第7話 決闘
──「【
白銀に輝く水流が渦を巻きながら俺へ迫る。
それは水でありながら、全てを切り裂く鋭さ、鋭利さを持っていた。
確かに俺は火炎系魔法は使わないで欲しいと言ったが、これも服がズタズタになるからなるべくならやめて欲しい。
「【
俺は一言呟くと、また右手を前に突き出す。
そんな俺の掌には、何かが圧縮されたような、小さく黒い塊が浮かんでいた。
ただ、その物を見た所で、特に何を思う訳もなく、小枝は追撃を加えてくるだろう。
だが、それは無意味であると、俺の右掌に浮かぶ小さな黒の点が教えてくれる。
──ギュオオオオオオオオオオオオオオオォォォン!!!!!!
突如、巨大化した“ソレ”は、勢いよく向かってきた小枝の魔法を一気に飲みこんだ。
そう。
“ソレ”とは、魔法で生み出したブラックホールの事だ。
掌で一気に膨張し、小枝の魔法を飲み込んだブラックホールは、俺に魔力を補充して空気中に霧散する。
「な……僕の魔法が一瞬で……!?」
その光景を見ていた小枝本人は、目を剥いて驚いている。
本気、と言っていたからな。
自分の本気が打ち消された時って結構来るものがあるよな。
心へダメージと言うか……。
とは言えだ。
「先生が見てないからって、あれは流石にやり過ぎだろう。」
俺が小枝にそう論すも、小枝は直ぐに違う魔法の構築を始める。
もしや、此奴はそこまで強くないが、自分より弱そうな奴を見つけていびってやろうとか思ったら返り討ちにされたことに怒っているのか?
「【
今度は毒系の魔法か。
この感じだと、喰らえば最後、徐々に体を蝕んでいき最終的に何もしなくても死ぬという類の魔法だろう。
だが、俺は長年の修行ですでに毒には耐性が付いているため、余程の猛毒……それこそ毒を無効化できる魔物が喰らっても死んでしまうような猛毒でも喰らわない限りは大抵の毒には耐性がある。
俺の体を飲み込む竜状の毒霧。
だが俺はそれを飲み込み、肺一杯に溜めて、一気に吐き出す。
小枝に返したのだ。
「俺は別に毒が好物って訳じゃないからな。それに、餌付けは美少女がやるからいいだろ?」
小枝は咄嗟に除毒の魔法を使う。
毒霧は小枝の前で消え失せ、其処には俺が毒を吐いた時に起こった強風だけだった。
「クソ……何なんだ……今の毒魔法はどんな生物も蝕み殺す最強の毒魔法だぞ……。」
おお……中々強力だったらしい。
でもそこまでレベルは高くなかった気がするが……。
まあいいか。
じゃあ、次は──
「──こっちの番だな。」
俺は地面に敷き詰められているサラサラの細かい砂を右手一杯に掴み取る。
そうして、ある魔法を発動する。
それは──
「──【爆化】。」
魔法を発動させると、小枝に砂を投げる。
もちろん、砂如きを結界魔法などで守る必要もない。
そう思ったのだろう。
小枝は目元を腕で覆うだけだった。
だが、本当の熟練者なら初見でもわかっただろう、俺が巻いた砂は──
──ボボボボボボボボオオオオオオオオォォォン!!
全て爆発すると。
「くあっ!!?」
小枝が咄嗟に全方位型の結界魔法を展開する。
が、それを粉砕して小枝に直接ダメージを与える。
少し髪と服を焦がしながら小枝が飛び退く。
「クソ……」
肩で息をしながら俺を睨みつけてくる小枝。
ゆっくりと立ち上がると目に力を込めて口を開く。
「お前の母ちゃんでべそ! 変態! うわーー!!」
ええーーーー……。
目元を腕で覆いながら走り去っていく小枝の背中を眺めて立ち呆ける。
そして、あながち間違っていない事を言われて完全には否定をできないのが痛い所。
俺は目を逸らして運動場を見る。
するとちょっとした人だかりが出来ていた。
「すげえ! あの小枝を!」
「難度5を救ったあの!」
「何もんだよ!?」
え、俺って何かした?
「おい! あれ俺の魔法だよなあ!? すげえなお前、一回見ただけで使えるとか天才かよ!?」
……ええと……まあ、うん、気を悪くされてないなら、いいかな。
周囲の良く解らない歓声を聞きながら、心中でそんな事を呟くのだった。
こうして、決闘と今日の授業は幕を閉じ、直ぐに帰宅することになるのだった。
──が、次の日の朝、俺の住まう事になった寮の、俺の部屋の前には制服の上にローブを着た、アイスブルーのショートボブヘアー少女が立っていた。
えっと……どちら様でしょうか?
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