第11話
「うーんちょっとこの話は駄目だな……」
神様は苦笑いした。まあそうだよな。意味不明すぎるもんな。
「どうしますか?話はもうここで終わりですか?」
「いや、まだ恋愛運アップのためにはもう少し時間をかけなきゃいけないんだよ」
そう言われて俺は心が折れそうになった。まだこんなめちゃくちゃつまらない長話に付き合わなきゃならないのか……。
「そうだな。今度はちょっと恋愛の話でもしてみようか」
そう言って神様の一人語りが再び始まった。
黒髪ポニーテールの女子高生が白いビキニを着て砂浜に立ち、俺に向かって手を振っている。
「さて! ユウくんのためにお土産でも買ってくるかな! そういえば、もうちょっと遊んでいたかったけど、時間が遅くなりすぎないようにしないとね! それに、みんな待ってくれてるはずだし、帰ろうか」
サクヤが笑顔で言う。
「そうだな」
俺たちは来た道を戻り始める。
「……サクヤは楽しかったか?」
「うん、とっても楽しいよ。また一緒に遊びに行きたいくらいだもん。もちろん、今度は二人きりでさ」
「そっか。それなら良かった」
俺はそう言うと、彼女に手を伸ばす。サクヤはその手を握り返してくれた。
「ユウくんの手、温かいね」
そう言われて顔が熱くなるのを感じた。俺は恥ずかしさを誤魔化そうと話題を変える。
「そ、それより、次はどこに行きたいとかあるか? サクヤが行きたいとこならどこでもいいぞ」
「うーん、そうだなぁ……。じゃあさ、観覧車に乗りたい」
「わかった。それじゃ行こうぜ」
俺たちは歩き出す。その時ふと、彼女が俺の手を握ってきた。俺は驚いて彼女を見た。
「手、繋いでもいいでしょ?」
「……いいけどさ」
サクヤが嬉しそうに手を引っ張る。そういえば昔、サクヤと手を繋いだことがあったっけ。懐かしいな。
「ユウキの手は温かいね」
そう言う彼女を見て俺は思った。俺はこの笑顔を守りたいと。この笑顔だけは絶対に失いたくないと。
「サクヤの手だって暖かいよ」
俺はサクヤの手を握り返した。
「ユウキ、大好き」
サクヤはそう言うと、頬を赤く染めて恥ずかしそうにしている。俺はその姿が可愛くて、ついつい頭を撫でてしまった。
「ふぇっ? ゆ、ゆうきぃ……」
サクヤが目を細めて気持ち良さそうだ。俺はそのまま優しく髪をすくようにして手を動かす。サクヤの髪はとてもサラサラで触っていて心地が良い。いつまでもこうして触れていたくなる。
「ユウキ、好き」
俺が手を離すと、サクヤはすぐに俺の手を握ってきた。
「俺もサクヤのこと好きだぞ」
そう言うと、彼女は頬を赤く染めて恥ずかしそうにしている。そんな姿を見ると、愛おしくなってつい頭を撫でてしまう。サクヤは気持ち良さそうにして目を細めていた。
「ふぇっ? ゆ、ゆうきぃ……」
サクヤが舌足らずのような感じで名前を呼んだため笑みを浮かべる。そして、俺たちは再び手を繋いで歩いていった。この手をずっと握っていたいという気持ちになる。
「サクヤ、好きだよ」
「うん、わたしも好き」
俺たちは見つめ合うと、どちらからともなくキスをする。唇が触れ合った瞬間、心が満たされていくような気がした。
「もっとしたい……」
サクヤが甘えた声で囁く。俺はそれに応えるべく、何度も彼女にキスを繰り返した。
「サクヤ、好きだよ」
「うん、わたしも好き」
俺はサクヤを強く抱き締める。この温もりが永遠に続けばいいのにと思いながら……。
【あとがき】
最後まで読んでくださった方々、ありがとうございます! 本作は『〇〇』で連載していた作品になります。
この作品が少しでも面白いと思っていただけたのであれば、ぜひ評価やフォローをして頂けると嬉しいです! また、本作を読んで何か感じたことがありましたら、感想やレビューを書いてくれるとありがたく思います。
それではまた次の作品でお会いしましょう!!
