第27話 辛辣駄肉女神たちと土下座の最高位太陽神。

出会った頃は、エルグランド様に連日燃やされたり自分は着火剤かと悩んだ日も多かったものの、上位女神に進化してからは燃やされることも無く平和に過ごしていた。

しかし、夫婦と言う事で肌を重ね合わせてからは毎日盛る夫であるエルグランド様に嫌気がさした。


私自身が自分の見た目が呪いもあって駄肉であることが原因かもしれないが、やはり駄肉と言うのは切ないもので……せめて腹の肉が少しでも引っ込めばと思い、タイリアに相談して運動をしたり、自分でも色々頑張った方だ。


前世でだって此処まで誰かの為にダイエットなんかしたことが無い。

駄肉は駄肉で良いと思ってたし、トドと言われようとなんだろうと気にもしなかった。

しかし、今の私では駄目だ。

何せ夫であるエルグランド様は最高位の太陽神であり、全ての神々のトップ。

その嫁に最下位下っ端豊穣の女神を貰ったことは、きっと神々の世界では激震が走ったに違いない。


と言うか、冷静に考えてみて思ったんだけれど――。



「幼少期の恋って、皆さん叶ってるんですかね?」

「叶わないのが多いだろう? なぁ? エルナ」

「そうですわね、神々とは恋多き者ですから、余程の執念の執着がなければ、無理ですわね」



三人で運動しながら他愛のない会話をしつつ身体を絞る時間。

まぁ……二人は流石上位の神々なだけあって運動する必要のない素晴らしい体なんだけれども、付き合って貰っている私としては会話しながら運動できるのでありがたい。



「今更だけど、最高位の太陽神が最下位下っ端女神を妻に貰うって言うのは、かなり荒れたんじゃないですか?」

「荒れたと申しますか……気が付いたら太陽神に妻が居たと、皆さん騒いでましたね」

「強行突破だったんだろ? 最高位の太陽神になったその日に迎えに行ったって聞いたぜ?」

「なんかもう、エルグランド様の執着はアレですね。強い神ゆえに? 強い力を持つが故に? みたいなモノなんですかね?」

「生まれ持ったナニカ……と思いますわ」

「「生まれ持ったナニカ……」」

「それを開花させたのはフィフィ様だと思いますわよ?」

「開花させちゃったんですかねぇ……。正直あそこまで粘着力の強い想いと言うのは驚きでして」

「エルグランド様のフィフィ様への愛は、他の神々……特に女性にとっては、羨ましいが半分、残り半分はドン引きだそうですわ」

「あ――……自由のない完全なる囲い方と言うか、病んでるよな」

「それですわ! 見る分のヤンデレは良いけれど、いざ自分が愛されるとなるとドン引きしたくなるというかなんというか、そう言うことですわ!」

「つまり、エルグランド様はそう言う位置に思われている訳ですね」



納得です。

私もここまで囲われるとは思いもよりませんでした。

普通の神々の妻とは家に篭る事が多いそうですが、やはり夫に着いて行って仕事をする女神もいるそうで、けどエルグランド様の場合絶対外には出さないマンになってますもんね。

部屋から出てうっかり出会おうものなら、その場で何されるか分かったもんじゃねぇ。



「部屋から一歩も出ずに過ごすって、すっごいストレスなんですよ……」

「分かりますわ」

「だよねぇ、アタシだったら耐えられずに離婚してるわ」

「せめて神殿内くらいは自由に歩いて、子作りは部屋の中で。ていうのが望ましいんですけどねぇ……」

「分かりますわ、とっても良く分かります!」

「大体外でヤルって感覚っていうのがさ――盛ったオスって感じで受け付けないね」

「「ですよね――」」

「貴方の事を言ってるんですよ? エルグランド様」



と、運動中部屋を覗いているエルグランド様に目も合わせず口にすると、夫婦部屋と繋がっているドアが開き、膝をついて土下座しました。

あの最高位太陽神が、土下座って。

ちなみにエルグランド様が何処から聞いていたかと言うと、最初からです。

あからさまに燃え上がる髪と光が差していたら気が付きますって。



「世の女性は外でヤルって言うのを嫌がる女性もいる訳ですよ。ちなみにここにいる三人は正にソレに当たります」

「本当にすまなかったと……思ってる」

「下衆の極みって解ります? 自由を奪って閉じ込めて何がしたいんです? まぁ、ナニがしたいから閉じ込めたんでしょうけど」

「本当に面目なく思い……」

「そんなものは、愛情とは呼ばないんですよ。ただの執着って言うんですよ。んなもん、いらねーっつの」

「フィフィ……」

「と言う事で、暫く顔も見たくありませんわ。お帰りになって下さる?」

「本当にすまなかった!!! それだけは勘弁願えたらと……切に…切にっ!!」



必死に謝り倒すエルグランド様には申し訳ない等とは一切思いませんが、それ位腹が立って仕方がない!!

