第29話 下っ端女神は太陽神とチビ太陽神に溺愛される。

――半年後。

一冊の本が神の国に出ると、それは爆発的に――そしてあらゆる神々に衝撃を与えました。

ほぼノンフィクションで書かれたその本は、私とエルグランド様の愛を書いた小説でもあり、ナヌーサ様がいい塩梅に仕立て上げた究極の小説!!


神々は初恋を実らせ、最高位の神にまで昇りつめて誘拐するように最下位下っ端女神を攫っていった様子までも知り、驚きを隠せず。

その愛の重さに女神たちにも激震が走り――半分は受け入れ、半分はノータッチ案件と定め、男神には、一途に一人だけを愛するというエルグランド様の愛に究極の愛を見出し、それはあっという間に神々の心を掴んでいったのです。


連日、モデルとなった私たちに会いたいという読者は多数来ましたが、早々会えるような神々でもないため、門前払いをする日々ですが。その数は日々膨れ上がる中、ついに!

ついに、私も妊娠が判明し、それは連日来ている神々に報告され、「愛が一つに――!」と言う謎の雄叫びが響いていました。


神々の妊娠とは目出度い事でもあり、連日贈り物が山のように届き、母であるフィリフィア様も喜んで会いに来てくれました。

フィリフィア様も小説を読んだらしく「本当に愛されているのね」と涙ながらに語っていましたが、ええ、とっても愛されましたわ。色々な意味で。



「神々の妊娠はスポーンと生まれる様なものなんでしょうか?」

「時が来ればお腹が光って生まれてきますよ。痛みは少しだけある感じかしら?」

「なるほど」

「豊穣の女神は安産で有名なの。安心して産んでいいと思うわ。わたくしも出来るだけ会いに来ますから」

「有難うございます」

「とっても眠る時間が増えると思うけれど、それは順調な証拠。エルグランド様もフィフィが寝ている間は起こさない様にしてあげてくださいね」

「そうしよう。フィフィ……やっと一人目だな」

「50人は勘弁してくださいね」

「では、せめて長い神の人生だ。20人行こう」

「それでも多い……」



そんな会話をしながらも、神々の間でブームとなった私たちの小説は、一種の恋愛指南書のようにもなり、男神は愛と言う真心を女神に、女神は「コイツ病んでないだろうな」と恋愛をするときの一つの確認事項にもなったようです。

しかし――。



「まぁ、神々って言うのは大体病んでるものだけれどね」

「ナヌーサ様までそれ言います?」

「言うわよ~。恋愛って結局は頭の中がお花畑ってことでしょう? 脳から危ない薬でも出ているんじゃないかしら?」

「そうかもしれませんね」

「それが出過ぎた結果が病んでるだけであって、少なからず神々とは病んでるものだと思うわ」

「ではナヌーサ様も?」

「ええ、でなければあんな小説書けないわよ~」



そう言って笑うナヌーサ様が本日来られたのは、私が妊娠中の眠りに入る前日に、サイン入りの本を持ってこられたから。

推しのサイン入りの本……嗚呼、神殿に新たなる神として祀りたい!!



