第10話 神々の裸の話し合いと、物理的に燃える駄肉女神。
一言で言うならば。
【コイツは何を熱弁しているんだ?】である。
新しい性癖の扉が開きまくっているとか、兎に角大慌てで語っていた。
新しい性癖? 誰が開くって? 私? 開いた覚え何て一ミリもないですけど。
そう言う意味を込めて心底迷惑そうな顔をして――。
「……は?」
と答えたら、エルグランド様の顔が高揚してフルフル震えている。
一体何が言いたいのだろうか。
「お」
「お?」
「俺の性癖がまた新たな扉を開いた」
「何故……」
え? つまりMなの? M男神なの?
最高位の太陽神なのに?
無いわ~。引くわ~。
育てると言ってもそっち方面に育てた覚えは一切無いわ――……。
「フィフィの蔑んだ目、冷たい言葉、刺すような雰囲気。どれもが俺の心を搔き乱すっ」
「危険人物ですかね?」
「もういっそ、練習なんていいから君と合体したい!」
「最低の極みですね」
「あぁ……俺はどうしたらいいんだ……こんなに性癖を歪められて、もうフィフィなしでは生きていけない身体になってしまった」
「そこまで酷い事は一切してませんけど?」
「身も心もフィフィの毒牙にやられて、このままではウッカリ子供を孕ませてしまいそうだ」
「去勢します?」
「だが! 俺も腐っても最高位の太陽神だ! フィフィの全てを受け止める男になる!」
なんか最後はどこぞのナントカ王的な終わり方をしましたけど、一体彼は何が言いたかったんだろうか。
心だけは裸の付き合いがしたかったとか?
つまりはそういう事?
変態じゃないかな?
「恐れながらエルグランド様、私は貴方をそんな風に育てた覚えはありません」
「恐れながらフィフィ。俺は君にそう言う風に育てられてしまったんだ」
「見解の違いです、解釈違いです」
「しかし、現に俺はフィフィに冷たくされてもそれが心地よくなってきている。これをどう説明すればいいんだ?」
「元々、イジメられることに興奮する性質があったんじゃないですか?」
「そんなバカなっ! フィフィにだけに反応するのに」
「幼い頃貴方のお尻を何度か叩いたことはありますが、まさかその時に!?」
だとしたら私の責任だ。
あの時に性癖が開花したというのであれば、間違いなく!
「確かにそんな事もあった。フィフィに『大変! お尻が三つに割れてしまったわ!』って言われた時に恐怖と同時に神の尻を割れる素晴らしい女性だと感動した記憶はある」
「でも泣きじゃくってましたね。元に戻してーって」
「撫でたら戻ったって言ってたじゃないか」
「物は例えです」
「思い出すと、俺の尻もそうやって君に優しく撫でられ……嗚呼、ムズムズする」
「トイレへどうぞ」
「まだ我慢ができる。まぁ待て。もしその頃から性癖がフィフィにだけ歪んだのであれば責任を取って貰わなくてはならない」
「は?」
「俺の心と身体はフィフィ専用だと」
バリトンボイスで良い顔でどや顔されても、全く心に響かないのは何故でしょう。
私が可笑しいのか、エルグランド様が可笑しいのか判断に迷う。
「恐れながら宜しいでしょうか」
「良いだろう」
「恋愛は一方通行では出来ませんよ? 私は交差する前に曲がります」
「出来れば交差して欲しい。嫌でも交差する為に下界で言うカーレースになってしまう」
愛用していた軽自動車に、ハイエースかダンプカーが突っ込んでくる感じか……。
確かに私では勝ち目は無さそうだ。
「フィフィ」
「何です」
「二人で幸せになろう」
「うーん……」
「俺の唯一は君だけだ。他には何もいらない。君さえいてくれればそれでいい」
「今更愛を囁かれても、これまでの実績が余りにも酷いのでときめくことが難しいです」
「むう、ならば毎日愛を囁こう! それでいて、時折手を繋いでくれればいい。まずはそこからスタートしよう」
「それならまぁ、許容できます」
そう言うと、エルグランド様は私の両手を握りしめた。
何だろう、嫌な予感がする……。
「練習は悪循環だった、新たな扉がバンバン開いただけでとっても危険だった! これ以上一人でトイレに延々と篭るのは御免こうむりたい!」
「悪循環なのに下半身は元気なんですね」
「今も元気だ!」
「萎れろ!!!」
「幼い頃は俺のだって見てくれていたじゃないか!」
「小さいからこそ見れるんですよ! ああいうのは! 危険がないですからね!」
「――今の俺は危険だと理解してくれているんだな!」
「頭も下半身も危険ですよええ、離れてください」
繋いだ手を離さない為、足でゲシゲシとエルグランド様の足を蹴ると、これまでにない程嬉しそうな笑顔を向けてきた。
「俺の妻がフィフィで良かった! 永遠に君は俺のフィフィだ! 今も昔も俺だけのフィフィでいてくれ!」
「熱い熱い! 手が焼けてます焼けてます!!」
私の悲鳴とボッと燃え上がる手!!!
