ。雇った荷物持ちに逃げられて物資を失った。この結果は致し方なかったんだ」
「ああ、そうか。そうだったのか。まあ、別に俺は、あんたを責めるつもりはないんだが……んん」
「あの荷物持ち、名前なんて言ったかなあ。とにかくあいつはヤバい。即ブラックリストに入れてほしいんだが」
「そうだな。いや、そんなことより彼が話をしたいそうだ」
そう言ったギルド長の隣にいるおっさんは、鋭い目で俺を睨みつけている。
「はあ、俺も疲れてるんだけどな」
「おい! 貴様っ! さっきからその態度はなんだ! よくもアーサー殿下の身を危険に晒したな!」
そのおっさんは突然怒鳴り、俺の胸ぐらを掴むと軽々と持ち上げた。
「うわっ! なんだ! 何しやがる」
「ちょ、ちょっとアレスさん! 落ち着いて!」
ギルド長が慌てて止めに入るも、アレスと呼ばれたおっさんは俺を掴んだまま離さない。
(なんなんだこいつは! 俺を誰だと思ってやがる!)
俺はおっさんの腕を掴んで引き離そうとするが、その腕は微動だにしない。
(ぐっ! こいつなんて力だ!)
「アレス! やめるんだ!」
その時、アーサー殿下の声が廊下に響いた。治療が終わって医務室から出てきたようだ。
「ふんっ!」
俺はアレスと呼ばれたおっさんにぶん投げられた。俺の体は宙を舞って壁に激突した。
ドタン!
「いってえぇ! 何なんだ」
「アレス、乱暴はよせ。彼は今は僕の仲間だ。パーティリーダーでもあるんだから」
アーサー殿下はアレスと呼んだ男をたしなめた。そして俺に声をかけてきた。
「エリック、彼が手荒な真似をしてすまない。彼の名前はアレス。この王国の騎士団長だ。僕を含めた王族たちの護衛を担当してくれている」
「な、なんだって!」
(なんてこった。こいつがあの有名な英雄アレス! ただのおっさんだと思って見くびってしまった)
アレスという男の名は、この国の者なら一度は耳にする名前だ。元冒険者でもあり、現在は王国の騎士団長で、歴史上最も強い男とされる。生ける伝説、王国の英雄との呼び声も高い。
「エリックと言ったな。Sランク冒険者と聞いていたが、あの程度のダンジョンを攻略できないとはなんてザマだ。次にアーサー殿下を危険に晒すようなマネをしてみろ。ただでは済まんぞ」
(くそ! このおっさん、なんて威圧感だ。ここは素直に謝っておいた方が無難だな)
「は、はい。わかりました。気を付けます。アーサー殿下、今回の不手際、誠に申し訳ありませんでした」
「大丈夫だよ。幸い深い傷ではなかったし後も残らないだろう。まあ、冒険に危険は付き物だから、なかなかスリルがあってよかったよ。またよろしく頼むよ」
そうしてアレスとアーサー殿下は去って行った。
(ふう、なんとか乗り切った。この国の王子を命の危険に晒したとあってはどうなることかと思ったが、ほぼお咎めなしだったな)
「エリックさん。アーサー殿下が寛大な方でよかったですね」
ギルド長は冷や汗をかきながら、俺にそう言ってきた。
「はは、そうだな。ところでギルド内が何やら騒がしいな。何かあったのか?」
「ああ、実は今日、冥界の王ダークロードが討伐されてね。さっきからその話題で持ちきりだよ」
「何だと! ダークロード! 実在したのか? あれはおとぎ話の中のモンスターだと思っていたが。一体どこのSランクパーティが倒したんだ?」
「いや、それが……あんたのパーティをこの前除名になったやつがいたろ。あのラルクってやつさ」
(あ、ああ? ああああ?)
「あ?……」
俺は、耳を疑った。
「ギルド長、なんだって?」
「だから、そのラルクってやつさ。ダークロードを討伐したのは。いやあ、エリックさん。やっぱりあんたのパーティは大したものだねえ。ただの荷物持ちだった彼があんなに強いなんてね。まあ今回あんたがクエストに失敗したのはたまたま調子が悪かったんだろう? 次はいい報告を期待しているよ」
ギルド長が何やら言っていたが、その言葉はほとんど俺の耳には入っていなかった。
ギルド長が去ってからも、俺はしばらく廊下に一人、呆然と立ち尽くしていた。
(ラルクが、アイツがダークロードを討伐した……だと?)
しばらくして気を取り直した俺は、ダークロード討伐で盛り上がっている酒場を横目に、いそいそとギルドを後にした。
俺はフードを深く被って、誰とも目を合わせないようにして帰路についた。
クエストに失敗した事は、ギルド内で公表されるわけではないが、後ろ指を指される気がしたのだ。
それにもしかしてアイツに出会うんじゃないかと思ったのだ。俺は急いで宿舎に戻り、布団をかぶった。
(アイツがダークロードを討伐したなんて、何かの間違いに決まってる。くそおおおお、ふざけんな! 俺だってボスモンスター特化の技を磨いてるんだ。今度の冒険では大物の討伐を達成して、アーサー殿下や、騎士団長の英雄アレスにだって俺の強さを認めさせてやる!)
「俺は『†栄光の騎士団†』のリーダーエリックだ!」
俺は一人、ベッドの上でそう叫んだ。
その後、『†栄光の騎士団†』を待ち受けているのは、更なる悲劇だったことを、この時の俺は知る由もなかった。
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次回は、一話だけシンシア視点のお話になります。
あとがき
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