第4話 駄肉下っ端女神は最高位の太陽神と今後について語り合う。
過去の過ちと言うのは、未来ではどうにもならない事で。
過去の過ちを悔いた所で、現状が変わる訳でもなく。
取り敢えず、育てた男神が最上位の太陽神になって嫁に貰いに来るとは思いもよらなかったのは言うまでもない訳だが――。
「現状把握だったな、まずフィフィとの子供神の園から出てからだが、生まれ持った力を上手く使う為に、太陽神は太陽神の教育の場での修業となる。時には同じ神々との殺し合いもあったが、俺は神々の中では取分け力が強い方でな。誰も俺にかすり傷をつける事も出来なかった。それからも日々鍛錬を続け、次第に担当の太陽神が変わっていき、その速さもドンドン早くなり、気が付けば前太陽神から教えを乞うまでになった。そして前太陽神が『もういい加減愛に生きたい』と言い出したので俺と交代したのだ」
「前太陽神様の人生に、一体何があったのでしょうか?」
「長年想い続けている女神がいるらしいんだが、振り向いて貰えないと延々と愚痴を零していた。お陰で色々と恋愛に関しては教えて貰えたがな」
「と言うと?」
「まず、ファーリシア様に連絡し、【フィフィ観察日記】と言う日記帳を作成して毎日君の日常を事細かに報告して貰っていた。何時どこの男神がフィフィに唾をつけるとも限らないから気が気ではなかったが、その日記帳のお陰でフィフィの事を身近に感じ、尚且つ無事であることも把握できたから助かった。最下位の女神と言うだけで生き辛いだろうに、それを苦とも思わず子供神たちの世話をしているフィフィの事を読んでいると、自分の幼い頃を思い出し、随分と嫉妬したものだ。フィフィは俺だけの女神なのに……とな」
「愛が重すぎて辛い……胃もたれしそう」
「だが、俺の愛はこの程度ではないぞ? 君の友人関係の把握にも努めたし、フィフィとよく遊んでいるという女神タイリアの事をも調べつくした。彼女ならばフィフィの友人として付き合っても問題はないだろう。問題があれば即座に排除に動いていた」
「友人関係まで把握したうえで問題があったら排除って……」
「俺はフィフィの周囲をより良いモノに環境にする義務がある。何せ夫だからな!」
本当に重い。本当に重すぎて胃もたれもする。
こう……チョコレートに衣をつけて油に揚げてマヨネーズまで塗りたくってるような、そんな食べものを胃に入れたような気分で胃もたれが酷い。
年上下っ端女神にその高カロリーな愛は重すぎる……。
熱波を直ぐ飛ばしてくるけど爽やか青年の彼のどこに、そんな重苦しく高カロリーなクソ重い愛情を秘めているのか、全くもって謎。
人も神様も見た目に寄らないのね……。
「つまり、愛して愛して愛して束縛して逃げられなくして自分だけの私になって欲しいという事ですね?」
「とても話が早くて助かる!」
「そんな高カロリーな愛はいりません、程よく低カロリーの愛にして下さい」
「はははは! 同僚みたいなことを言うな! 『貴様の愛は高カロリーで身体に悪い』なんて言っていた。大丈夫だ、高カロリーの愛情で太る事は無い」
「そう言う問題でもありませんけど!?」
「寧ろ、低カロリーの愛情の方が不安だ。俺は何事も全力で行く! 特にフィフィには遠慮をしたくはない」
「少しは遠慮と言うモノをして頂かないと困ります」
「添加物大盛の愛よりはマシだろう?」
「モノは言いようですね?」
「嘘で固められた添加物の愛より、天然の高カロリーの愛をその身体一身に受け、俺の愛でドロドロに溶かしてしまいたいんだ」
「太陽神の力で、熱波で汗だらけってことですかね?」
「別の意味での汗だらけが好ましい」
「イヤラシイ」
「恥ずかしい事だが、男はイヤラシイ生き物だ! そうでなくては子孫繁栄など出来ないだろう?」
「開き直りやがって最低だ」
良くも悪くも、寧ろ聞きたくはない情報だらけの情報交換になってしまったけれど、エルグランド様の愛はとっても歪でとっても高カロリーで天然物と言うことだけは理解した。
胸やけするほどの愛は欲しくないんだけどな。
「フィフィの情報は常に新鮮なものがあちらこちらに張り巡らされた情報網から聞いている。最近は偶像崇拝にも熱心だとか。それも筆の神であらせられる女神ナヌーサの書物が大好きで、その登場人物を崇拝していると聞いている」
「何で誰にも話していない部屋の内容まで知っているんですか!?」
「この神々の園には、多種多様の神が居るからな! ははははは!」
笑い事じゃねぇ!!!
プライバシーもあったもんじゃねぇ!!!
あの純粋だった頃の君を返して!!!
「はっ! そう言えば私の住んでいたボロの部屋はどうなったんですか!? 部屋にあったものは宝物ばかりなのに!!」
――限定品のフィギュアもあったのに!!!
「安心しろ、隣の別室に全て持ってきている。偶像も壊れることなく全てだ。俺が一つ一つ丁寧に偶像も飾ってある。誰も傷つけることはしていないだろう。俺が丁寧に運ばせ、俺が荷物を開け、俺が全てをあるべき場所に戻してあるし、終わった後は鍵を閉めている」
「あーあーあー……色々もう色々突っ込みたいけど偶像の方に関しては有難うございます!」
心の萌えのフィギュアが無くなったら生きていけないところだった!!
潤いは無事というだけで安心できる!!
それ以外は安心出来ないけれど!!
「フィフィが偶像崇拝するのは構わない。所詮は物語の中の主人公たちだ。だが、現実での浮気は一切許さないからそのつもりで」
「広い御心使いに感謝します……」
「それに……アレだろ?」
「アレとは?」
「俺がフィフィの額に傷をつけて最下位下っ端女神になった所為で、恋愛も結婚も諦めただろう? それで偶像に走ったのは知っている……。だから止めることはしない。もしそれが別の理由であれば今すぐ偶像を破壊したいところだが」
「滅相もない。結婚も恋愛も何もかも諦めていたので偶像崇拝に走りました!」
「やはりそうか! それならば俺に罪がある。咎めることは一切しないと約束しよう」
あ、危ねぇ……。
違うと言っていたら今頃フィギュアたちはエルグランド様の熱波で溶かされて見るも無残な姿になっていたに違いない……。
安月給で必死に集めてきたフィギュアたちを失うとか、女神人生の全てを失うようなものだわ。これからは発言に気をつけよう。
「嗚呼……それにしてもやっと長年想い続けたフィフィと夫婦になれるなんて、なんて幸運な日なんだろうか……。きっと今頃下界では太陽が輝き、熱い夏の様な状態になっているに違いない」
「猛暑日が続くとか止めてくださいよ……」
猛暑日の太陽って肌に刺さるだよね……。
今頃下界では大変な状態になっているんじゃないだろうか。
もし仮に季節が夏だった場合、頭皮が焼ける程の太陽の日差しが降り注いでそうでヤダな。
下界の皆さん、倒れなきゃいいけど……。
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