「うぅ……頭痛ぇ」
昨日は飲みすぎたせいか頭が痛くて目が覚めた。ベッドの上で身体を起こすと、隣で寝ていたサクヤが目を開けた。
「おはようございます。ユウキ様」
「おう、サクヤ。おはよう」
サクヤが笑顔を浮かべる。
「ユウキ様、今日も良い天気ですよ」
「そうみたいだな」
カーテンを開けると、眩しい太陽の光で目がくらんだ。窓の外を見ると、爽やかな青空が広がっている。
「こんな日はどこかに出かけたくなりますね」
サクヤが楽しげに言う。
「そうだな……」
俺はぼんやりと呟く。正直、出かけるのは面倒だった。でも、サクヤが行きたいというのだから仕方がない。
「とりあえず、飯でも食うか」
「うんっ」
サクヤはとても嬉しそうだった。
「ユウキ様! ユウキ様! あれは何でしょう? すごく大きいですよ!それに綺麗! ユウキ様に見せたかったです! はいっ! ユウキ様! 次はあれに行きましょう! ユウキ様! ユウキ様! ユウキ様! あっ……」
「お、おい……」
「……申し訳ありません」
「はぁ……。別に怒ってないから気にしないでくれ。それより、ちょっと休憩しようぜ」
俺はそう言うと近くのベンチへと腰掛けた。サクヤもそれに続いて隣に座ってくる。
「ほれ」
「ありがとうございます」
ペットボトルに入ったお茶を手渡すとサクヤはお礼を言ってきた。
「別に気にしないでくれ。それより、そろそろ帰るか」
俺はそう言うと立ち上がった。そして、サクヤに手を伸ばす。
「あっ……」
サクヤは小さく声を上げると、頬を赤らめながら手を握ってきた。俺はそれを優しく握り返すと、そのまま歩き出す。サクヤが隣にいる。それだけでも幸せだ。でも、もっと幸せなことがある。それは、俺たちが恋人同士だということだ。
俺たちが付き合っていることは誰にも言えない秘密だ。でも、いつか俺たちのことをみんなに伝えたいなと思う。だって、俺たちが愛し合っていた証拠になるじゃないか。
「ユウキくん」
サクヤが俺の名前を呼ぶ。俺がサクヤを見ると、彼女は恥ずかしそうにして目を逸らす。
「どうしたんだ?」
「ううん、なんでもないよ。ユウキくん」
そう言う彼女を見て、胸の奥がキュンとなった。
俺はサクヤが好きだった。でも、サクヤには彼氏がいる。だからこの気持ちは伝えられないと思っていたのだ。でも今は、こうして恋人同士になっている。それもこれも全て、彼女が生き返ってくれたおかげだ。
「サクヤ……」
俺はサクヤのことをギュッと抱き締めた。
「ちょっと、ここ外……」
恥ずかしがるサクヤが可愛くてたまらない。
「いいじゃないか。俺たちはもう付き合ってるんだからさ。それに、俺たちのことを誰も知らないところに行きたかったんだろ?」
「うん、そうだね」
俺たちは電車に乗って東京へやってきた。ここは俺たちにとって未知の世界だ。だから、これからどんなことが待ち受けていてもおかしくないと思う。
「ユウキ」
「おう」
「ずっと一緒にいてね」
「もちろんだ」
俺はサクヤの手を握った。
「ユウキ、起きて」
「うーん……あと五分……」
俺は布団の中で寝返りを打った。
「もう! 早くしないと遅刻しちゃうよ! ほら、起きて起きて! 今日は朝練があるから遅れられないんだよっ! ユウキはバスケ部に入るんだからちゃんとしなさい!」
そう言うと、サクヤが掛け布を剥いでくる。
「寒いぃ〜。やめろぉ〜」
俺は抵抗するも虚しく布団を奪われてしまった。
「ふぅー、これでよし」
サクヤは満足げだ。
「おいこら待てぇい。俺の寝顔を見てたんじゃないだろうな?」
「さ、さすがにそれはないよ。だって、ユウキの顔は見慣れてるもん。それに、ユウキはボクのことが好きみたいだしねっ」
「ぐぬぅ……」
俺は悔しくて歯軋りしたが、サクヤが嬉しそうだから許すことにしておいた。
「でもさ、ユウキはボクのことが好きみたいだしねっ」
「はいぃっ!?」
俺は驚いて飛び上がった。サクヤはニヤリと笑っている。
「あれれぇ〜、違ったかなぁ? ボクの勘違いだった? それなら謝るけど」
「ぐぬぬぅ……」
悔しくて歯軋りする。そんな俺を見てサクヤは楽しげだ。
「ふふんっ、ボクの勝ちだねっ」
「くそぉ……」
俺はサクヤの頭を撫でながら呟いた。
「でも、ユウキはボクのことが好きみたいだしねっ」
「はいぃっ!?」
俺は驚いて飛び上がった。サクヤはニヤリと笑っている。
「あれれぇ〜、違ったかなぁ? ボクの勘違いだった? それなら謝るけど」
「ち、違わないけどさ……」
「ふぅーん……」
サクヤがジト目を向けて来る。なんか恥ずかしくなって目を逸らすと、彼女はクスッと笑ってから口を開く。
「ユウキ、顔真っ赤だね」
「うっさい……。それよりなんでいきなり水着着たんだよ……」
そう言うと、サクヤが楽しげにはにかんだ。
「ユウキとプールに来るのは初めてだったし、ユウキに見せたかったんだ。ほら、去年とか海に行ったけど、結局泳げなかったじゃん」
「確かにそうだが……」
「だからね、今日こそユウキと泳ぎの練習がしたいなって思ってさ」
サクヤが俺の手を取って引っ張ってくる。
「お、おい」
「早く行こーよ」
サクヤは楽しげだ。俺はそんな彼女を見て苦笑しつつ、手を引かれるがままに歩いていった。
「ユウキはさ、ぼくが死んでからどんな感じだったの?」
サクヤが唐突に尋ねてきた。俺はサクヤの方を向く。
「どんな感じって言われても……。普通に過ごしてたかな。サクヤが生きていた時と同じように」
「そっか。じゃあさ、ぼくと過ごした時間を覚えてる? 例えば、どこに行ったとか、何を食べたかとかさ」
「覚えてないな……でも、サクヤとの思い出を全部忘れちゃうなんて嫌だな……」
俺は俯いてそう呟いた。すると、サクヤが俺の手を握ってくる。
「大丈夫! これからまた新しい思い出を作っていこうよ! ね?」
サクヤは俺を元気づけるようにそう言ってきた。俺はそれを聞いて心が軽くなった気がした。そうだよな。また一から始めれば良いんだよな!