「そうそう、もし可能なら貴方たちの子育ての話も書きたいわ。続編としてね」

「子育てですか?」

「ええ、どんな感じの子育てになるのか気になるじゃない? それにこの神の国には育児本なんて無いし。下界に行けたのなら育児本とかあらゆる書物を買いたいくらいよ!」

「育児でしたら、元々子供の園で働いていたのである程度は」

「頼りになるわ! 色々教えて頂戴ね!」

「はい、子供が落ち着いてからになりそうですが」

「それもそうね、元気な太陽神が生まれるのか、元気な豊穣の神が生まれるのか楽しみだわ!」



そう、母親と父親の神が違う場合、子供はどちらかで生まれてくる。

お腹の子はどちらだろう。女の子なら多分豊穣の女神だろうが、男の子の場合は分からない。

男の豊穣の神って珍しいんだよね。だから競争率も高いんだけど。

ちなみに私の父は豊穣の神だった。



「太陽神だった場合、母体が燃やされませんかね……」

「それはないわ。赤子は母親がなんの神か理解して生まれてくるっていうから」

「なるほど」

「きっと、凄く父親に性格も中身も似た男の子か、とってもあなたに似た娘かのどちらかでしょうね、楽しみだわ!」

「色々不安しかありませんが、楽しみですね!」



こういう会話もあと少し――と言う所で、エルグランド様が部屋に入ってきた。

無論タイリアとエルナも一緒だ。

豊穣の女神は子供がお腹の中である程度大きくなると生まれるまでの間、眠りにつく。

今日がその眠りに入る日の為、皆代わる代わる会いに来てくれて、エルグランド様なんてとっても落ち着きがない。



「フィフィ……君が眠っている間も必ず隣で寝るからな?」

「はいはい、手は出さないでくださいね」

「分かっている」

「タイリア、エルナ……私は暫く眠りにつくけど、後の事はお願いね」

「分かりました。常に美味しい水はお任せください」

「アタシも近くにいるから安心しな」

「ありがとう。次に会えるのは生まれる時ね……なんだか眠くなってきたわ」

「そろそろ母子共に眠りに入るのね……サイン本は枕元に置いておけばいいかしら?」

「お願いします。エルナとタイリア、後で私の部屋に運んでおいて下さい……祀りたいので」

「はいはい」

「分かりましたわ」

「では、暫く眠りにつきます……あまり一人にしないでね?」



そう言うと目が閉じていき……最後にギュッと大きな手で握られる感触と温かさに――エルグランド様だと直ぐに理解出来た。

温かいなぁ……。

昔は熱く感じたのに、今はとっても温かいや。



こうして眠りにつく前にふと頭を過ったのはナヌーサ様が書いた私とエルグランド様のノンフィクションに近い小説のタイトル……。



『下っ端女神の結婚事情~最高位太陽神に溺愛される~』



子供も溺愛されるんだろうか、それとも私が溺愛される側になるんだろうか……。

嗚呼、お互いが愛し愛されの子育てになると、凄く素敵だわ。





◆◆◆




―――その数年後。



「パパあっちいって!! ボクのママなの!!」

「何を言う、俺の大事な妻でもあるんだぞ!」

「あっちいって――!!!」

「いや―――!!」



嗚呼、今日も二人の愛が重い……。

そんな事を、二人目をお腹に宿しながら過ごす時間。

無事産まれた最初の子供は、太陽神の男の子でした。

パパソックリでママビックリよ。

既に三歳になる息子はスクスク成長し、毎日エルグランド様とママの奪い合い合戦をしている。



「ほらほら、二人とも。ママそろそろ寝る時間に入るから」

「起きたらあかちゃん生まれるんでしょ!?」

「そうよ~」

「次は女の子だな!!」

「やったぁ!!」

「そんな勝手な……」



まぁ、二人ともソックリで……似たもの親子ってこういう事を言うのよね。

そんな事を思いながらも、うつらうつらとして反論する力もなく――。


余談だけれど、タイリアはなんと、ナヌーサ様と結婚した。

タイリアの男らしいさに惚れたナヌーサ様による猛アタックだったとか。

エルナも結婚し、夫となった雨の神であるヌエリオスと共に太陽神殿で生活をしている。

毎日美味しい水を貰えて私も大満足だ。

何時か、みんなの子供とで遊ぶ姿を見る日が来るのだろうと思うと、楽しみで仕方ない。



「ママは暫く眠りに入るけど、お父様の言う事はちゃんと聞いてね?」

「はーい」

「パパの言う事聞かないと、ママみたいなお嫁さんが貰えないぞ」

「もらう――!!」


あらあらまぁまぁ。既にヤンデレの片鱗が?

嗚呼、いっそ意識を飛ばして眠りに入ろうかと思いながらも、片方ずつ息子と夫に手を握られ、ちょっと幸せな気分に浸りながら眠りについた。

子育て、これ以上エルグランド様のように病まないように育てよう……。

そして後18人頑張って産もう。

そんな事を思いながら――幸せな眠りへと入っていったのは、言うまでもない。




~『下っ端女神の結婚事情~最高位太陽神に溺愛される~』 Fin~




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無事、息抜きに書いた小説でもある

「下っ端女神」完結しました(/・ω・)/


勢いだけで書いたのでアレですが、楽しんで頂けたら幸いです!


主人公であるフィフィが駄肉と書いてある通り、ぽっちゃり系女子なので

正直需要は無いかなと、マニアック向けかなと思いつつ執筆してました。

大体のヒロインって言うのはこう、細くて出てるところは出てる的な。

誰もが憧れるナイスボディなヒロインが多いと思うんですよ。

でも、ポッチャリでも愛されたい!

と言う乙女も多いと思います('ω')ノ

なので、前々からぽっちゃりスタイル書きたかったんですw


――と言う作者の想いを詰め込んでみました。

最後までお付き合い頂き、本当に有難うございました!

また、現在新連載で

「シャルル・エーデルワイスは優雅に微笑む~アナタの見た目、仕立て直します~」

も、連載中です。

こちらは、一日三回更新です。宜しければ応援よろしくお願いします(`・ω・´)ゞ


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【★完結★】下っ端女神の結婚事情 ~最高位太陽神に溺愛される~ udonlevel2 @taninakamituki

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