キノコ男、フルスロットル! ~敏腕営業マンが異世界転生したら、ポンコツ乙女たちと平和な世界征服を目指すことになった~
第139話 かつてない覚悟のエルミナ団!! 悲しい運命が見えた翡翠の聖騎士マチコ・エルドッセブン!!
第139話 かつてない覚悟のエルミナ団!! 悲しい運命が見えた翡翠の聖騎士マチコ・エルドッセブン!!
紅蓮の聖騎士、戦場へ。
ただし今回は鎧を持参していないため、エノキ社員プロデュースの赤いスーツ姿。
ちょっとだけ漂う、売れっ子おじさんホスト感。
だが、愛刀はちゃんと持って来ていたため防御力に不安はあっても攻撃力は問題ない。
「私が先陣を務める!! ステラくん、リンくん! 2人は後方から魔法による支援を!! エリーくん!! 君には中距離で爆撃による援護を頼みたい!!」
「お任せさー! キノコは美味しいし、力もゲットでお役に立てるさー!!」
「わたくしもやりますわよ!! 皆さんがどっか行ってやがったせいで、今回出番が少ねぇんですもの!! 存在感見せつけたりますわ!!」
「エリーゼはね。ジオの事好きだから、頑張るよ。お師匠はバインバインバイン草置いてってくれなかったから、お師匠の帰って来るところ守らないとだし」
「ありがとう!! エノキ殿が後はどうにかしてくれるだろう!! 我々は、彼の覇道の邪魔をせぬように、この戦線を維持! 可能であれば押し返す!! いや、できれば全てを斬り伏せる!!」
紅い大剣を地面に突き刺し、ジオ・バッテルグリフは魔力を燃やす。
その隣に立つのは、今回だけは綺麗なキノコさん。
「わた、わたたた! わたしがぁ!! 防御魔法を披露しますからねっ!! 馬車の守りは鉄壁ですよぉ!! ジオさんにも個別の盾を付与しちゃいます!! ふんす、ふんす!!」
かつてないほど女神ムーブをキメている、我らのヒロインエルミナさん。
彼女は悟っていた。
危機管理シミュレーション能力と、自己の安全マージンの演算能力においてはグラストルバニア最強まであるこの女神様。
「何かしておかないと!! 戦いで功績を上げないとぉ!! ……戦いの後に絶対酷い目に遭わされるって分かってるんですからねぇっ!!」と、未来視に覚醒していた。
普段の生活でも、「活躍しないとオチに使われてしまう」と言う危機を何度か味わっているエルミナさん。
その経験が今、確固たるビジョンとして彼女の前に立ちはだかる。
相手は花火姉さん。
彼女の辞書に「容赦」とか「遠慮」と言う文字は見当たらず、さらにおっぱい強者が相手になると当たりが強くなるきらいも完全把握。
絶対に乳掴まれて、最悪破裂させられるまである。
ならば、戦いで功績をあげて世界に認めさせるしかない。
「この女神がやはりメインヒロインだ。彼女の乳に手を出してはならぬ」と。
「さあ!! ゆくぞ!! 翡翠の聖騎士!! この私が相手だ!!」
「わたしもいきます!! やったりますよぉ!! おっぱいを守るためにぃ!!」
多分、もう2度と見られないであろうタッグが帝国軍に牙を剥く。
◆◇◆◇◆◇◆◇
穏やかでないのがその帝国軍を率いている翡翠の聖騎士マチコ・エルドッセブン。
彼女はそもそも、先行していたスリラーから「多分大丈夫です! 多分!!」と報告を受けており、それを鵜呑みにしていた。
それなのに、報告をして来たスリラーは秒で投降して、いつの間にか戦場から撤収している事実。
これには彼女もお怒りの様子。
「どういうことなんだい!? 誰か!! 状況が分かるヤツはいないのかい!?」
「恐れながら! マチコ様!!」
「ピンコ!! あんたなら分かるんだね!?」
「ええ! 私はあなたの従妹として、ずっと傍に仕えて参りました!! あなたの身に降りかかる事ならば、全てが把握できております!!」
ピンコ・エルドッセブン。
マチコの副官である。
その昔、異世界から来た偉大なラーメン店従業員の名前を引き継ぐ、マチコの1つ年下の血縁者。
帝国では副官や側近に自分の血縁者を登用する風潮があり、エルドッセブン家もそれに倣っていた。
「聞かせてくれるかい!? 何がどうなってるんだい!? ピンコ! あんたの占星術で未来は見えるかい!?」
「見えました!! マチコ様! ……あなた、死にます!!」
「ふざけんじゃないよ!! なんだい、それ!! 回避不可能な残酷極まりない未来は濁しなよ!! 仮に死ぬとして、死ぬよって予言されたら足が重くなるだろ!! もう、既に逃げたいんだけど!!」
「安心してください!! 私たち、全滅です!! 寂しくないですよ!!」
マチコの士気をゴリゴリ削っていくピンコ。
なるほど。これは共演NGを出されるのも無理からぬこと。
