第100話 商店街は大忙し!!

――カイルside――



「全く、道具屋の言う事は信用できないな。自分の店を守る為であっても、他の店を陥れる情報を流すとは許し難い」

「有難うございます。そう言って頂けると一週間死ぬ気で頑張った甲斐がありました」

「ここの商店街は君が管理しているのだろう? 大変だろうが頑張ってくれ」

「ええ、鳥の瞳の皆さんや他の冒険者の方々と懇意にさせて頂けるだけでも、幸福だと思います」

「……次期ダンノージュ侯爵家は安泰だな。我々もダンノージュ侯爵領の為に戦おう」

「それは有難い事です。ですが、どうぞ命を大事に、命あってこそです」

「ありがとう、カイル」



――と、沢山の冒険者の要る中でダンノージュ侯爵領のSランク冒険者、鳥の瞳のリーダーであるナインさんとにこやかに会話をしているのを、他の冒険者達は固唾をのんで見守っていた。

リディアの情報では、この鳥の瞳のリーダーは没落貴族の出らしいが、不正を許さず、また自分を律し、他の冒険者からも恐れられていると聞いている。

そのリーダーと笑顔で会話をし、互いに信頼関係を築けたことは、店としても大きな収穫と言えるだろう。


鳥の瞳が帰った後は我先にと道具店サルビアと専属契約を行う冒険者が押し寄せてきた。

冒険者が道具店と専属契約を結ぶ――と言う事は、それだけ道具店への信頼が無いとできないのだが、俺は横暴な冒険者以外は、例えランクが低かろうと契約を行う事にした。

次々に契約を成立していく俺に、ライトは呆れた様子で見ていたが、ロキシーは笑顔だった。



「専属契約はあちらの方ではしませんでしたが、良かったのですか?」

「あっちではダンジョンが多いから道具屋も多かった。だから専属契約なんてしなくても良かったのさ。だがこのダンノージュ侯爵領では、例の道具屋がデカい顔してほぼ一人で冒険者を独り占めしている状態だったからね。住みわけさ」

「住みわけ?」

「質の悪い冒険者をあちらに投げて、こっちではランクが低かろうと良い奴を選んでるってことさ」

「なるほど」

「これでアチラにも一定の冒険者は残る。ギリギリラインで潰れない程度のね」



そんな会話をしているロキシーの言葉に、俺は目線だけで次の依頼を出すと、ロキシーは鼻歌を歌いながら品出しに行ってくれた。

時間的にそろそろ13時だ。

布団店サルビア及び、洋服店サルビアでのセールがそろそろ始まるのだ。

そんな事を思っていた丁度その頃だ。

リディアが開発したセールを知らせる鐘の音が響き渡り、冒険者達も動きを止めた。



「これより洋服店サルビアと、布団店サルビアにてオープニングセールを行います! 冒険者の方々も是非、このセールに『ひんやり肌着』や、汗疹に悩む方々にも最適なガーゼシリーズを!」

「おい店主、『ひんやり肌着』ってのはなんだ?」

「午前中にはこの店にもあったって話だぜ」

「ええ、ご説明させて頂くと、湿気や暑さの多い地下神殿である程度快適に過ごすことができるように開発した商品です。大人、女性、子供用で各種大きさを取り揃えて洋服店で販売しておりますよ。汗疹も随分と減ったというお話をアチラの方で聞かせて頂きました」

「ほう、属国の奴らがか」

「ええ、それにアチラの方々はとても綺麗好きで、石鹸なんて売れに売れていますよ。無論、このダンノージュ侯爵領の冒険者の方々は更に綺麗好きでしょうし、身綺麗にしている方々も多いと思います。そんな冒険者にも最適な肌着ですよ」

