第11話 駄肉女神のお仕事とチョロい最高位太陽神。
今日からお仕事が始まる。
子供の園に行くまでの間、子供達にも自分が如何に仕事をしているのかを語る為にも重要な事だ。
早朝着替えを済ませ、エルナから上質な水を沢山貰ってお腹も満たされたところでエルグランド様が訪れ、一緒に執務室へと向かったのだ。
執務室に向かう際中、沢山の女神たちとすれ違ったが、随分と女神たちが変わったように思える。
以前は太陽神の女神だけだったのに、今は多種多様の女神たちが働いているようだ。
グローバルって大事よね。
そんな事を思いながら執務室に入ると、仕事をしていたエルグランド様の執事が一人歩み寄ってきた。
「おはようございます、エルグランド様にフィフィさま。本日はどうなさったのです?」
「うむ! フィフィの神格を上げるために俺の仕事を手伝ってもらおうと思ってな」
「なるほど、それはとても良い案ですな。ですがお茶入れは私がしましょう。太陽神の飲み物はフィフィ様には持つことも入れえることも難しいでしょうからな」
「そんなに難しい飲み物なんですか?」
「ええ、何しろ太陽の炎を頂きますから、フィフィ様はあっという間に燃えるかと」
「では、御茶出し? になるんでしょうか? そちらはよろしくお願いします」
「畏まりました、後ろの二人はフィフィ様の護衛も務めるエルナさまとタイリス様ですね。もしもがあってはなりませんので、是非フィフィ様をよろしくお願いします」
「暇は苦手だけど、アタシたちも手伝う所は手伝うよ」
「ええ、とっても書類整理が苦手のようですし」
「お恥ずかしながら、執事は多いのですが別件であちらこちらに向かっていることが多く。私とエルグランド様だけでは回らなかったのです」
「では、私たちでお手伝いしましょう。子供の園でファーリシア様の書類整理を行っていた経験もございます」
「心強い。宜しくお願いしますね」
こうして、一部は流れが起きてしまっているエルグランド様の執務室を、まずは落ちている書類を拾うタイリアと、机の上の散らばった書類を片すエルナと、それらを種類分けする私とで役割分担を決めた。
沢山ある書類も凄いが、全て最上位の太陽神に目を通して貰わねばならない――と言う訳では無いらしく、それらを整理するのが私の役目だ。
しかし多いな――釣書。
三つの山の分厚い釣書は、エルグランド様に来たお妃候補かな?
エルグランド様が必死に仕事をしている中、三つの束をドンドンドンと置くと、笑顔でエルグランド様を呼んだ。
「エルグランド様、宜しいでしょうか」
「無論フィフィの言葉を一番に優先するさ、どうしたんだ?」
「こちらの各女神の釣書はどうしましょう?」
「燃やそう」
即決。
三つの山は見事にエルグランド様の太陽の炎で焼かれて灰すら残らなかった。
「有難うございます、無駄に場所を取っていたので助かりました」
「嫉妬してくれたか?」
「いいえ、全く」
「そうか……」
急にションボリするなよ。
最近エルグランド様は少々面倒くさいんだよな。
前のイケイケ状態の方がまだツッコミ甲斐があったというかなんというか張り合いがあったというべきか。
「そうですね、次は釣書を山にしないで頂けると嬉しいです」
「嫉妬……?」
「嫉妬とも違いますが、必要のないモノだというのなら邪魔ですし」
「無論必要ないとも。フィフィだけが居れば俺は、」
「では、今後釣書は送り返すよう手続きを行いましょう。それで解決です!」
「それもそうだな! 放っておくからつけあがる者もいよう! モリガン、釣書は全て送り返せ」
「畏まりました」
こうして広くなった机から更に書類分けをしていくと、何時もの嘆願書が出てきた。
どうやら以前勤めていた方々の嘆願書の様だが、女神たちも総入れ替えされていたし、一体なにがあったのだろうか?
嘆願書は全て合わせて50通は来ていた。中には以前の女神長であるノスタリア様からも届いていたが、中身は見ていない。
此方も急ぎの案件だろう。
「エルグランド様、ノスタリア様を含む50名の嘆願書が届いておりますが?」
「あ――……次の仕事場を斡旋しなかったんだ」
「何故その様な事を!」
最高位の太陽神殿から次の仕事の斡旋もなしに追い出されたら、次の仕事が見つかるはずもない! 何という鬼畜な事をしているんだ!!!
「そちらの書類は折を見て返事を書く。骨の髄まで反省させねばならぬ事例だった故にな」
「何かやらかしたんですか?」
「まぁ、やらかしたから辞めさせたんだが」
「それもそうですね。それとこちらの書類はエルグランド様の署名が必要となる書類です。紛れ込んでおりました」
「ああ、フィフィは有能で助かるな」
この位で有能……前世ではもっと過酷なブラックで働いていましたよ?
ここの職場がホワイトすぎるんじゃないんですかね?
「よし、床に落ちていた書類は全て拾い終わったぞ」
「此方の机の上の書類整理も終わりました」
「いやはや、足元の床が見えるなんて何時振りでしょうな!」
「フィフィ、足元の書類ある程度分けて置いたけど?」
「私の机にお願いします」
「では、こちらの書類に関しては別途机の上に置いておきますので御手すきの時にお願いします」
「分かりました」
「しかし……フィフィ様は仕事が早いですな。このような仕事は慣れていたのでしょうか?」
「ええ、ファーリシア様のお手伝いでよくしていたので」
給料の出ない残業でしたけれど。
ファーリシア様も書類整理苦手な女神だったのよね……。
今頃ファーリシア様の机の上、凄い事になってそうで心配だわ。
「しかし妙ですな。それだけの書類仕事ができてファーリシア様のお手伝いもしていたとなれば、神格が一つ上の中には普通なるのですが……」
「確かに」
「でも何故でしょう?」
「今は考えても仕方ありません。エルグランド様のお手伝いをしていて神格が全く上がらないようでしたら、何かしら問題があるのかもしれませんね」
「そうかもしれませんな。その時は精密検査ができる医療の神に話をして診て貰いましょう」
「う……医療の神って苦手なんですよね。実験動物みたいに扱われるから」
「流石にエルグランド様の奥方を実験動物には出来ませんよ」
「そうだぞフィフィ、そんなことがあれば相手の命が熱く燃えて消えるだけだ」
熱波と灼熱で死ぬってことですね。
それならまぁ、多少不安は少ない……かな?
それにしても――仕事を真面目にしているエルグランド様を見ると、成長したなーって微笑ましくもあり誇らしくもなるな。
「エルグランド様が仕事を真面目にしている姿は、とても素敵ですよ」
「……!!」
「ご立派になりましたね」
「――そうだろう!? とっても立派になっただろう!?」
「ええ! とっても立派になりました! これからもお手伝い致しますのでお仕事頑張ってください! 私は仕事のできる男性が大好きですから!」
「おお……フィフィ様にそう言われてはエルグランド様もさぞかし仕事に精を出される事でしょう!」
なんじゃい、今まで仕事あんまりしてなかったんかい。
確かに足の踏み場もないくらい散らかってはいたが。
「よし! 明日からも全力で仕事をしよう! フィフィがいるなら俺は何処までも頑張れる!」
「応援していますよ」
チョロイ。
そんな言葉がウッカリでそうだったが、まぁ仕事ができる男性は魅力的だ。
是非とも頑張って仕事を片付けて貰いたい。
私も負けない様に仕事しないとな。
フィギュアの為に!!!
推し活には金が要るんだよ、金が!!
そんな私の気持ちなど露知らず、エルグランド様は仕事を頑張ったのであった。
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