『†栄光の騎士団†』の栄光への道 Ⅲ エリック視点

 俺たちはリザードマンの群れに近づいた。すると奴らが2,3匹寄ってくる。

 近づいて来たリザードマンたちを、俺とアーサー殿下で食い止めている間に、後ろからノエルが魔法を打ち込んで倒した。


(完璧だ! 少数相手ならなんなく各個撃破できる。完璧な作戦だ。しかしこれではひどく効率が悪いな)


「とうっ! マスカレードスタブ!」


 アーサー殿下も先ほどと違って調子が出てきたのか、スキルを繰り出している。


「さすがですね。殿下。やはりお強い」


 俺は適当に殿下を持ち上げておいた。殿下には、帰った後、俺たちの功績を国王に伝えてもらわなければならない。彼の評価を上げておくことは大事だ。


「いい調子だな。もう少し進むぞ! 竜巻打撃トルネードバッシュ


 俺は向かって来るリザードマンたちを、まとめて吹き飛ばした。


「ちょっと、エリック! またペースが上がってるわよ。もう少し下がった方がいいんじゃない?」


「うるせえな、ノエル! 大丈夫だよ。それよりしっかり魔法で援護を頼むぞ」


「わかってるわよ!」


「エリック、マズいぞ。今の大技で向こうにいるリザードマンたちがこちらに気付いたようだ」


 アーサー殿下がまたもや俺に苦言をていしてくる。彼は少し慎重すぎる。


「ん、ああ、じゃあそいつらは頼みますよ。殿下の実力を見せてください」


「あ、ああ、わかったよ」


 殿下は本腰を入れて武器を構え直した。


(そうそう、それでいい。どっちみち今のペースじゃ200体にはほど遠い。結局は多少ムチャをしてでもペースをあげてもらわないといけないんだよ)


「俺はこっち側の群れをやるぜ!」


「ちょっと、エリック。またバラけちゃってない?」


「ねーねー。アタシはどっちを支援すればいいわけー? てかもうすぐMPが尽きかけるんだけどー」


 ノエルとアリサがぼやいている。とりあえずノエルの方は無視だ。こいつは俺に構ってほしくて声をかけてるんだろう。


「おい、アリサ、MPが尽きたならマジックポーションを飲めばいいじゃないか」


「だって、手元にないんだもん。道具は全部荷物持ちに持たせてあるから」


「はっ? お前なあ、すぐに使う分の道具くらい携帯しておけよ」


「なんで? 嫌よ。アタシ重い物持ったことないんだもん。いつもは全部に持たせてたんだから。アタシが欲しい時にすぐに手渡してくれたしね」



(ラルク、だと? アリサのやつ、今ラルクって言ったのか? なんでそこでその名前が出てくる?)



「ああ? 何だって? とりあえず荷物持ちの所へ行ってもらってこい!」


 俺は聞こえてないフリをして、アリサに指示を出した。


「えー、なんでアタシの方が行かなきゃいけないわけ? めんどくさい。アイツならすぐに持ってきてくれたのに」


「ちょっと、エリック。アリサを下がらせるなら、全員で一度引くべきよ。陣形ってものがあるんだから」


「うるせえ! 俺に指図するな! お前はいいから魔法を撃ち続けろよ」


「そんなこと言ったって、私だってMPが無くなるわよ。さっきからマジックポーション飲みまくってるんだから」


「わかったわかった。頑張れよ。お前の魔法の殲滅力にかかってるんだから。お前だけが頼りなんだよ」


 ノエルは適当に持ち上げておけば、気を良くして頑張ってくれる。俺にいいところを見せたくて必死だろうからな。


「ちょっと! 何よその言い方! アリサと比べて私の扱いがひどすぎるわよ! 私があなたの言うことを何でも聞くと思ったら大間違いよ!」


「う、うぅ!」


 ノエルのまさかの反論に、俺はたじろいでしまった。


「はあはあ、エリック。さっきの群れはなんとか倒したぞ」


 アーサー殿下が俺に報告してきた。


「おぉ、さすがです。殿下」


「しかし、また陣形が崩れて、色んな方向からリザードマンたちに囲まれているような気がする。君たち、いったい以前はどうやって立ちまわってたんだ?」


 アーサー殿下がそう呟いた。そしてその後のノエルの言葉に俺は耳を疑った。



「以前はがいたんです。は全てのモンスターのタゲ取りを行って、私たちにモンスターが近づかないようにしてました」



(は? ノエルのやつ今なんて言った?)



 ドンッ! 


「きゃあっ!」


 俺は気が付くと、ノエルに近づいて、彼女を突き飛ばしていた。


「エリック! 何するのよ」


「ガタガタうるせえ! 二度とその名前を言うんじゃねえ!」


「何よそれ、名前って何? ラルクのこと? どうしていけないの? あいつは以前私たちの仲間だった奴でしょ!」


「てめえっ! わからねえかこのやろう!」


「やめろ! 何をしているんだ!」


 気が付くとアーサー殿下が俺を両手で羽交い締めにしていた。


 俺は、右手を上げて剣を振りかざしていた。どうやら怒りで我を忘れていたようだ。俺はノエルに向かって剣を振り下ろそうとしていたんだろうか。


(しまった。な、なんてことを)


「エリック。一旦引くぞ。こんな状態じゃとても戦闘は無理だぐわああああああ」


 ズシャッ! ブシャッ!


「っきゃああああぁぁ!」


 ノエルの叫び声が響き渡る。後ろを振り返ると、アーサー殿下が苦悶の表情を浮かべていた。


 なんと! アーサー殿下は背中をリザードマンに攻撃されてしまったようだ。


「ぐわああ、痛い。熱い!」


 その時、ノエルが襲い掛かって来たリザードマンを倒してくれた。


「エリック! 今のうちにアーサー殿下を連れて逃げましょう!」


「そ、そうだな! よくやったぞノエル!」


 俺はアーサー殿下を肩に担いで、荷物持ちを待たせてある通路の岩陰へと戻った。


 殿下の苦しむ表情を見て、俺はなぜか自分が笑っていることに気付いた。


(大丈夫だ。アリサにヒールをかけてもらえば殿下の傷は癒えるだろう)


 しかし、またもや予期せぬトラブルに見舞われるなど、この時の俺は思いもしていなかった。






──────────────────────



次回、深手を追ったアーサー殿下を回復させることはできるのか……



あとがき


読んでいただきありがとうございました。


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