「ありがとう、サクヤ! 俺、頑張るよ!」
サクヤは嬉しそうに笑みを浮かべてから手を離す。
「うんっ!」
俺たちは手を取り合って歩き出した。それから数日後。サクヤは交通事故に遭った。原因は居眠り運転だったらしい。サクヤは即死だった。
それからというもの、俺の心はぽっかりと穴が空いたような感じがしている。毎日が楽しくないのだ。学校に行って授業を受けて家に帰る。それだけの繰り返しだ。俺は生きる意味を失った。だからといって自殺をする勇気もない。俺は自分の人生が無価値だと思っていた。そんなある日のこと。俺の前にサクヤが現れたのだ。
「サクヤ……なのか?」
俺が声をかけると、サクヤは不思議そうに首を傾げた。俺のことを知らない様子である。当然といえば当然か。サクヤは俺のことを覚えていないんだから。
「はじめまして。私は大銅寺亮太といいます。サクヤとは幼稚園からの付き合いなんですよ」
亮太が自己紹介をすると、サクヤは笑顔になった。それから俺たちは仲良くなった。それから数日後のこと。俺たちはデートをしていた。しかし、その時、俺は亮太とすれ違ったのだ。亮太は俺に向かって微笑みかけながら手を振る。俺は亮太を無視してサクヤの手を引っ張った。だが、次の瞬間、亮太が俺の肩に手を置いてくる。
「おい、無視はないだろ? せっかく会えたのにさ」
俺が睨みつけると、彼はニヤリと笑った。
「そういえばお前、まだ俺のこと覚えてるんだっけ? でも、サクヤは忘れちゃってるんだよな? 俺のことなんかすっかりさ。だから、これからは俺がサクヤの恋人だ。いいよな?」
俺はそれを聞いて頭に血が上り、彼の胸ぐらを掴む。
「ふざけるな! サクヤは俺の女だぞ!」
そう叫ぶと、亮太は俺を突き飛ばした。
「サクヤは俺を選んだんだ。諦めてくれよ。俺とサクヤは運命で結ばれているんだ。絶対に離れない。永遠に一緒さ」
亮太は狂気じみた笑みを浮かべた。
「サクヤは俺のものになるんだ……。サクヤは俺が守るんだ……」
「……くそが」
俺は拳を強く握りしめた。
「……サクヤは渡さない」
「ははっ、お前はいつもそれだね」
そう言うと、亮太はつまらなさそうに笑った。
「いい加減、諦めたら? サクヤはもういないんだよ」
「うるさい! サクヤは俺の女だ! 絶対に渡さない! 俺はサクヤを愛してるんだ! だから、サクヤを守るのは俺しかいないんだ! サクヤは永遠に俺のものになるんだ! サクヤ! サクヤ! サクヤ! サクヤ! サクヤァアアアーッ!!」
「……ははは」
サクヤは乾いた笑い声を上げる。
「ねえ、サクヤ。亮太が呼んでるよ?」
「……うん」
サクヤはゆっくりと立ち上がった。
「サクヤ、どこに行くつもりだい?」
「…………」
サクヤは答えない。
「まさか、亮太を殺すとか言わないよな?」
「…………そんなことはしない」
サクヤはそう言うと、そのまま部屋を出て行った。
「……亮太」
サクヤが消えていった方向を見ながら俺は呟く。
「俺はサクヤじゃないんだ。お前の知っているサクヤは、もういないんだよ」
俺はサクヤが座っていたソファーを見た。サクヤの温もりが残っているような気がして、思わず涙がこぼれる。
「サクヤ……」
俺はサクヤが好きだった。だけど、告白できなかった。サクヤには彼氏がいるから。でも、もしも俺が告白していたら何か変わっていたのかな? サクヤが死ぬことはなかったんじゃないだろうか? 俺はふと思う。サクヤは俺のことを覚えていてくれた。それなら、俺のことを好きになってくれる可能性だってあるんじゃないか? 俺はサクヤの笑顔を思い出しながら目を閉じた。
「ユウキ君、起きてー」
「うぅ……あと五分……」
「もう、仕方ないんだから……」
俺が布団の中で寝ぼけながら答えると、サクヤは呆れたような声でそう言った後、キスをしてきた。
「んっ……」
甘い吐息が漏れる。
「ふぇ……?」
驚いて目を覚ました。目の前には白いビキニ姿のサクヤがいる。彼女は不思議そうに首を傾げた後、頬を赤く染めて俯いた。
「ゆ、ユウキ君、おはよう」
そう言うなりそそくさとベッドから出ていく。
「お、おう。おはよう……」
俺は上半身を起こしながらそう返した後、夢の内容を思い出した。
『ユウキ君』
『ユウキ君』
「うわっ! やめろぉー! それ以上はいけない! 俺はサクヤじゃないんだ! 頼むからやめてぇー! 」
