第25話 駄肉女神、諸々諦めつつも要望はシッカリと通す。

一週間後――。

ガッツリと抱きつぶされた私は足腰が立たず、エルグランド様に姫抱っこをされて初めてご両親と対面した。

エルグランド様によく似たお義父様に、優し気なお義母様。

私たちの様子に満足そうに頷き合い、「心配は必要なかったな」と語り合いながらフォルニャンを持ち帰って貰う事になった。

無論、フォルニャンは離宮を出ることを拒否したけれど、ここはエルグランド様の神殿。

エルグランド様が駄目だと言えばダメなのだ。



「酷いわ! あんまりよ! 私の事を第二妃にしてくれないと恥ずかしくて次の縁談だって来ないわ!! 一度も御手付きにならず返されるなんてあんまりよ!!」

「そうか、だがお前には礼を言う。お陰でフィフィを抱きつぶして足腰が立たなくなるまで子作りが出来るようになったのだからな!」

「とんだ噛ませ犬ですわ――!!」

「父さん、母さん、俺達はこれから蜜月に入りますので、これ以上この様な事は為さらぬようにお願いします」

「蜜月はどれくらいとるの?」

「最低半年は取ろうかと。出来れば年単位で取りたい所ですが」

「それは良いわね。一般的な神々も年単位で蜜月とりますから」



年単位で抱きつぶされてたまるか!!

足も腰もガクガクだというのに、更にヤルのか!?

殺す気か!?



「一年くらい蜜月を作ればフィフィも一人くらいは妊娠できるでしょうし」

「それはいいわね!」

「早く孫がみたいものだ」

「では、そちらの……ネなんたらをよろしくお願いします」

「フォルニャンね」

「エルグランド様――!! お慈悲をくださいませえええええ!!」



こうしてフォルニャンはご両親に連行され帰っていった。

私もエルグランド様に連れられ寝室へと帰っていった。

嗚呼、また今からヤルのか。

本当勘弁して欲しい。

やる前に薬は飲まされるけど、気が付けば寝室には私専用の薬が大量に……。

痛みは感じないにしても酷過ぎる!!



「エルグランド様」

「フィフィ……」

「いい加減休憩日くらい作ってくれないと怒りますよ」

「むう。確かに女神の方が、負担が多いと聞く。今日は少なめにしよう」

「少な目とかじゃなく!」

「むう、そんなに休憩が欲しいのなら休憩しよう。無理強いしては出来るものもできないからな」

「もう体中バキバキですよ。お風呂に入って数日ゆっくりしたいです」

「でも、燃やされなかっただろう?」

「確かに」

「神脈詰まりを取る為に、フィフィの身体には俺の神としての力を大分注いだからな。それもあって燃えにくくなったのだと思う」



だからって抱きつぶす程やっていいもんじゃあるめぇ。

私は不貞腐れたように顔を背け溜息を吐いた。



「太陽光に強い木になったと思えば分かりやすいか?」

「そうなんですね。でも今身体はボロボロです」

「む、そうか。では二日ほど休憩時間を作ろう。ただし二日休んだらまた一週間抱きつぶす。そして二日休むを繰り返していこう」

「死にますよ私」

「上位の神は簡単には死なないさ」



話しが噛み合わない。

だが二日休みを貰えるならゆっくりお風呂に入って身体を揉んで貰って趣味のフィギュアを眺めて本を読みたい。

こんな子供を作る為のガッツリな奴は正直疲れる……。

確かに神々は子供が出来にくいとはいえ、何事も限度ってものがある!!!



「良いですかエルグランド様。何事も限度というものがあります。私が壊れます」

「今までの想いが全て君に返っているだけだよフィフィ」

「壊れます」

「フィフィ」

「壊れます」

「フィ、」

「壊れます」

「……分かったよフィフィ。君に嫌われたら俺は何をするか分からない。気を付ける」

「ええ、是非とも気を付けて頂きたいですね」

「だが、君の身体は最高なんだよ」

「最低な一言有難うございます」

「早くフィフィに似た子供を身ごもって欲しい所だ。絶対に可愛い」



そう言って私に駄肉を撫でるエルグランド様には悪いが、私に似た子供など今はどうでもいい。

休ませてくれ。



「兎に角、今身体はボロボロなんです! 暫く寝ますが起こさないでください。起きたらお風呂お願いします。伝えておいてください」

「分かった」



それだけを伝えると私は布団に潜り込み、あっという間に眠りについてしまった。

余程疲れていたのかそのまま夕方まで起きず、起きた頃にはエルナさんからお水を貰っている最中だった。



「起きられました?」

「……お風呂入りたかった」

「今から用意してもらうよう言ってきますね」

「お願いします。マッサージして貰わないと身体がボロボロで……」

「エルグランド様は絶倫ですのね……でもそのお身体を人に見せて大丈夫です?」

「どういう事です?」

「体中キスマークだらけですわ」

「………あのクソ野郎」



思わず拳を握りしめ、今近くに無い野郎に毒づくと、エルナさんはクスクス笑いつつも「神々の妻の特権ですわね」と笑っていた。

こんな特権なら絶対要らなかった……。

それでもお風呂に入りマッサージを受けると楽になるもので、入念にマッサージして貰って体の痛みを取ると、やっと息が付けるようになった気分だった。

今日から二日は何も無し!

ちょっと眠り過ぎちゃったし推し活でもしようかな!!

そう言えば気が付かぬうちにフィギュアが増えている!!



「こちらの偶像はエルグランド様からのプレゼントです。なんでも最新の奴が出たからと」

「なんと!!!」

「でも、そろそろ棚が足りなくなりますわね。今度職人を呼んで棚を増やしておきますわ」



フィギュアの棚が増えるとな!!

エルグランド! お前たまにはやるんだな!!

少し見直した!!

現金かもしれないがフィギュアは神々の世界では高額だ!

それをプレゼントするなんて見直したぞ!!!



「今日はこちらでゆっくりと過ごされます?」

「はい!!」

「では、その様にお伝えしておきますわね」

「お願いします!」



こうして私は朝まで推し活をし、最新の小説も読んでホクホクで心の栄養もバッチリよ!

やっぱり萌えは大事ね!! お肌ツヤツヤしちゃう!!

こうして二日、推し活を満喫した私だったけれど――。



「さぁフィフィ、今日からまた一週間愛し合おうな?」

「……はーい」



義務っていうのは、待っているもので。

良い笑顔のエルグランド様も既に戦闘態勢と言う名の全裸待機で。

重苦しく溜息を吐いたのは言うまでもない。


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