第3話 帰還
──「いやあ、変わったなー。日本……であってるんだよな……?」
俺は目の前に起立する巨大な建物を見て呟く。
全体的に白く、縦長のタイル張りのような建物。
だがそれは、今まで見た事のある建物の物理法則を破っているようだ。
そう、空中に個室の様な物が浮かんでいるのだ。
下の縦長の建物とは違い、修道院の様な見た目をしているが、どんな場所なのか……。
と、それよりもここが何処か、と言う所だが……少し時間をさかのぼるとしよう。
──「どうも。ここは貴方の生まれ故郷である地球です。見たところ、外国人の様な顔立ちですが……この場所で召喚されたという事は日本人なのでしょう。もしくは、此方で済んでいた方か……。兎も角、お帰りなさいませ。これから入学試験がありますが、絶対に落ちる事はありませんのでご心配なく。」
太めの黒縁眼鏡をクイッと上げて説明兼出迎えをしてくれる少年だが、入学試験とはどういう事だろうか……?
そもそも、どうやってこの世界で俺を召喚したのだろう?
というか、俺まだ日本語理解できるんだな。
「わ、わかった。ええと、どこに行けばいいんだ?」
俺は拙い言葉遣いで少年に問う。
すると少年は、ある場所を指さして言う。
「エレベーターで下へ向かってください。最下層。そこに試験場があるので。」
その方には、ガラスのような透明素材で作られたようなエレベーターがある。
だが、ボタンがない。
これをどうしろと……?
一応近付きはするが……。
と、俺が近付いた途端に、体内の魔力が吸い取られるような不思議な感覚。
俺は首を傾げ、その感覚が収まるのを待つ。
俺の指先から抜けていくような魔力の感触は段々と弱くなっていき、ついには停止する。
《ピーン! 最下層構築が完了しました。手元のパネルを操作して最下層へ向かってください。》
なんか、さっきからラフだな。
もう少しこう……まあいいや。
俺はいきなり現れた薄いパネルに書かれた最下層というボタンを押す。
するとエレベーターの扉がゆっくりと開く。
俺がその中へ乗り込むと、少しの揺れを感じさせ、扉が閉まる。
そしてゆっくりと降りていく。
それは徐々にペースを上げ、一気に降りていく。
──それから40分後、俺は試験を終えていた。
聞く話によれば、階層の深さによってランクを決めているらしい。
まあ、そんな事よりもここの説明が欲しい。
そう思っている時だった。
目の前に少し緩い学校の制服の様な物を着た少女が現れる。
まあ、制服にしては、フードが付いていたり、袖がダボダボとし過ぎて手が見えていなかったりと、少しおかしな感じだが……。
「どうも。私はこの学園でヘルパーを担当している者です。何か質問はありますか?」
目の前に現れた少女はそう言うと、俺の眼を見る。
俺はその目を見返して質問をする。
「ここはなんですか?」
「ここは異世界転移者をこの世界に連れ戻し、教育を受けさせる学び舎です。」
「じゃあ、どうやって呼び戻してるんですか?」
「この世界での記憶を持ち、魔王を討ち滅ぼした者という条件下の下、召喚用の魔法陣を用いて行っています。」
「……そもそも、この世界には魔力も何もないはずじゃ……。」
「いいえ、つい200年程前にこの世界にも誕生したのです。」
ほう、それは興味深い。
俺はそれからいくつか質問を続けて、ある程度満足したところで区切ると俺に白い制服の様な物が受け渡される。
「それでは、ようこそ、異世界転移者用教養施設、『
こうして俺は、少し怪しげなこの学園に通う事になるのだった。
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