頭を抱えて叫ぶ。サクヤは不思議そうに見つめていたが、やがてクスッと笑った後、どこかへと歩いていった。
それからしばらくして、俺は落ち着きを取り戻した後、遊園地へと向かうことにした。雨は既に止んでおり、虹がかかっていた。まるで俺たちの門出を祝うかのように。
遊園地に着くと、サクヤはとても楽しそうだった。ジェットコースターに乗ったり、メリーゴーランドに乗ってみたり、お化け屋敷に入ったり……。どれもこれも新鮮だったようで、終始笑顔だった。俺もとても楽しい気分になっていた。こんなにも心が躍っていることは生まれて初めてかもしれない。もしかしたら、サクヤが生きている頃に俺たちは恋をしていたのかもしれない。だが、今はもう確かめようがない。なぜなら、彼女はもうこの世にはいないから。
だが、こうして彼女とデートをしていると、本当に生き返ったのではないかと思うことがある。もしかすると、これが俺にとっての初体験になるんじゃないだろうか。だから、俺は幸せを感じていた。たとえサクヤが俺のことを覚えていなくても構わない。俺が覚えていればいいんだ。サクヤとの思い出は俺の中で輝き続けるだろう。
「ね、次はあれに乗りましょうよ」
サクヤが指さしたのは観覧車だ。俺はコクリとうなずくと、サクヤと一緒に観覧車の中へと入った。
「わー! 綺麗……」
夕日が沈みかけている景色を見てサクヤは目を輝かせていた。
「そうだな」
「うん、とっても綺麗」
サクヤは観覧車から見える風景を楽しんでいるようだ。そんな彼女を見ながら俺は考えていた。
俺は結局、彼女をサクヤとして扱うことにした。なぜなら、そうすればサクヤは幸せになれると思ったからだ。サクヤは今まで辛い思いをしてきた。だから、せめてもの償いで俺はサクヤの願いを聞いてあげることにしたのだ。
それにしても、なぜサクヤは俺の前に現れたんだろう。本当に俺のことが好きだったとか? いや、それは無いと思う。だって、俺もサクヤも男だし、俺なんかよりもイケメンはたくさん居るはずだ。サクヤが俺のことを好きになる理由がわからない。まさか、俺がサクヤの彼氏だったりする? でも、サクヤの彼氏は亮太だ。亮太とは幼稚園からの付き合いらしく、サクヤは亮太のことをとても信頼しているように見える。だから、亮太以外の男が彼氏だとは思えないんだよな。
「ユウキ、どうかしたの?」
サクヤが心配そうに見つめていた。なんでもないよと答えると、彼女は笑顔になった。
「ふぅ、なんとか逃げ切れたね」
俺たちは人気のない路地裏にいた。雨はもう止んでいる。
「そうだな。ところでサクヤはなんで俺を助けてくれたんだ?」
「助けたつもりはないんだけど……。ただ、君を放っておけなかったんだ。それだけだよ」
サクヤは優しい笑みを浮かべて言った。そんな彼女を見て、俺は胸の鼓動が高まっていくのを感じた。
「そっか。ありがとな」
「うん」
「それにしても、サクヤはやっぱり凄いな。あんな人混みの中だったのによく俺を見つけたよな。しかも変装までしていたのにさ。さすがはサクヤだぜ」
「ふふん、それほどでもないさ」
サクヤは嬉しそうにしている。
「いや、サクヤは本当にすごいと思うぞ。俺だったら絶対に見つけられないもん。それどころかサクヤだって気づかないかもしれないし。だってサクヤはこんなにも可愛いんだからさ。俺なんかとは比べものにならないぐらい綺麗だし」
「そ、そこまで褒められると照れるじゃないか……。ユウキこそ、ボクを見つけるなんて中々やるね。というか、キミはいつの間にかボクのことを呼び捨てするようになったよね。最初はちゃん付けしていたはずなのに」
「そりゃそうだろ? サクヤはサクヤだしさ。呼び方とか気にしないだろ? それにサクヤは俺にとって特別な存在だから呼びやすいんだよ」
「ふーん……特別か。そう言われると悪い気がしないかも……! ねえ、もう一回呼んでみてくれないかい? ほら、早く早く」
「はいはい、サクヤ様。これでいいか?」
「うん、満足だ。ありがとう、ユウキ」
サクヤは嬉しそうにしている。どうやら俺がサクヤのことを特別と言ったのが嬉しかったらしい。そんなサクヤが可愛くて頭を撫でてやる。すると、彼女は気持ち良さそうに目を細めた。
「ねえ、もっと褒めてくれよ〜」
サクヤが甘えたような声で言ってくる。
「はいよ」
