第201話 ブチギレリディアと愛弟子二人による猛攻撃の準備。

――カイルside――



その日の夜、俺が命を狙われたことでショックを受けて泣き続けるリディアを落ち着かせようと必死になって居る頃、祖父が慌てた様子で箱庭に入ってきた。



「カイル! 無事か!!」

「お爺様……。はい、俺は無事です。リディアの作ってくれた【身代わりの華】が一枚散りましたが……」

「犯人は取り押さえた直後に毒を噛んで死んだそうだな。依頼主が分かればと思い色々調べてみた結果、何ともお粗末な物が出てきて犯人が分かった」

「お粗末なモノとは?」



リディアも泣きながらも顔を上げ祖父を見ると、ブラウンさんは眉間にシワを寄せたままバサリと汚れた布を取り出した。

だがそれは良く見ると――テントのように見える。



「マルシャン公爵家が作っている簡易テントの一つだ。他所には出回っていない物だな」

「まさか!!」

「どうやらリディア嬢の義弟は、カイルを亡き者にしてリディア嬢を取り戻したいようだな」

「何てこと……」

「ではそれを証拠に出せば、」

「言い逃れして逃げるだろうな……。こうなっては我々も黙っていることは出来ん。リディア嬢、そしてリディア嬢の愛弟子よ。我がダンノージュ侯爵家に力を貸して欲しい!」

「「はい!!」」

「分かりましたわ、どの様な事でも致します!」

「お前たちのお陰でダンノージュ侯爵領は豊かになった。故に今ある商売が終わってからナカース王への謁見をと思っていたが、今回の襲撃で気が変わった。テント等と一緒にファビーの箱庭を国王陛下並びに軍幹部に見て貰おうと思う。次の日の曜日に予定を取って貰ったが、マルシャン公爵家は徹底的に潰すことにした。皆もそのつもりで動いていただきたい」

「当たり前ですわ!! カイルを狙うなんて……義弟と言えど許せません!! マルシャン公爵家に血の雨を降らせてやりたいほどですわ!!」

「リディア」

「それと、カイルに護衛を付けてくださいませ。Bランク冒険者でもウッカリ命を取られようとしたんですもの。心配でカイルが外に行ったら倒れてしまいますわ!」

「うむ、カイル。お前にはダンノージュ侯爵家より護衛を二人付ける。二人ほど付けはするが、お前は一人は育てている最中だと聞いている。どうする、その者が使えるようになるまでの間、二人付けておくか?」

「二人付けてくださいませ!」

「リディア……。分かりました、二人護衛をお願いします。ですがロックが成長した暁には、ロックを俺の護衛にしたいと思っています」

「カイル兄……ありがとう。俺必ず強くなって戻ってくるからな!」

「頼んだぞロック」

「ああ! それにリディア姉が此処までショック受けてるんだ。アレコレ文句なんて言わねーよ」

「ありがとう」

「では、早朝二人の護衛を連れてくる。週末リディア嬢とカイル、そしてリディア嬢の弟子二人はダンノージュ侯爵家よりナカース城へと向かう。この度の事は既に国王には話してある故、スムーズには動くだろうが心して売りにいけ! それと、徹底抗戦する為に、マルシャン公爵家も同時にテントを持ってくることになっている。笑いものにしてやれ!」

「「「「はい!」」」」

「それとリディア嬢、カイルに『身代わりの華』を持たせてくれていた事、心より感謝する」



こうして祖父は箱庭を後にしたが、リディアも落ち着いた……と思いきや、憤怒の表情で立ち上がった。



「……徹底的に、潰してやりますわ」

「リディア?」

「ああ、徹底的に潰してやらないと気がすまないね! 姑息な真似なんぞ使って何だい! タマ取りに来るっていうなら依頼主もヤラレル覚悟して貰わないとねぇ!!」

「全くです!! 『身代わりの華』があったから良かったものの、この様な事は絶対に許せません!! 断固戦います!!」

「カイル兄を狙う卑怯者なんて居なくなればいいです!!」

「ボクも皆さんと同じ意見です。ところでリディア姉、もっと冬の行軍で必要になりそうなものを作って付加価値を付けてやりましょう。相手が霞むくらいの物を作れば大打撃間違いなしです」

「ええそうね……ロストテクノロジー持ちの本気を見せてやりましょうか」

「ええ、徹底的に潰すために」

「そう、徹底的に潰すために」

「微力ながら、お手伝いします!!」



不味い、リディアの弟子二人もリディアもやる気だ。

俺も油断していたのが問題ではあるが……冒険者と暗殺者は相性が悪いのも問題だった。

今回は俺も命を狙われた当事者だし、リディア達と一緒にやる気にならないとな。



「よし! こうなったら手加減なしだ! 全力で潰すぞ!!」

「「「「おおお―――!!!」」」」



こうして、リディアと弟子二人は走り出し、残った俺達は後から来たレインとノイルに事情を離すと「ついにやったね」と二人は少々呆れモードではあった。

だが、二人も同じように怒ってくれていた様で、とてもいい笑顔で「瞬時に収入を失うと言う恐ろしさを身をもって知るだろうね」と目は笑っていなかったが口にしてくれた。


確かに、決定が下されればマルシャン公爵家は一切の王家から貰う収入が無くなると言う事だ。それはきっと面白い事になるだろう。

リディア達の作った商品と、自信をもって持ってくるマルシャン公爵家のテントでは天と地の差がある。

面白い事になりそうだ。


それに、まだこちらではテントの話を外では一切していない。

アチラはどれだけ驚くだろうか。



「カイル、君も良い顔をしているよ?」

「そうですか? ついつい面白い事になりそうだと思って」

「ははは、命を狙われつつも、それだけ楽しい表情が出来るんだ。楽しみじゃないか」

「ええ、是非楽しく潰してやろうと思います」



リディアに執着している事も気に入らない。

俺が死ねばリディアが戻るとでも思っているのなら大間違いだ。

スマートに、的確にトドメを刺してやる。



「久しぶりに滾りますね」

「ああ、近くで見れないのが残念で仕方ないよ」

「ご報告はしますよ」

「是非頼むよ?」

「詳しくな」



――こうして、翌日から俺には護衛が付くことになり、少し堅苦しい気分にはなるのだが、それでも俺は俺らしく行く事にした。

ビビッて箱庭に閉じこもる事は絶対にしない。


堂々と動き回ってやる!!!




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本日二回目の更新です。

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