Sランクパーティを追放された荷物持ちは、大聖女とイチャラブしながら成り上がる。ヘイト管理の重要性にようやく気付きましたか?~今さら戻ってこいと言われても、もう手遅れです~
『†栄光の騎士団†』の栄光への道 Ⅰ エリック視点
『†栄光の騎士団†』の栄光への道 Ⅰ エリック視点
「しっかし、あいつがいなくなってせいせいしたぜ」
「ほんと、ただの荷物持ちみたいなところあったもんね」
「アタシ、アイツが役に立ってるの見たことなかったし」
勇者パーティのリーダーである俺こと、エリックは冒険者ギルドの酒場で、メンバーのノエルとアリサと共に食事をしていた。先日俺がパーティから追放した役立たずのラルクの話で盛り上がっていたのだ。
「あいつ、平民出身のくせに俺たちと同等のつもりでいやがったしなあ。初級冒険者だったあいつを拾ってやった俺たちに、もっと感謝してほしかったぜ」
「まあ、あいつっていっつも、私たちの荷物を持って周りを走り回ってただけだったしね」
ピンクのゆるふわウェーブの髪の毛を揺らしながら、魔法使いのノエル・ニールセンはそう言った。
四大属性を極めた侯爵家の令嬢であるノエルは、いつも切れ味鋭い魔法で敵を殲滅する。本当に役に立つ存在だ。
「荷物持ちは別に雇うんでしょ? アタシは何も持ちたくないよーだ」
すれ違う男たちが二度見三度見するほどの、華やかな美貌の持ち主。金髪碧眼が白い肌によく似合う。豊満なバストを持つ彼女の名前はアリサ・カーデシアン。
ヒーラーとして俺の身も心もいつも癒してくれる。
だが公爵令嬢であるアリサは、とても甘やかされて育ったため、超がつくほどのワガママだ。
まあ、彼女のようなじゃじゃ馬を乗りこなせるのは俺くらいのものだろう。俺の本命はもちろんアリサだ。
「安心しろアリサ、父上に資金を援助してもらったから。荷物持ちの一人や二人は雇えばいいんだよ」
「さっすが、ウィンザー家のご令息! 頼りになるぅ!」
アリサが自慢の胸を揺らしながら、俺を褒めてくれた。
全員が上流貴族出身の俺たちは、誰もが羨むSランクパーティだ。平民出身のラルクを入れていた時は、上級貴族の俺たちとは根本的な考え方が違っていたので、そこも不満だったのだ。
「ふふ、アーサー殿下をこのパーティに勧誘できたことで、父上からもお褒めの言葉をいただいたからな。これで俺たちも王族と固い繋がりができたわけだし安泰だな」
「ねえ、アーサー殿下ってどんな人なんだろ? 後で来るんだよね」
「アタシ、アーサー殿下に気に入られちゃったらどうしよぉ!」
「おい、アリサ! アーサー殿下に失礼があったらいけないから、あまり近づくなよ? お前は俺の支援を最優先に考えてくれたらいい。パーティの要はリーダーである俺なんだからな!」
アーサー殿下ほどのスペックの男が入るとなると、アリサが彼になびいてしまうのではないかと不安になった。まあ俺の強さと男らしさは、何者にも負けないから大丈夫だとは思うが。
アリサは、俺の言うことに耳を傾けることなく、隣のノエルに話しかけている。
「ねえ、ノエル? アタシがアーサー殿下に好かれちゃったら応援してくれる?」
「はあ? アリサってばそんなことばっかり言って。エリックの言う通り、うちのパーティはエリックがメインアタッカーなんだから。ねえー、エリック? 私はいつもエリックを見てるよ?」
「ん、ああ。これからも頼むな」
俺はアリサの胸元を見ながら、ノエルに気のない返事をした。
(まったくアリサのじゃじゃ馬っぷりったら困るぜ。ま、そこがいいんだけどな)
「しっかし、ラルクのやつ。Eランクの冒険者にまで落ちたらしいぜ。本当笑えるよな」
「あっははは、でも元々それくらいの実力じゃないの? だって戦闘力はエリックに比べたら相当低かったじゃん?」
「確かにな。俺たちといっしょにいたから、なぜかSランクの冒険者面してたけどな」
その時、隣のテーブルの奴らが話しかけてきた。
「よお、あんた勇者のエリックさんだろ? あんたたちのパーティの荷物持ち、さっきここで見たぜ?」
「む? ラルクを見たのか? あいつギルドで何をしていたんだ?」
「なんか誰かといっしょに薬草摘みのクエストを受けていたぜ。いやあ、あれには度肝を抜かれたよ」
「や、ややや! 薬草摘みだってえ! ぷ、ぷぷぷ」
「「「ぎゃーはっはっはっはっは」」」
俺たちは全員で笑い転げた。おかしくておかしくてこらえるのは無理だった。
俺たちのパーティを追放されたラルクが、落ちぶれて薬草摘みのクエストに行った。もうこれは笑うしかなかった。テーブルは大いに盛り上がった。
「腹いてえ、あいつも落ちるところまで落ちたな。だーっはっはっは」
「いひひっ! ひっ! ひぃ、苦しい。笑い死ぬ! 薬草摘みって受けるやつ本当にいたんだね」
「アッハハハー! ホント最高ねアイツは。地面に這いつくばって、雑草拾うなんてアタシだったら耐えられなーい」
「まったく、ラルクのやついい気味だぜ。今度会ったらからかってやろう。あいつが薬草摘みを頑張っている間に俺たちは、今まで通り上級ダンジョンを攻略しよう」
「そうね。あとでアーサー殿下と合流したら、さっそく上級ダンジョン行く?」
「もちろんだ。殿下に俺たちの腕前を見せないといけないしな。それに殿下の腕前も気になるしな」
食事の後、俺たちはアーサー殿下と合流した。
「知っての通り僕は第三王子のアーサーだ。冒険は初めてで勝手がわからないが、戦力になるように頑張るので、よろしく頼む」
「いやいや、アーサー殿下。こちらこそよろしくお願いします。噂は聞いてますよ。近衛騎士団長が直々に教え込んだ、一流の剣技の使い手だとか」
「一流だなんて、全然そんなことはないさ。まあ、足を引っ張るようなマネはしないように頑張るよ。ところでさっそくダンジョンに行くのか?」
「ええ、行きましょう。なに、肩慣らしにはちょうどいいクエストだと思います」
「そうか、じゃあ頼む。荷物持ちはどこだ」
俺たちは、金で雇った荷物持ちに荷物を持たせて出発した。
「いつものやっとくか! 我ら『†栄光の騎士団†』に栄光あれ!」
俺は高らかにそう宣言したが、ノエルもアリサもそこは続いてくれなかった。
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あとがき
読んでいただきありがとうございました。
7月4日に新作投稿しました。こちらもお時間ありましたら、御覧ください。
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