エルグランド様も気が付いた時には手を放したが既に私の手に着火中!
アワアワする私にエルグランド様はエルナを呼ぶと、状況判断の早いエルナの大量の水で手は鎮火……頭の上からずぶぬれ状態になった。
「大丈夫ですかフィフィ様! エルグランド様! 何度言えば気が済むのです!! 貴方の力でフィフィ様はあっという間に消し炭になるところだったんですよ!?」
「も、申し訳ない……。大丈夫かフィフィ?」
「エルナさんの回復魔法のお陰で何とか」
「嗚呼……俺としたことが。余りにも愛おしくて手を繋いだだけなのに着火してしまうとは」
「これでは手を繋ぐどころか、子作りなんて夢のまた夢ですね」
「なっ!?」
「当たり前でしょう!? 今のフィフィ様と身体を重ねたら間違いなく焼け死にます! フィフィ様はか弱い下っ端豊穣の女神ですよ!? 最上位の貴方様とは体のつくりも神格も何もかもが違うのです! 少なくとも、フィフィ様が中級の豊穣の女神になれば少しだけ強くなるかもしれませんが」
「少しと言っても、最上級相手に中級はきついだろう? 上級女神になればまだワンチャンあるだろうけれど」
「「タイリア」」
「下っ端でもいいのさ、気持ちに向上心があればそれだけで地道に修行になる。そうだな、気持ちが上向きになるものを集めて集中してるだけでも大分違うっていうし、フィフィの好きなものを収集するってのもアリじゃないのか?」
好きな物――。
偶像崇拝と言う名のフィギュア集めくらいしか今は無いですが。
「おお、そう言えばフィフィは筆の女神ナヌーサの小説や登場人物が好きだと言っていたな。それを集めたり収集していれば少しずつ神格はあがるのか?」
「偶像崇拝と言っても神に従えているって言う意味にもなるし、それもあって今爆発的に売れてるんだろう?」
「そ、そうだったんですね」
「何で偶像集めてるお前が知らないんだよ。兎も角、今後もそのナヌーサ様の本を集めて読んで偶像も集めて崇拝してたら、少しずつ神格が上がるんじゃないのか?」
それは――所謂推し活と言うものをして良いという事だろうか?
推し活をしていいなら是非したいところなんだけど!!!
「後は仕事な。エルグランド様、フィフィに仕事を与えなよ。仕事を与える事でも神格って上がるって言うし、こう……凄く神格が上がりそうな仕事ってないの?」
「俺の仕事を手伝ってくれれば、それが一番手っ取り早いが」
「給料いいですか?」
「無論」
「では、私はエルグランド様の秘書として働きましょう」
「「「秘書?」」」
「専属執事の助手みたいなものです。エルグランド様の為にお茶をお出ししたり書類分けをしたり、そう言った仕事ですね。任せて貰えるなら毎日エルグランド様と一緒にいられて神格も上がりますよ。更に仕事で稼いだお金でナヌーサ様の本と偶像を買えば一石二鳥です!」
「フィフィ……っ それ程までに……俺の事、」
「ナヌーサ様の小説は最高ですからね! 稼げるなら稼げるところで仕事をして限定偶像をゲットです!」
「――俺より偶像が好きなのか!?」
しまった、つい本音が出てしまったがここは上手くごまかそう。
そうでないと大事なフィギュアが熱波で燃やされてしまう。
「何を仰るんですか? エルグランド様が一番に決まっているじゃないですか」
「フィフィ……!」
取ってつけたように思わず口にしたが、どうやらセーフの様だ。
危ねぇ。
大事な推しであるフィギュアを熱波でやられてたまるかっ!!
「という事で、明日からエルグランド様のお仕事にお付き合いしますので、よろしくお願いしますね」
「ああ、頼んだぞフィフィ。朝は迎えに来るから一緒に行こう」
書類整理はよくファーリシア様の所でしていたし、何とかなる……といいな!
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今回は下ネタ満載!
フィフィの鋭いツッコミも入りつつ物理的にも燃やされる。
イケメン最高位太陽神に一切心が動かないフィフィの鉄の心もさることながら
一方通行の恋がどうなるのか、是非お楽しみに!
少しでも面白いと思って下さったら
★や♡など宜しくお願いします!
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