そう言って今度は耳を触ってみた。すると、サクヤがビクッとする。
「ちょっ! そこはダメだってば! くすぐったいし、なんか変な気分になるんだよぉ」
「へぇ〜、サクヤはここが弱いんだ」
俺はニヤリと笑みを浮かべて、彼女の耳に息を吹きかけた。
「ひゃあっ! もう! やめてよ〜」
サクヤが怒ってポカポカ叩いてくるが、全然痛くない。むしろ可愛くて癒されるレベルだ。
「ははっ、悪い悪い。でも、本当にサクヤが生き返ってくれたみたいだ。またこうして一緒に遊べるなんて夢みたいな気分だぜ」
俺の言葉を聞いたサクヤは、俺の手を握ってきた。
「うん、そうだね」
サクヤは笑顔のままそう言うが、どこか寂しげな雰囲気が漂っている気がするのは気のせいだろうか? 俺はふと空を見上げた。雨はほとんど上がっており、太陽の光が差している。この様子ならすぐに止みそうである。
「よし、そろそろ行くか。もうすぐ着くと思うんだけど」
俺はサクヤに向かって笑いかけた。サクヤは嬉しそうに笑うと手を離してくれる。俺はスマホを取り出して地図を確認しながら歩き出した。俺たちが向かっている場所は、遊園地だ。デートスポットとして有名であり、カップルはもちろん家族連れなども多く訪れる場所でもある。そのため、チケット売り場は長蛇の列になっていた。並んでいる間、サクヤはずっと俺の手を握ってくれていた。おかげで退屈しなかったけど、ちょっと恥ずかしかった。ようやく順番が来たので大人二枚、子ども一枚のチケットを買う。それからゲートを通って園内に入った。
「ユウキ! あれ乗ろうよ! ジェットコースター! あとはコーヒーカップとかメリーゴーランドにも乗りたい! ねっ! いいよね?」
サクヤが興奮気味にまくし立てる。
「うん、わかった。でも、先にお昼ご飯を食べようか? 食べ終わった後にゆっくり遊ぼう」
「やった! ありがとう!」
それから食事処を探して歩く。ちょうどベンチが空いていたためそこに座った。
「どれ食べる?」
「うーん、カレーライスかな。美味しそうだし」
「じゃあそれにしようか」
注文を済ませて料理が来るのを待つ。その間はずっと他愛のない話をしていた。しかし、なぜかサクヤの顔を見るとドキドキしてしまう。その理由はよく分からないけど、今はデート中だからきっとそういう気分になっているだけだと思うことにした。
しばらくしてカレーライスが来た。見た目はとても綺麗だ。
「それでは食べましょうか」
「うん。いただきます」
そう言うと、サクヤはスプーンを手に取って一口食べる。
「おぉ! これは……! とてもおいしいね! ユウキくんも早く食べてみて」
サクヤが興奮気味に話しかけてくる。
「わかったよ」
俺もそれに続いてカレーライスを口に運ぶ。
「おお! 本当だ。美味しい」
「でしょう? さすがは有名なお店だね。でも、ユウキくんの方がもっとおいしいよ」
「はいはい」
俺は苦笑しながら受け流す。
「ふふっ。ユウキくん照れてる」
サクヤが楽しげに笑う。
「そりゃそうだろうよ」
俺は恥ずかしさを隠すためにぶっきらぼうな態度で答える。
「でも、ユウキくんは私の彼氏だからね」
サクヤがニコニコしながら言う。
「はいはい」
俺は適当に受け流す。
「もう! ちゃんと聞いてるの? 私が彼氏だって言っているんだよ?彼氏なんだからもっと優しくしてくれても良いと思うんだけど」
俺は苦笑しつつ答える。
「彼氏だからこそ、お前のことを大事にしてるんだろう? だから、あんまりベタベタしない方が良いかなって思ってさ」
「うーん……でも、やっぱり私としてはもっと甘やかしてほしいっていうか……」
「ダメだぞ。これ以上俺に依存したら良くないだろ?」
「そっか……うん、そうだね……。わかったよ。じゃあさ、せめてキスだけでもしようよ?」
そう言うと、サクヤは目を瞑った。俺はそれを見て息を飲む。ドキドキしてきた。こんな美少女とキスができるなんて夢のようだ。俺はゆっくりと彼女に近づいていく。あと少しで唇同士が触れ合う距離になった時、不意にインターホンの音が聞こえた。
「あれ? 誰だろう? ちょっと待ってて」
サクヤが玄関に向かったので俺もそれについて行く。扉を開けるとそこには大銅寺亮太が立っていた。亮太はサクヤを見つけると嬉しそうな顔になる。
