第4話 学園
──「えー、本日は入学おめでとう。」
体育館にそんなしゃがれた声が響いた。
今日はこの学園の入学式である。
初老の爺さんが前に立って話を進めている訳だが、この感じは……結構偉い人だと思う。
雰囲気がそこら辺よりも少し大きく感じる。
知らんけど。
「元勇者である君たち、基、既に勇者という存在ではなくなった君たちには、この世界に跋扈する魔物を駆除してもらう。」
その爺さんは降りていた瞼を開いてそう言った。
眼光が俺達を貫き、背筋が強制的に伸びてしまう。
そんな生徒達をよそに、爺さんは進める。
「君たちは魔王を倒し、世界の脅威となった。そして、この世界でもそれは変わらない。だが、この世界には君たちの知る魔物が全て存在するだろう。つまり、最も脅威となる世界が此処という事になる。」
爺さんが俺達を見渡して一つ、最後の一言だと言わんばかりの声量で叫んだ。
「廃勇者諸君よ!! 世界の脅威となりて、世界を救え!!」
そんな言葉が反響し、やまびこの様に抜けていく。
此処に居る誰もが声を発する事無く姿勢を正し、次の言葉を待った。
だが、次の一言は無く、そのまま入学式は終わった。
あの気迫はただ者ではないな。
まあ、あの魔王ほどじゃないから何とも言えんけど……。
クラス分けは既に行われており、俺は張り出された紙を見て指定の教室に向かうだけだ。
俺はAクラスらしい。
そして、そのAクラスが何処か分からない。
ここはどこだ?
さっきから突き当りを行ったりきたり……。
迷った……?
あ、ありえない!
生まれてこの方(前世は含まない)、迷った事なんてないのに!!
俺が走り回っていると、目の前にヘルパーと名乗っていた少女が現れる。
ちょうどいい!!
「すいません! Aクラスってどこですか!」
「……其処の突き当りを左です。右に行ってしまうと、同じ場所を回るだけなので。」
「あ、そっすか……ありがとうございます。」
やばい、なんかめっちゃハズイ。
俺は少女の言う通りに進む。
すると、ワイワイと賑わう空間が見えてくる。
その中の一つ、『1-A』と書かれた札の張られた個室に入る。
そこは、少し未来チックな内装なだけの、普通の教室だった。
だが、そこにいるのは、誰もが個性的で、一人として異質ではない者、普通の者がいなかった。
そして思った……全員容姿が整い過ぎでは? と。
さっきの少女に聞いた話だと確か、異世界に転移すると、その時に根源の部分から作り変えられるのだとか……。
いや、怖すぎだろう。
とはいえ、俺も異世界に転生した身としては何も変わらなくはないのだが、、、。
それに、日本に戸籍が無い俺にとってとてもご都合的なのが、転移者は転移した際にこの世界から存在していた痕跡を全て消されるのだとか。
そのため、俺達が本当にこの世界にいたと裏付ける事が出来るのは、俺達が此処に居ると言う事実のみ。
このクラスにはこれと言ってすごい力を持つような奴はいないよな……。
どうなんだろう?
これが普通なのだろうか……?
本当にこれで世界を救えたのかが気になる。
うん。
気にしたら負けだな。
──数分後、クラスには担任がやって来る。
担任は少し男っぽい容姿だが、声、歩き方的に女性だろう。
そうして、俺達をその目に据えると一言言い放つ。
「これから、クラス内実力試験を行おうと思う。」
そして、発言の意味が分からない。
どういう意味だろう。
「この試験は別に争いではなく、君たち個々人の実力を測るために行うものだ。決して他者に危害を加えないように。そして、万一にも怪我人が出た場合は治癒魔法などが使える物が即座に治療をするように。いいな? では、運動場へ出発だ!」
そんな良く解らない発言により、俺達はこぞって運動場に出た。
そして、少し騒がしく、危険度の高いじゃれ合いが始まった。
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