「俺達は腐ってもダンノージュ侯爵領の冒険者だ! おい店員! 属国の奴らよりも俺達が綺麗好きなのを分からせてやる! 石鹸ってのを5つ俺は買うぞ。肌着もだ!」

「俺もだ!」

「属国の奴らに負けてたまるか!」

「ああっと、それとアチラの国でも売れに売れている更に身綺麗にするアイテムは、明日からの販売となります。是非明日もお越し頂けると幸いです」



そう言うと皆さんは対抗意識が激しいのか、必ず明日も来てくださると約束してくださったため、慌てて印刷していた石鹸の使い方も袋に詰めて売る事10分。



「冒険者の方々の入り口はコチラです!」

「一般のお客様の入り口はコチラとなります!」



と、広い店舗を上手く使う為、冒険者用のスペースと一般庶民のスペースに分けたのだが、どうやら飛ぶように肌着が冒険者と一般の庶民から売れているようだ。

更に言えば、洋服店にあった女性専用スペースは冒険者と庶民専用なのだが、髪飾りであるシュシュが飛ぶように売れている。

そして――。



「え、ひんやり肌着の素材でできた洋服とかあるの!?」

「やだ可愛い!!」

「ワンピースなんて普段着に良いわね。沢山種類があるわ」

「サイズも豊富よ」

「あら、男性用のひんやり肌着と同じ糸で作った服があるのね」

「うちの夫は暑がりだから二着買ってこうかしら」

「夫婦セットでどうぞって、これってガーゼのパジャマ? 寝汗も吸いそうで良さそうね」



と、奥様方の嬉しい会話が流れると



「おい、ひんやり肌着の素材で出来た服だとよ」

「冒険を休んでるときに良いな」

「伸びる素材なのか、いいな」

「種類も多いな……男と言えば色は白黒紺くらいだっただろ?」

「男にもオシャレをさせてくれるのは有難い」



「アタシ、一度こういうワンピースきて休みの日は過ごしたかったんだよ」

「セールだろう? 沢山買おうぜ!」

「アタシはこっちのワンピースがいいな」

「可愛いじゃん!」

「ちょっと、靴も売ってるじゃん!?」

「こんな可愛い服を着るのに靴までオシャレじゃないってのはね」

「買おう買おう!」

「それにこのガーゼのパジャマってのが寝汗吸ってくれそうでさー」

「買わないと損じゃん!」



こちらも上々な様子。

更に――。



「ガーゼの掛布団、此れ一つで暑さに苦しむ事が少なくなるやもしれんぞ」

「ああ、俺は宿屋の布団がゴワゴワで嫌いだったんだよ」

「あれ何処が卸してたっけ?」

「道具屋」

「まじかー。質の悪い物ばっかり卸しやがって!」

「宿屋の店主に全員で直談判しようぜ!」

「「「「お―――!!」」」」

「まずは、俺達もダブルガーゼのパジャマで寝るべきだろう」

「セールだろう? 二着は買えるじゃないか」

「だが風呂がな」

「さっき買った石鹸でも洗えるかもしれんぞ」



よしよし、明日はボディーソープにリンスインシャンプーがよく売れそうだ。

便利なものを買うと逃げることができなくなる。

一気に全部は品物を並べられなかったからな。

いや、いっそ仕事が終わったら店にポスターを幾つか貼るか。

シャンプーにボディーソープ。石鹸に汗疹対策のアイテム紹介。

色々貼っておけば目についたときに話題にはなるはずだ。

リディアで言う宣伝も俺も慣れてきたかもしれないな。



「ライトに他の人たちも聞いてください。ちょっとあっちに行ってポスター作ってくるので此処を任せていいですか?」

「はいよー」

「任せてください」

「行ってらっしゃいませ!」



こうして箱庭で宣伝用のポスターを作ってくるとリディアに告げると「ナイスですわ!」とお褒めの言葉を頂いた。

しかし。



「ただポスターを貼るだけでは物足りませんわね。ポスターを額に入れましょう!」

「ただのポスターをか?」

「ええ! 商店街ですけれど、ダンノージュ侯爵家のお店ですもの。オシャレに行きましょ!」



そう言うリディアに俺は笑うと、額はリディアが作ってくれるとの事だったので俺はその足でポスターを作って貰い、二時間ほどで作って貰った各店舗分のポスターを手に戻り、リディアに額を作って貰うと今日の夜、閉店後にでも壁に飾ろうと思った。

明日もきっと忙しい。

だが、属国となったアチラの方もきになるからな。

今日の夜は、全員であらゆることを話し合おうと決めたその夜――。





=====================

祝★100話目!!

此処まで続くとは思ってなかったですw

私が書いた一番長い小説で2000話超えがありますが

流石にそこまでは……行かないと思う。うん、多分。

商店街も上手く回っているようで安心ですね!


何時も☆や♡など有難うございます!

とても励みになっております!!

今後ともよろしくお願いいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る