自由がないのはストレスなのよ!!!

欲しいナヌーサ様の本も買えない! フィギュアも買えない! そんなのストレスしか堪らないっての!!!

私の怒りの波動を感じてか、タイリアとエルナさんもちょっと怯えているけど、それ位腹がたってしかたねぇ時だって私にもあるわ!!!



「もう外でヤルなんて言わない! 無理強いもしない! 我慢できない時もあるが……その時だけは助けて欲しい!! 出来る限りフィフィの要望に応えるから、応えるから……」

「当たり前の事に今気づいたんですか? 呆れました」

「いやだ……っ 俺を捨てないでフィフィ!!」



絶叫と共に、ガラスがバリーンと割れた。

偶像は咄嗟にタイリアが守ってくれて無事だったけれど、流石タイリア頼りになる!!



「捨てられたくなかったら、私にも自由を下さい、自由を!!」

「分かった……でも他の男神と仲良くするのだけは……駄目だぞ?」

「相手に寄ります。もし仮にナヌーサ様が男神であらせられるのであれば……嫁に行きたい」

「待てフィフィ!! 行かせない、行かせないからなぁ!!!」

「何です? ちょっと本音が出ただけじゃないですか。大体あの様な素晴らしい小説を書いてる方が男神な筈ないじゃないですか。コテコテ恋愛ラブラブ小説ですよ? 王道すぎてどの女神も夢見るような小説を書く方ですよ? それが男神だったら驚きですよ」

「あら? フィフィ様ご存じない?」

「ん?」

「ナヌーサ様は男神ですよ? 体毛の凄い筋肉圧が凄いと言うか、もうフェロモン満載みたいな感じの髭の濃い色黒の男神で有名ですよ?」



――たった今。

女性が憧れる全てのシーンを書いているのが、美人な女神ではなく、体毛の濃い筋肉圧のフェロモンむき出し男神と知り、頭が宇宙と言うかなんといえばいいのだろうか……。



「女神に生まれてきたかったナヌーサ様は、その思いの丈を小説に込めている事で有名ですわ」

「おっふ……」

「浮気は許さないからなフィフィ!」



あっちもこっちも色々収拾がつかない。

取り敢えず言えることは一つ!!



「フィフィ!!」

「ちょっと黙っててください!」

「なっ」

「今、ナヌーサ様の事でショック受けてますから!!!」

「俺の事をもっと思ってくれても良いじゃないか!!」



エルグランド様涙目だけど今はそっちの心配よりも私の心配!!

そっか……ナヌーサ様は女神に生まれたかったのね。

そしてあの素晴らしい小説を生み出していると……なんて尊い方なの!!



「私、ナヌーサ様のファンにもっともっとなったわ!」

「俺の事は!?」

「エルグランド様の事もそれなりに好きですよ」

「一番じゃないのか!?」

「それが重いって言ってるんですよ、その言い方! 貴女の愛は高カロリーでカロリーオーバーなんですよ!! 私はもっと自由でいたいんです!」



その後も押し問答の末、私はついに――自由を勝ち取ったのである。

出来うる限りの私の希望は添って貰う事になったので満足!

これで安心して外を歩けるってもんですよ!



「エルグランド様は悪い方ではないんですよ? ただ愛が重いだけで」

「そう、愛が重いだけで」

「君たち二人に慰められても嬉しくないんだが……」

「まぁ、フィフィが生き生きしてるんだからいいじゃん?」

「そうですわよ」



そう二人に慰められているなんて、知りもしませんでしたけれどね!





===================

お越しくださり有難うございます。

今回でラストです(/・ω・)/

此処までお付き合いして頂き有難うございます!

一気に三話、是非、お楽しみください!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る