第27話 鉄道マニア、野球とビールを楽しむのは何故?

 そこまで話してビールを幾分あおる中年作家に、母親が尋ねる。


「そうですか。なるほど、あなたもある意味、プロと申しますか、職業作家としての姿勢が板についてきたようですね。そのベースとなったのが、プロ野球と申しますか、職業野球に携わって来られた方々によって出された本というのも、なるほどと思われました」

「ええ、その影響は確かに大きいと思っておりますね、我ながら・・・」


 この日のエンゼルスとマリナーズの試合、途中まで拮抗していたものの、5回途中に好投していたマリナーズの菊池雄星投手が打球を当てられて降板。

 その後流れは、一気にエンゼルスに。

 この日のマリナーズ菊池対エンゼルス大谷翔平選手の対戦は、2打数1安打、本塁打と三振という内容。

 とりもわけても、日本人同士の対決というのは、日本にいる日本人で野球に興味を持っている人にはこれ以上ない楽しみ。

 さらに、この後の日本のプロ野球は、セパ交流戦。朝から夕方まで、野球を楽しめる絶好の日曜日。酔っ払いさんと自らを読んで久しい作家氏は、さらにビールを口にして体に収めていく。


 で、野球見ながらビール。

 ついでに言えば、野球と鉄道というのも、君の知合いの鉄道紀行作家さんの話によれば、大いに親和性があるそうじゃないか。

 まあ、どうでもいいけどさぁ、ぼく個人としては、この世で戦争の犠牲になったものとしては、いささか、思うところは多々あるし、言いたいこともあるけど、まあ、やめとくよ。

 なんせご自身で、戦争を知らない子どもたちの子どもの第一世代を自任する君のことだ。そのあたりは、うまくバランスをとった言動をするのだろうけどね。


 少年姿の「おじさん」が、中年となってビールを飲む息子ほどの年齢の人物に、半ば手遅れの相手に投げかけるようなことを述べている。


「何といっても、三島ゴリラ大先生のつながりのお方だからね、君は。霊長類つながりか文士つながりか知らんが、ある意味大したものだよ」

「褒められているのか、それともけなされているのか、よくわからないですよ」

「どっちだと思う?」

「まあ、けなされているのでしょうね。その論調からすれば。高校の古文で習う「疑問」と「反語」の、明らかに後者の方だってことぐらい、わかりますよ」

「さすが天下のO大学法学部を出ただけのことはあるね。しかしなぁ、わざわざ酒飲むために、丸亀まで来て泊って、しかも日曜朝はプリキュアとか、そりゃあ、何しでかそうと自由だけど、体には気をつけな。何はともあれ、文章書けなくなったら終りだぜ、君の場合」

 そこで、母親が一言。

「うちの息子がなんとも好き放題言ってくれましたけれども、申し訳ないですが米河さんにとっては、ほとんど当たっているとしか思えませんね、私から見ても。とにかく、お酒の飲み過ぎには注意してください。禁酒日を作るのも大いに結構ですけど、飲む以上はとことんとか、そういう無茶は、そろそろやめたほうがよろしいかと、思いますけどね・・・」

「はい。そのあたりは、大いに気を付けて参ります。まだ死にたくないですので」

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