第202話 ナスタと裏切者の立ち振る舞い。

――ナスタside――



「暗殺は失敗したか……ッチ、運のいい奴め、警戒されて次を出すとバレるじゃないか」



報告書で、カイルを狙った暗殺者が自害したことを聞いたとき、どうすれば次の一手を打てるか考えている所だったのだが――国王陛下からの手紙が届きドキリとした。

マルシャン公爵家からの刺客とはバレていない筈だと深呼吸し、手紙を開くと冬の行軍についてのテントと備品についての手紙の内容だった。



「ノルマン! ノルマンはいるか!」

「はい、ナスタ様」

「日の曜日に国王陛下から招集があった。冬の行軍に持っていくテントの納品は出来ているか?」

「はい、数も十分に出来ております。ですが防衛費ギリギリまで値上げして宜しいのですか?今までの五倍の値上げとなっておりますが」

「取れる処からは取って何が悪い。テントを作れるだけの施設も商業もマルシャン公爵家くらいしかしていないのだから、ここぞとばかりに貰うのが適切だろう」

「ですが、後々己の首を絞めないかと心配で御座います」

「っは! もしテントを作って持ってくるような輩がいれば、徹底的に潰せばいい。そしていかにマルシャン公爵家は優れているのかを示していけば、リディアを追い出したのは父であって私ではないと堂々と言えるようになるかもしれない。リディアを俺の手元に戻す為だ、何としてでも遂行せねばならん」

「……ですが、リディアお嬢様は」

「いうな……好きでもない男の元にいるなど可哀そうではないか。しっかりと戻ってきたらフォローして差し上げねば……。そして、妻になって貰わねば」



ダンノージュ侯爵家よりマルシャン公爵家の方が潤沢な金があり、姉を追い出した父が自分のしたことは間違いであったと言う公文書があれば、後はリディアが俺を頼って助けを求めれば問題ない事なのだ。

それでも、リディアを苦しめたカイルにはそれ相応の罰をと思ったのに、しぶとく生き残りやがって……。



「他に連絡が無いのなら俺は暫く考え事を、」

「ある筋からのお話ですが、リディア様は日の曜日国王陛下にお会いになるそうです」

「――なんだと!! それは本当なのか!!」

「何の用事でお越しになるのかは不明ですが、確実な情報です」

「嗚呼……これぞ神が俺の為に、俺とリディアの為に与えた絶好の機会と言う奴か!?」

「……」

「もしかしたら、命を狙われるようなカイルよりも実家に帰りたいと言いただしたのかもしれない! 俺の許へ帰りたいと願ってくれているのかもしれないぃぃぃい……っ」



愛する姉が俺の許へ涙を溜めて胸に飛び込むシーンを想像すると、体は痺れ熱い吐息が零れた。



「ノルマン! 直ぐに謁見の為の服を誂えよ! リディアに逢うに相応しい服をだ!」

「畏まりました」

「やはりリディアの瞳や髪の色に合わせた服が妥当だろう。俺達は相思相愛だったんだ……もう恥じることは無い、恥ずかしがることもない……」

「ですが、ダンノージュ侯爵家も同じ色合いで来る可能性がありますが」

「張り合おうって言うのか? この俺と! この俺の方がどれだけ領を富ませていると思っている!!」

「そうですね……税金が高いのは否めませんが」

「フン……その分仕事を与えているだろう。贅沢な領民等、飢えで死んでしまえばいいのだ」

「……」

「ははは! ダンノージュ侯爵家と言えど、所詮凡人の集まりよ。俺のように天才でなければ結局はダメなんだ。その天才の元に愛する者が戻ってくる。あるべき姿に戻るんだ!!」



そう言って高笑いしながら気分よく自室でワインを開けると、ノルマンは「それでは衣装合わせのために失礼致します」と言うと部屋を出て行った。

ノルマンは昔から姉に甘い人だったが、両親を幽閉してからと言うもの、随分と口数が少なくなったものだな。

きっと奴も姉がいなくなって寂しいのだろう。

あの太陽の様な女性は俺の傍で微笑んでいてこそ輝くのだからな!!!

ああ、そうなると姉の部屋も全て真新しい美しい物に変えなくては……。

いっそ俺の部屋の隣に、俺の妻が住む部屋に姉を……そう思うと興奮して雄叫びを上げたくなった。




だが――そんな俺を嘲笑うかのように、事態は思わぬ方面に向かう事になる。

ノルマンは俺に出さなかった一通の手紙を手にし、意を決した目で執務室へと入ると、俺が暖炉に投げ入れようとしていた書類を一式、本や書類の隙間に入れて見えない様に部屋を出て行っていたことなど、誰が気づくものか。


それが――地獄の始まりになるなど、この時の俺は考えすらしていなかった。






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某トーマ〇さんは言いました。

「事故は起こるさ」

某夫も言いました。

「時に裏切りもあるさ」

的を得てますね。

私も中学時代の親友から見事な裏切りを受けた経験はあります。

人を簡単に信じるなと言ういい経験だったと思っていますが

後に彼女の家が没落。

今では行方知れずとなりました。

生きていればいいですね。くらいの気持ちになるのが、された側です。

私も案外冷たいものだ('ω')ノ



何時も☆や♡など有難うございます!

毎日がいっぱいいっぱいですが、何とか更新出来てますので

応援よろしくお願いします(`・ω・´)ゞ

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