第5話 友達
──「わーい!」
チュドオオオオオオオオオォォォン!!!!
粉塵が巻き起こり、運動場の地面に亀裂が走る。
「やったなー! よっと!」
ドガアアアアアアアァん!!
さらに追い打ちをかける様に、地面の所々にクレーターを作り、ガラス化させていく。
いや、バカンス気分かよ。
担任は高みの見物と言わんばかりに屋上に座ってるし。
舟を漕いでいる所を見ると、この場は只々担任がサボりたいだけなのかもしれない。
……試験とは?
土埃の舞う運動場を見て俺は、後処理が大変そうだなと思った。
「ん?」
俺は一人だけ詰まらなそうにしている青年に目を向ける。
好青年とは言い難い、ウェーブがかけられたモヒカン(?)を横に倒してそのまま垂らした様な変な髪形、色は赤。
それに頬にタトゥーが入っており、目も鋭い。
あまり関わっちゃいけないタイプだな。
あ。
ヤバイ、目が合った。
「おい、何見てんだよ。」
ヤバイ、声かけられた。
ヤバイ、え、ヤバイ。
「い、いやあ、周りの人よりも強そうだなーと思って……それなのに何で魔法を使ったりしないんだろうと……ね?」
「あ? お前分かんのか? 見る目あんじゃねえか!!」
俺の腕を軽く叩き、ガハガハと笑う。
意外と気さくな人で良かった……。
それに、実際周りよりも魔力や闘気が洗練されている。
余程鍛錬を積んだのだろう。
まあ、それでも周りよりと言うだけで、俺が倒した魔王程ではないが。
「俺は、『難関』と言われる世界を救ったからな。こいつらの魔法がじゃれ合いにしか見えねえんだよ。」
「……他の世界の事はあまり知らないけど、難関なんて言われる世界を救うのは確かに凄いね。」
「だろ? お前分かるじゃねえか! 名前は何て言うんだ? 俺は勝龍 昴だ。」
「あ、ええと……」
そうだった、ここは日本人の異世界転生者が集まるんだった。
とは言え、前世の名前を言うのもなんか嫌だし。
じゃあ日本風に……。
「えっと、
よし。
いや、なにもしようとしていないぞ?
みすいって書いたからって……ね?
うん、この話はやめよう。
「世冥か、今日からダチって事でよろしくな!」
「あ、ああ、よろしく。」
……何故かヤンキーみたいなのと仲良くなってしまった。
いや、人を見た目で判断するのは良くないな。
よし。
「えっと、なんか、得意な魔法ってある?」
「ん? あー、得意な奴はねえけど、オリジナルならあるぜ。」
「オリジナル?」
「ああ。【
「【爆化】?」
なんとも聞きなれない組み合わせだ。
「こいつは爆発魔法と付与魔法を合わせた魔法でな、簡単に言うと、持った物全部爆弾に出来んだよ。」
なんだその危険な魔法は!?
そんな魔法があっては爆発物を取り扱う店の人とか商売あがったりだな。
しかも解除方も無いと来たらいよいよお手上げだ。
「まっ、魔法かけてももつのは5分、10分って感じだけどな。それに解呪やら解除、浄化だったりの魔法を使われたら直ぐに消えちまうし。」
意外とだった。
まあ、そう上手くはいかないよな。
それ以前に魔法としての危険度はそこまで高くないしな。
それでも数と魔力の量によっては危険度は高いだろうが。
「んーそうだな。」
そう言うと、近くに落ちてた落ち葉を拾い上げ、魔法を発動してみせる。
魔力の流れを俺が感じた次の瞬間、昴が落ち葉から手を放す。
そしてヒラヒラと落ちて行った落ち葉が地面に着く。
瞬間、爆炎が炸裂した。
何も燃える物が無く、火の手が足掻く事は無かったために黒煙が上がる事は無かったが、その爆発が起こった場所は黒く煤けていた。
「おお、、、凄いな。」
魔力は微量しか感じなかったが、その迫力はすごかった。
「まあ、魔力は全然使ってないけどな。」
ほう、やはりセーブしてたのか。
「というか、あいつら良く飽きないでこんなに魔法オンパレード続けられるな。」
「ああ……と言うか、地面がかわいそうだな。」
「あ? あー……確かに、ひでえなありゃ。」
あ、素直に肯定してくれるんだ。
もっとこう、俺ならもっと行けるぜ! みたいな感じかと思ったんだが……。
俺が苦笑いを浮かべていると、少し離れた場所から声が聞こえてきた。
「やあやあやあ、そんなチンケな魔法を撃っていて楽しいかい?」
そんな嫌味な言い方をして出てきたのは、茶髪のセンターパートを決めた青年だった。
ふむ、昴よりも面倒臭そうだな。
そして、そんな青年は──
「ん? 君は……フッ……本当にAクラスの人間か?」
「……え、もしかして、俺?」
──俺を指さしてそう言った。
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