「サクヤ! 久しぶりだな! 元気にしてたか? 今日はどうしたんだ? あ! もしかして、デートだったりする? 邪魔しちゃ悪いかな?」
亮太はニヤリと笑って俺の方を見た。
「おい! そんなわけないだろ?」
俺は慌てて否定するが、サクヤがそれを遮るように声を上げる。
「そうだよ。デート中。だから、お前は帰れ」
サクヤが冷たい口調で言うと、亮太はムッとする。だが、すぐに笑顔になった。
「そっか。じゃあ、また後で来るね。行こう、優希」
亮太はそう言うと、俺の手を引いて走り出す。
「お、おい! 待てよ! まだ話は終わってないだろ! あと、手を引っ張るなって! 恥ずかしいだろ!」
俺がそう叫ぶと、亮太は足を止めた。それから振り返って笑顔を見せる。
「大丈夫。すぐにわかるから」
「だから、何が分かるんだよ」
「だから、すぐに分かるんだって」
亮太は再び俺の手を引っ張りながら歩き出した。
それから少し歩くと、目の前に大きな建物が見えてきた。看板を見ると水族館と書かれている。
「ほら、着いたぞ」
亮太が笑顔でそう言う。俺は首を傾げながらも彼に付いていった。館内に入ると涼しい空気が身体を包み込む。薄暗い照明のおかげで、幻想的な雰囲気になっていた。
「おぉ……」
思わず声が出る。すると、亮太が笑みを浮かべて話しかけてきた。
「ユウキは水族館に来たことがあるか?」
「ないよ。初めてだ」
「そうなのか。それじゃ、色々と教えないとだな」
彼はそう言うと、館内マップを取り出して説明を始めた。俺はそれを眺めながら彼の話を聞いていた。
「……で、ここがクラゲコーナー。いろんな種類のクラゲが展示されているんだ。ほら、見てみろよ」
亮太が指差している水槽を見ると、そこには沢山のクラゲがいた。
「わぁ、綺麗……」
「そうだな。まるで宇宙みたいだ」
亮太が楽しそうにしている。きっと私が好きな場所だからだろう。私のために一生懸命調べてくれたのかな? 嬉しい。
「ありがとう、亮太。大好き!」
亮太に向かって飛びつくと、彼は優しく受け止めてくれる。この瞬間がとても幸せだった。ずっとこのまま時が止まれば良いのに……。でも、そういうわけにもいかない。だって、私たちはいずれ離れなければならない運命なのだから。だって、私たちが一緒に居られるのは、あと一年しかないんだもんね。でも、本当に大丈夫なのかな? 今のままでも良いのかもしれないけど、やっぱり不安だ。
それにしても、まさかこんなことになるとは思わなかった。去年、交通事故で亡くなったはずの私はなぜか幽霊になっている。しかも、なぜか男の子の姿になっていたのだ。どうしてこうなったのかは分からないけど、亮太と同じ高校に通うことができるようになって良かったと思う。ただ、この姿だと亮太は私のことをサクヤだとは思わないみたいだけど……。
今日は二人で遊園地に行くことになっている。天気は快晴。絶好のお出かけ日和だと思う。待ち合わせ場所である駅前に着くと、すでに亮太がいた。彼は私を見つけるなり、笑顔を浮かべて駆け寄ってくる。その姿が可愛くてキュンとなった。
「お待たせ、亮太」
「おう、待ったぞ」
そう言うと、彼は私に向かって手を伸ばしてきた。私は彼の手を握り、ギュッと握る。すると、亮太が私の手を恋人繋ぎしてきた。ドキドキしながら歩いていると、ふと視線を感じた気がしたので顔を上げる。
「……っ」
すると、一人の男が私たちのことをじっと見つめていた。その男はスーツ姿で背が高く、とても整った容姿をしている。年齢は三十代前半ぐらいに見える。
「亮太……あれ」
「知ってる」
「知り合い?」
「いいや、知らない人だ」
「そっか」
私たちはそのまま歩いていく。
「ねえ、あれって……」
「知ってる」
ふと視線を感じて顔を上げる。すると、一人の男が私たちのことをじっと見つめていた。その男はスーツ姿で背が高く、とても整った容姿をしている。年齢は三十代前半ぐらいに見える。
「亮太……あれ」
「知ってる」
彼はそのまま歩いていった。
「ねえ、あれって……」
「知ってる」
「知り合い?」
「いいや、知らない人だ」
私たちはそのまま歩いていく。
「ねぇ、あれって……」
「知ってる」
「知り合い?」
「いいや、知らない人だ」
私たちはそのまま歩いていく。
それからしばらくして、私たちの前に大きな観覧車が現れた。
「あれ、乗ろうよ」
「いいね」
