第178話 調理師達から見た、箱庭とリディアの事。

――調理師side――



ええ、今日から調理師の見習いの皆さんですね。話はリディアさんから聞いていますよ。

調理師の仕事は大変かですって?

そりゃ~大変よ。だって大人数ですもの。

それに、お年寄りや子供達が多いでしょう? 食べやすい大きさに切って料理しないといけないのよ。これが結構手間なんだけれど、絶対に必要な事なの。


お年寄りや幼い子供は噛む力が私たちの想像以上に弱いのよ。

特に幼い女の子はそうだわ。

細かく刻んだ野菜や料理は、確かにカイル様が雇って下さった方々作ってくださるけれど、私たちがやる事は、まず一つ子供達の食事よ。無論味付けは大人と一緒ではダメだから、神経を使っているわ。

子供たち用の食材は隣のカイル様が雇った方から頂いて作っているの。そうね、女の子なら6歳、男の子なら5歳くらいまでは幼い子と同じ小さくカットした野菜や肉を使わせてもらっているわ。

次にお年寄りの食事。

お年寄りも噛む力がとても弱いの。飲み込む際に誤飲なんて起きたら大変よ? これは子供にも言える事だけれどね。

だから、食べやすい大きさにカットして、出来るだけ均等に細かく、それでいて顎がこれ以上悪くはならない様にと、塩梅がとても難しいの。

味付けは大人と一緒で良いけれど、お年寄りはどちらかと言うと、味の濃いものより少し薄めの物を用意するわ。

この箱庭では子供達は遊んで汗を掻くけれど、お年寄りはそこまで汗を掻かないから、味付けは若干薄めで用意しているわ。



「此処までは良いかしら?」

「はい、質問です」

「どうぞ」

「そこまで手間をかけてまで作らないといけないなんて初めて知りました。身体を壊した老人や子供には薬が処方されると聞きましたが、その場合も食事が変わってくるんですか?」

「ええ、リディア様が作り方を教えてくださった『御粥』と言うものや『あまざけ』と言うお酒は入っていないけれど、そう言った栄養を取るための、優しい食べ物や飲み物はあるわ。御粥も甘酒も、体調が優れないお年寄りや子供達に出すようにしているの」

「栄養が取れるんですか?」

「リディア様が言うには、甘酒は飲む点滴と言われる程効果があるそうよ」

「そんなに!?」



その一言で子供達は驚きの声を上げたわ。

確かに甘酒を飲んだ時の衝撃は忘れられないけれど、リディア様に体調の悪い方がいると言えば直ぐに作って頂けるのよね。

だから冷蔵庫には必ず甘酒が定期的に新しいものを入れて貰っているわ。



「さて、次に説明をするけれど、お年寄り用の食材は銀のボウル。子供たち用の食材は緑のボウルと分けられているわ。色で判断できるようになっているから安心してね。そして大人用の食材は、赤のボウルよ。味付けもかなり変わってくるけれど、結局は味の決め手になる大元を変えればいいだけだから、分量なんかは教えていくわね。ただ、暫くは野菜を切る事にも慣れて貰わないといけないから、大人の野菜から慣れていきましょうね。大丈夫、いびつな形でも料理は料理、愛情があればそれだけで御馳走よ!」



最初こそ切るのが苦手でガタガタになっても構わないわ。

それで文句を言う大人の方々はいらっしゃらないもの。

きっとリディアさんなんて喜んで食べてくださるわよ?


料理は真心。


それを教えてくださったのもリディアさんなの。

私たちだって味付けをミスすることだってあるわ。

でも、食べれない程のミスではないの。

けれど、申し訳ないなとおもいつつも出せば、皆美味しく食べてくれるものよ。

とあるお爺様は言ったわ。



「味付けはまぁまぁじゃが、真心だけはタップリとこもった美味い飯じゃ!」



その一言に、沢山の調理師たちは救われたこともあるの。

だから調理師は辞められないのよ?

癖になっちゃうの。

無論、慣れない内は「面倒くさいなー」って思う事もあるかも知れないけれど、そんな事を言っていられる暇がない程忙しいから安心してね。

毎日三食のご飯にオヤツタイムの二回。

ずっと台所に立ちっぱなしになるけれど、少しだけ時間が作れるうちに、私たちは急いで足湯だけをしにいくの。


足湯は良いわ。立ち仕事が癒されるもの。

しっかりと足湯をした後は、また頑張ろうって思えるの。


え? リディア様は手伝いに来ないのかって?

ああ見えて、リディア様は料理が得意じゃないのよ。

クリスタルで作る料理は得意なのだけれど、一から作る料理は苦手みたい。

でも、料理のレシピはとても多く持っていらっしゃるから、凄い事よね。

それが商売にまでなるんですもの。


それと、定期的に私たち調理師はカフェ従業員に変わったりするの。

ずっと同じ料理を作って飽きない様にと言う配慮ね。

あなた達もスキルが上がればカフェで働くことが出来ると思うから頑張ってね。



「そうそう、包丁になれていない貴方たちに、リディアさんからプレゼントがあるのよ」

「そうなんですか?」

「ええ、野菜は切れるけど手は切れない包丁ですって。とっても不思議だけれど、是非試してみてね。もし普通の包丁が良ければそちらを貸すわ」

「初めて野菜を切るから、リディア様の包丁を使います」

「私も」

「指を切ったら痛そうだし……慣れるまではこれで」

「ええ、それで全然構わないわ。じゃあ説明は以上! ドンドン野菜を切っていきましょう。切り方は教えるわ、是非スキルを上げて美味しい料理と作れるようになりましょうね。野菜を切っていけば嫌でもスキルは上がるわ!」

「「「「「はい!」」」」」」



ふふふ、とっても素直で優しい子たちばかりね。

とても教え甲斐がありそうだわ。

見守る仲間たちの目も優しくて、歓迎されているのが良く伝わるもの。



――ようこそ、料理の沼へ!

もう抜け出せないわよ?

ふふふ!





================

他視点からのリディアの事などでした。

明日まで続きます。


料理は真心!

作者の実家では、料理担当は祖父と母でした。

祖父の料理はとても美味く、子供6人分を常に作っていた人でした。

母は更に8人分を作っていました。

大家族だったんですよねw

懐かしい思い出です。

夫も料理がとっても上手です。

私はまだまだですがw

愛情だけはね、愛情だけは負けませんとも!!


いつも★や♡等有難う御座います。

いつも励みになっております!

楽しく読んでくださったら幸いです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る