第8話

「ああ、悪いね。違う話をしよう」

そんな悪びれた様子もなく神様がまた話をし始めた。

この話は、ある少女が異世界へ転生する物語である。ある少女の名前は、佐藤咲と言う。咲は、前世の記憶を持っていた。彼女は、事故で死んだ。トラックに轢かれたのだ。咲は、トラックが近づいてくる光景がスローモーションで見えていた。自分が死ぬことを自覚していた。

彼女は、死ぬ前に、神様に会った。彼は、とても優しい顔をしている。

「君は、死んでしまったんだ。残念だ。でも、安心していいよ。僕が、君の願いを叶えてあげるから。」

「本当ですか!?」

「あぁ、もちろんだよ。それで、どんな世界に行きたいの?」

「剣と魔法の世界で、魔法が使えて、モンスターもいるのがいいです。」

「わかった。じゃあ、今から送るよ。」

「はい!!」

「頑張ってね。」

「ありがとうございます。」

「じゃあね。」

「はい。」

「バイバーイ。」

「さようなら。」

「また明日ね。」

「え?」

「またあした。」

「あ、はい!またあした!さようなら。」

「またあした。」

私は、今日もまた同じ場所で、いつものように友達とお喋りをして、家に帰る。

私の名前は「橘結」。中学三年生です! 趣味は読書と音楽鑑賞。好きなものは、動物と可愛いものと甘いもの(特にいちご)。嫌いなものは特にありません(え?異世界転生終わり?)。

運動も苦手ではありませんが、得意でもありません。運動は少しくらい出来なくてもいいんです。だって、勉強が出来れば、将来役に立つと思うのです。

「ただいま~」

私の家は普通の一軒家で、お父さんとお母さんと三人暮らし。

「おかえりなさい。今日は遅かったのねぇ」

「うん! 学校が早く終わったから、友達と一緒に遊んでたんだ!」

私はランドセルを置くと、すぐに二階にある自分の部屋へと駆け上がりました。

「ふぅ〜疲れた……」

制服を脱いで、パジャマに着替えます。今日は学校で体育があったのでとても汗をかきました。まだ四月だというのに夏みたいです。

「よし、ゲームやろっと」

いつものようにベッドに寝転がって、ゲーム機を手に取ります。

「あっ、そっか……充電切れてるんだった」

私はため息をついて、携帯用の充電器に繋ぎます。

「う~ん、やることないしなあ。もう夜遅いし……」

でも明日も学校があるから早く寝ないといけません。

「あ、そうだ。宿題やってなかったんだ。ううう、また怒られる」

そういえば、夏休みが終わってまだ一週間しか経っていないんですよね。

「ええい、ままよ!」

私は勉強机に向かいました。

「ふう、終わったぁ」

一時間後、ようやく宿題が終わりました。

「あとは寝るだけだな」

「でも、眠くないんですけど」

「そりゃそうだよ。だって、もう朝だもん」

「え?」

窓の外を見ると、空が白んでいました。

「やばいです。完全に遅刻ですよ」

「大丈夫だよ。まだ間に合うから。でも、急いだ方がいいかもね」

「はい」

私は慌てて支度を始める。

「あ、でも、その前にシャワー浴びないと」

「それじゃあ、これ使っていいから」

「ありがとうございます」

「いってらっしゃい」

「はい、いってきます」

そう言うと、私は急いで浴室へと向かう。そして、そのまま脱衣所で衣服を脱ぎ捨てた。そして、洗濯機に放り込むと、すぐに熱いシャワーを浴び始める。

(ふう……)心地よい温度のお湯が私の身体を流れ落ちていく。

『うぅ~、いいねぇ! やっぱりお風呂は最高だよ!』

突然、頭の中から少女の声が響き渡ってきた。どうやら彼女が目覚めたらしい。

「おはよう、アリス」

『おっはよ! って、もう朝ってわけでもないけど……って、うぇ!?』

俺の言葉を聞いた瞬間、なぜか彼女は驚いた様子で声を上げた。

「どうかした?」

『いや、えっと……あー、うん! なんでもないよ!』

そう言うと彼女は少し慌てたように手を振る。

『それよりさ! さっきの話の続きなんだけどさ! えーっと……そう! 君はこれからどうするつもりなの?』

「…………」

彼女の問いかけに、俺は少し考える。

「……とりあえず、しばらくはこの施設で暮らそうと思います」

そして、そう答えた。

「へぇ、そうなんだ」

彼女は意外だというように言う。

「はい、そうです」

俺は小さくうなずく。

「でも、どうして?」

「それは……」

「いやいや! 言わなくていい! 大体わかってるから」

「え?」

「ここは秘密基地だろ?」

「……」

「しかもかなり重要な場所だ! 違うかい?」

「……」

「そして、君はその最重要人物だ」

「……」

「ふむ、だんまりを決め込むつもりみたいだな。まあ、いいだろう」

「……」

「さっきまでここにいた女性がいるはずだが……知らないかい?」

「……」

「知らないわけないよね?」

「……」

「あ! そういえば自己紹介がまだだったね! 僕はアーサー・ハウエルズっていうんだ! よろしく頼むよ! えっと……君は?」

「…………」

「……ふむ、なるほど」

「そういうことなら仕方がない。君の口から説明してもらうしかないようだね」

「とりあえず、そこにある椅子に座らせてもらっていいかな?」

「……」

「えっと……ダメ?」

「……」

「ふむ……」

「……」

「じゃあ話を変えよう」

神様の一人語りの話題が変わった。

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