私たちはそのまま歩いていく。
「ねえ、観覧車に乗らない?」
「そうだな」
私たちはそのまま歩いていく。
「観覧車乗ろうよ」
「いいね」
私たちはそのまま歩いていく。
観覧車に乗り込むと、俺たちは向かい合って座った。サクヤが窓の外を見て楽しげにしている。俺はそれを眺めながら、彼女が死んだことについて考えていた。
サクヤが事故に遭った時、俺は彼女とデートをしていた。二人で映画を観て、それから買い物をして……。楽しい時間だったと思う。だけど、突然彼女が倒れて病院へ運ばれた。俺は必死で救急車を追いかけたけど間に合わなかった。彼女が亡くなったというニュースを聞いた時はショックだったけど、不思議と涙は出てこなかった。きっと、まだ受け入れられていなかったんだろう。でも、今は違う。こうしてサクヤと話すことができるようになった。それだけじゃない。サクヤが生きている頃の思い出も少しずつ蘇ってきたのだ。それはとても嬉しいことだった。でも、それと同時に、サクヤはもうこの世にいないのだという事実を突きつけられたような気がしていた。
「ユウキ君、どうかしましたか?」
サクヤの声を聞いてハッとする。どうやら考え事をしている間に、いつの間にかサクヤが俺の目の前に来ていたようだ。
「なんでもないよ。それより、そろそろ頂上だぞ。ほらっ、見てみろ」
俺は景色を見ながらサクヤの手を引っ張る。
「うわぁ……綺麗」
サクヤが感嘆の声を上げる。俺は彼女を見て笑った。
「そうだな」
サクヤが俺の顔を見た後、再び夜景へと視線を移した。
「ユウキ君、覚えてる? 私たちが初めて会った日のこと」
「もちろん覚えてるさ。あれからもう四年経つんだもんな。早いよな」
俺は懐かしさを感じながら答える。サクヤと出会った日を思い出す。あれは高校の入学式の日のことだ。
「お前、同じクラスなのかよ」
俺は呆れながらそう呟く。教室に入った瞬間、サクヤと目が合ったのだ。俺が軽く手を振ると、サクヤは笑顔を浮かべて近づいてきた。
「久しぶりだね」
「え? ああ、そうだっけ?」
俺がそう言うと、サクヤは目を丸くした。
「忘れちゃったの? 小学校の頃はよく一緒に遊んだじゃん。ほら、昔はユウキ君、私のことを『サクヤちゃん』って呼んでいたのに今は苗字呼びだし」
「そっか……悪い、なんか最近記憶が曖昧になっていてさ」
「ううん、いいんだよ。気にしないで。でも……本当に懐かしいなぁ……小学校の頃の思い出とか色々覚えてる?」
「そうだな……。覚えてるのはサッカーをやってたことくらいかな……」
「あははっ! やっぱり! でも、それも当たり前だよね! だって私たちずっと一緒だったもんね! あっ! あとはあれだ! 私、よく男子たちにイジメられてたんだけどさ! その時はいつもユウキが助けてくれたんだよね!」
「そうだったかもな……」
俺は苦笑しながらそう答える。
「それにしても、この身体になってから色々なことが変わってしまった気がするよ。前はこんなに感情豊かじゃなかったし、声だって全然違くなってるしさー。まあ、それはいいことなのか悪いことなのか分からないけど、とりあえず慣れないとね」
「そうだな。少しずつだけど俺もサクヤになれるよう頑張るよ」
「うん。よろしくお願いします」
サクヤがペコリとお辞儀をする。
「それじゃあ、そろそろ行くか」
俺が歩き出すとサクヤがついてきて、手を繋いできた。
「ちょっ! おい! 手を繋ぐ必要は……」
「ダメ?」
「うぐ……」
そんなふうにして歩いていると、ふと彼女が足を止めた。視線を追うと、そこには水着姿の女性がいる。スタイルが良くて顔立ちも良い。綺麗で大人っぽい女性だ。
「ねえ、ユウキ君。あの人、すごく綺麗だね」
「そうだな」
「胸も大きくて羨ましいな」
サクヤがじーっと見つめる先にあるのは女性の大きな胸だった。俺はそれを見て少しモヤッとする。だが、サクヤは俺が嫉妬していることに気が付いていないらしく、無邪気に話しかけてきた。
「いいな~。あんな風におっきかったらもっと自信を持てたかもしれないのに。あ、でも……ちょっと怖いかも。うぅ、やっぱり小さめのほうが良かったかな……」
サクヤはそう言うと自分の胸に手を当てた。確かにサクヤのおっぱいは小さい。だけど、それが魅力だと思う人もいると思うんだが……。それにしてもサクヤは大きいほうが好きなのか?
