リアル懺悔室

ここか。


文化ぬ棟11階、Fの間。

文化棟の教室は全て予約制で、マザーの承認が通れば誰もが使える教室だ。ただ、その承認のハードルは外様には結構難しいらしいけど。


各階にAからZまである教室だが、外から中は見えない。どちらかというと会議室のように見える。


あれから月奈は先に出た。

少し遅れて来て、と言い残して。


モノリスをカメラモードにし、中央にFマークに合わせてロックを外す。

アクセス権をもらったモノリスなら入れる。


Fの間は二十畳ほどの広さがあり、薄いベールの天蓋に覆われたクィーンサイズのベッドが一台と、脇に大きなソファーと丸テーブルが置かれていた。


ラブホ?


中は薄暗く、香が焚かれており、懺悔というよりはよっぽど淫靡な儀式っぽいけど。


「ようこそおいでくださいました」


【聖女】成宮月奈を筆頭に4人ほどの生徒がいた。

あとは【聖女候補】だろうか。月奈を含め、皆一様に頭から白いベールを纏い、制服ではないようだ。


「今から私、聖女成宮からの発令によりジャッジメントを開廷します」

「聖女候補、都築、認証しました」

「聖女候補、東堂、認めまーす」

「聖女候補、苫、認証」

「聖女候補、愛川、同じく認証です」


月子が宣言した際、他の聖女候補達のモノリスが同じ画面になっていた。それぞれ指紋認証のように画面に指を指す。モノリスの画面の色が変わった。


と、同時に部屋の風景が変わる。



何だ、……これ。



「受けてくれてありがとうね。アオくん。いっぱいいっぱい懺悔しようね」

「魔王様。本来、懺悔室での懺悔とは女子生徒が男子生徒になんらかの咎を吐き出す際に行います。」

「咎には赦し」

「罪を吐き出して未来に向けての対応策を話すんだよー魔王くん」

「魔王さんと未来を対策だなんて素敵過ぎです」


各々が堰を切ったかのように話し出す。


いやいやいや。


それより天井とか、壁とか無くなって、いやあるんだよ。あるんだけど、教会の中にしか見えないんだけど! みんな、普通?


部屋にあったベッドとソファ、丸テーブルは、そのまま…だ。


え? 僕だけ置いてけぼり? どうもCGには見えないし。あれ? 鳥の鳴き声… あ!窓に鳥が来た! カラフルな…鳩?


誰か教えてください。



「ジャッジメントは逆に男子生徒側からの事情聴取が主なんだよ」

「女子生徒がクズ男子に騙されてる場合ね」

「圧迫面接」

「一人だけ花園に招待するんだけど、周りに他の男子もいる事が多いから花園バレしたくないし、直接呼び出しが主流かな」

「今代ではFは初めてだから、邪推しないでね」

「Fは聖女の全身全霊を使って更生させるお部屋です」 

「全員生娘安心安全」

「モノリスの裏パラメータに病気の有無も性交回数も出るし、ほらみんなゼロでしょ?」


全員がモノリスのプロフィール欄を差し出してくる。そこにはさっきのダブルメイドのような画面が表示されていた。え?こんな機能みんなあるの?


全然知らないんだけど。以外にも月奈もゼロだった。なんで?


「今からアオくんには懺悔していただきます」

「懺悔?」


「そうです。初物ばかりを貪り、生娘達の心を弄んだ悪い魔王様に、ここの5人全員が認めるまで懺悔していただきます」


「懺悔という名の発射」


「時間は気にしないでください。合格するまでは欠席扱いにはなりません」


「アフピルも万全です」


え? いやいや、だから教会の中なのが気になって話が頭に入ってこない。


「こほん。で、では早速。発令者の聖女であり、幼馴染の私から」


「それはないんじゃないかしら」

「姫ずるぃー」

「横暴」

「そうですよ」


「…それはそうかもですけど、やっと80超えたんです。一番は譲ってくださいませんか?その後は、レベル順かじゃんけんか…はたまたご一緒に、はどうでしょうか」


「私はみんなと一緒が良いです」

「えー初めてはタイマンがよくない?」

「早くご奉仕したいです」


なんだろう。食堂でのデジャヴ?


多分今からキメることになるんだろうけど、月奈はBSSか、NTRにならない?


間男とか嫌過ぎるんだけど。


思い思いに話し合っているとそっと制服の裾を捕まれた。さっきから一人だけ口数の少ない子だ。


「こっち」


傍にあるソファに座らされ、デキャンタから飲み物を注いでくれた。


「果実ジュース」

「うん?ありがとう」


グラスを眺め嘆息する。よし。決意は反故に出来ない。それは【魔王】の特性なのか、僕の資質なのかはわからない。


視線を下げた事により、聖女候補、苫さんだっけ、の太腿に目が惹きつけられる。頭には白ベールだったが、身体は貫頭衣のような服を纏っていた。


布帯で腰あたりを縛っているだけの衣装だからか、横側のスリットから真っ白な肌が覗いていた。これパンツもブラも履いてないんじゃ…


視線を戻し、グラスに口をつけた僕を、気づけば聖女たち全員が黙って見ていた。


な、何?


飲み干すと、再び注いでくる。…美味しい。まあいっか。もう一度飲み干す。


「いただきます」

「うん? あ、いる? 注ごうか?…ぅむぅっ!」


いきなり唇を奪われた。いただきますってそっち?!


「あー! わたしを差し置いて何してるんですか!」

「流石は第二位、虎視眈々だね」


「もー。仕方ありませんね。皆さん」

「はい」

「オッケー」

「はいですー」


祈るように声を揃えて宣誓した。


「魔王様、いっぱい可愛がってね」



懺悔じゃなかったのかよ。

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魔王はヤリチンクソ野郎 墨色 @Barmoral

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