「その未来! 回避は可能かい!?」
「もちろんです!!」
「いや! 回避できるんだ!? 先に言いなよ!! で、方法は!?」
「キーパーソンがいくつか出ています!! ガチクズ! キノコ!! 破天荒!!」
「ええ……。どのキーパーソンもヤバそう。と言うか、最初と最後は同一人物じゃないかい?」
「敵を退け、いかに早くキノコと出会うか! これが私たちの生き残る唯一の道です!! と、星が言っています!!」
マチコはちょっとだけ無茶を言う星が嫌いになった。
とはいえ、彼女も聖騎士。
戦わずして死を待つのは流儀に反する。
翡翠色の細剣を腰から抜くと、彼女は号令した。
「あんたたち!! とりあえず、迫って来る敵を押し返しな!! いかに敵が強くとも、数が少なすぎる!! こちらは質量特化の布陣でとにかく押し返すんだよ!! その間に、アタシがどうにかするからね!! どうにもならんかもしれんけど!!」
マチコの号令の余韻が残る中、業火の刃が部隊の先頭にいた重装兵たちを吹き飛ばす。
「マチコ様!!」
「言わなくても分かるよ!!」
「紅蓮の聖騎士です!! 占いに出てない戦力来ちゃいました!! もう終わりです!!」
「いや! それは本当に言わなくて良いよ!! ピンコ! あんた、生きて帰ったら配置転換するからね!? 副官として何の役にも立ってない!!」
こちらも尻に火がついて決死行の様相を呈してきたマチコ部隊。
この戦場では、皆が何かに追われている。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「あー。あかん。お腹空いた。武光さ。なんか持ってへんの?」
「申し訳ありません。さすがに軽食を持ち歩いておりませんので」
そして、何かを追い詰める事に特化したガチクズ姉さんはこちら。
「えー。お腹空いたー。知っとる? 女の子はな? お腹すいたら元気でぇへんのやで?」
「はい。承知しております」
「おい! 武光ぅ!! ただでさえ男女間の発言力が問題になっとるこのご時世でな!! 女の子やから言うたらなんでも許される思うなよ!? 平等さを持てよ!!」
「私、まったく身に覚えのない発言の責任を追及されるとは思いませんでした。が、おっしゃる通りです。謝罪いたします。大変申し訳ございませんでした」
「あー。ほんま? 分かってくれたらええねんで? ところで武光。お腹空いたー」
「これは私、ループにハマりましたか?」
ちなみに、武光は現在『
花火姉さんはバールを発動中。
「おい! 敵だ!! あっ! 待て! こいつ!! 報告にあったヤバいヤツだ!! 下がれ、下がれ!!」
「なー。お兄ちゃん? 食べるもの持ってへんの? ウチ、お腹空いてんねん」
「い、いつの間に、小官の背後を……!?」
「いや。そんなんええねん。今は求めてないねん。そーゆうのは、もっと序盤でパシーン出てこんとさ? こんな誰も見てへんとこで強敵ムーブキメても意味ないやん?」
「こ、降伏する……!! 抵抗はしない……!!」
「あー。せやせや。そうやってな? 素直な心忘れへんかったら、ええことあるで? ウチのばあちゃんが死ぬ前に言うとったわ」
「……す、素晴らしいお言葉だ。今頃、冥府の世界でさぞや慕われておいでだろう!!」
「ウチのばあちゃん死んでへんわ!! 勝手に殺すな! ボケェ!!」
「うぐぅ……!!」
「申し訳ありません。私に出来る事は、あなたの体を遠くへ放り投げて、どなたか、救護兵に発見してもらえることを祈るくらいしか。……幸運を祈ります。そぉぉぉい!!」
この調子で、知らないうちに彼らは敵部隊の側面から本陣を急襲しようとしていた。
「ひっどいヤツやなー。武光! 倒れとる相手ぶん投げるとかー!! 嫌やー! ワイルドな若い子怖いわー!!」
「私はもう、何も申しません。営業マンは所詮、言葉がなければ戦えない職種。花火さんとはステージが違います」
花火姉さんはそののち、近くにいた帝国兵を3人ほどバールで殴り倒してから、「ええこと思いついたで!!」と満面の笑みを見せる。
「聞きたくないと言ったら、多分私が殴り倒されますね。伺います」
破天荒姉さん。
とてつもなく破天荒な事を思いついていた。
「あんたのキノコな! 1個ちょうだい!! ウチ、食べてみるわ!!」
「ええ……。さすがの私も躊躇しますが。この世界に魔神を勝手に誕生させると、マザー様のお怒りを買いそうです……」
花火姉さん。
キノコを食べるらしい。
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