「そういえばさ、サクヤは巨乳と貧乳どっちが好きなんだよ?」
「え? なんの話?」
「だから、サクヤが胸の大きさについて悩んでいるみたいだったから」
「え? わたし? 別に悩んでないけど? だって、小さくても全然困らないもん。むしろ邪魔だし」
「そ、そうなんだ。へぇー、そうなんだ」
俺は思わず苦笑いを浮かべた。でも、これでよかったと思う自分もいる。だって、このままずっと一緒に居られるから。
でも、この関係はきっと長く続かない。いつか終わりが来るだろう。その時、俺はどうすればいい? 俺にとってサクヤが大切な存在になるほど、彼女を失うことが怖くなる。だからといって、別れることなんて考えられない。
どうしたら良い? どうするのが正解なんだ?
「ユウキ君? どうしたの? 顔色悪いよ?」
サクヤが心配そうに見つめてくる。俺は彼女に見惚れていた。綺麗だ。本当に。
「大丈夫だ。ちょっと考え事をしていただけだからさ」
「そっか……」
彼女は不安そうに俯く。俺は彼女の頭を撫でた。サラリとした髪が心地よい。サクヤは気持ち良さそうにしている。俺はこの時間が永遠に続けば良いのにと思った。
「ユウキ君、お腹空いたね」
「そうだな」
時計を見ると昼過ぎになっていた。俺らは昼食を食べるために喫茶店に入ることにした。
「いらっしゃいませー! 二名様でしょうか?」
店員が笑顔で言う。
「はい、そうです」
サクヤが答える。
「かしこまりました! お席まで案内しますね」
そう言われて俺たちは店内に入った。内装はかなりオシャレだ。窓際にテーブルが置かれている。
「それでは、メニューが決まり次第そちらのボタンを押していただいて大丈夫です」
そう言うと、店員は一礼をして去って行った。俺はメニュー表を見て考える。オムライスとか美味そうだな。でも、この店に来た目的は食べることじゃない。俺はメニューを決めてボタンを押す。すると、しばらくしてから先ほどとは別の女性が現れた。彼女は俺の顔を見ると少し驚いたような顔になる。それから、笑顔を浮かべてから注文を聞いてきた。
「お待たせしました! チーズハンバーグプレートになります! ごゆっくりどうぞ~!」
元気の良い声でそう言うと、女性は去っていった。さっそく食べ始める。うん、うまい。サクヤの方はというと、相変わらず無言のままだ。しかし、なぜか俺のことを観察し続けている気がする。
「どうしたんだ?」
俺が尋ねると、彼女は慌てて首を横に振った。
「う、ううん、なんでもないよ」
「そっか。ならいいんだけど」
俺としては、ずっと見られると落ち着かないんだよな……。なんとかならないものだろうか。
「……ねえ、ユウキ君って、好きな人とかいるの?」
唐突にそんなことを言われた。
「えっ?……いないよ」
俺は戸惑いながらも答える。
「そっか……」
そう言うと、サクヤは俺の肩にもたれかかった。
「ちょ、ちょっと、サクヤ? 何やってるんだ?」
「別にいいじゃん」
「でも、ほら、周りの目がさ……」
「みんな見てないよ」
確かに誰も俺たちの方を見ていない。それにしても、サクヤがこんなに積極的だったとは意外だ。いつも恥ずかしがっているイメージがあったんだけどな。
「ユウキ君……」
サクヤが耳元で囁く。
「わたしね……ユウキ君のことが好き……」
俺は思わずドキリとする。
「お、おい。いきなり何を言い出すんだよ」
「ふふっ。いいじゃん、別に」
そう言うと、サクヤは俺の頬にキスしてきた。
「ちょ、ちょっと! 人前だぞ」
俺は慌てて周囲を見渡した。幸い、俺たちに注目している人は誰もいない。
「ユウキ君がいけないんだもん。わたしのこと見てくれないから……」
サクヤが寂しげな顔で言う。やめてくれ、そういう反応されると罪悪感が半端ないんだが……。
「わかった。じゃあ、これからはちゃんと見るようにするよ。だから機嫌を治してくれ」
「うん。約束だからね?」
「ああ、もちろんさ」
俺の言葉を聞いた瞬間、サクヤの顔がぱあっと明るくなった。
「やった! ありがとう! 大好きっ」
サクヤが満面の笑みを浮かべながら言う。俺はそれを見つめながら頬を緩めた。
「おう、俺も大好きだぞ」
俺がそう答えると、サクヤは嬉しそうにはしゃいだ後、ゆっくりと目を閉じた。俺は彼女にキスをする。
「サクヤ、愛しているよ」
「うん……。あたしもユウキを愛してる」
俺たちは再び唇を重ねた。
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