ラウンド・ワン
学食にはさまざまなメニューが並んでいた。
思い思いに生徒達は昼食を食べていた。
この後のことを思うとあんまり食べない方がいいかもしれない。
というか後も何も今この瞬間も食欲が湧かない。
「ユビくん、あーん」
「ユビさん、あーんです」
「あ、ありがとぅ」
「…」
「…」
「…ギリッ」
「…死んだらいいのに」
「ちっ」
「…」
胃が超いてぇ。
学食では通常、長テーブルを使用し、グループであってもそちらを使うのが常だった。
僕らが今使っているのは【花園】内で予約しないと座れない学食中央にある円卓テーブルであった。
花園でしか予約出来ないという事は、大多数の男子生徒は使えないという事であり、また長テーブル席から見て一段下がるように配置されている為、大多数の生徒から大変注目されてしまうのだった。
マザーの表パラメータの一つである【注目度】は否応なしに上がってしまうような配置のせいか、喉に全然通らない。
僕今何食べさせられたっけ。
朝のメイド宣言からの昼休み、この後のリアル懺悔室を思うと頭が痛くなるため、モラトリアムが欲しい僕は手早く昼ごはんを終わらすために足早に学食に向かった。
のだが、途中でダブルメイドに拉致され、あれよあれよという間にこの円卓に座らされていたのだった。
彼女達ダブルメイドは座らず、両サイドに立ったままだった。
最初は一人で座るには広い丸テーブルに申し訳なさを感じていたが、一言も断りなく称号持ちの生徒がご飯を持って、続々と座り出したのだ。
【女神】湖城 愛衣子
【妖精】緑野 アイル
【聖女】成宮 月奈
【魔女】名代 美亜
【賢者】白雪 小白
【女王】桃園 カレン
あれ、もしかして僕、今日、死ぬ?
「…本当に隷属してる」
魔女がモノリスとダブルメイドを見比べながら呟く。
「…その手がありましたか」
賢者はメガネを触りながら述べる。
「ずるぃー」
妖精は不満を零しながらながらご飯を食べる。
「…」
聖女は何かを思案していた。
「…流石は魔王様ですわ」
女王は感嘆していた。
「本当によくやったわね」
女神は二人のメイドに賛辞を送る。
「「えへへへ」」
ダブルメイドはこの世の春、といった表情を見せる。
いや、もう意味も味もわかんないんだけど。
誰か教えてください。
ここに集まったメイドと聖女以外は、僕が定期的に相手をしてもらっている女の子だった。
同時に我が学園告白件数、並びに人気ランキング1位から15位に入るトップランカー達だった。
幼馴染が三人も居るし。
すげぇ周りの目が痛い。ビシビシ突き刺さります。いてっ、誰だ消しゴム投げたやつ!
ランカー同士、個人間では仲がそこまで悪くはなかったと思うけど一同に介しているのは初めてだった。
初めて故に何が起こるかわからない怖さがあった。
だが、本当に怖いのはこの【魔王】様だぞ!ほんとだぞ!恐る恐る尋ねてみるぞ!
どうか聞いてください。
「これはぁ、いったぃ〜なんなのかなぁ〜?」
「シロ、よろしく。まだボクはお腹の奥がジンジン。ぼーっとしちゃうから。」
「昨日の騒ぎの大元はあなたでしたの」
「ずるぃー」
「…死んだらいいのに」
「死ね、魔女が」
「わかりました。では改めて。成宮さんお帰りなさい。また初等部の仲間に逢えて嬉しいです」
「ただいま、小白ちゃん。わたしもこの集まりに帰ってこれて嬉しい。いまは【賢者】、だった?」
「はい、【賢者】92です」
「おー」
「よく上げたわね」
「流石は賢者様ですわね。わたくし、まだ【女王】86ですの。頑張りますわ」
「私は【聖女】80になったよ。やっと心がスタート出来たの」
「ふん、ボクは【魔女】94さ」
「私は95よ、魔女」
「女神様も魔女様も素晴らしいですわ。早くわたくしも90の壁を越えたいですわ」
ああ。無視された……
この集まりに帰ってこれて嬉しい?
初等部の頃からこの集まりってあったの?
一緒に居るところなんて見たことなかったけど。
というか何その数字?
両隣のメイドさんにこそっと聞いてみる。
「ねぇ、みんなの言ってる意味わかる?」
「私達女子は花園から情報を得ています。一般的な会話ですね」
「? 初耳なんだけど」
「あ、正しくは称号持ちの女子生徒、です。ですので男子生徒はこの会話の意味すら知りません」
「今知ってしまったのですが」
「魔王様は別よ」
「特別です」
「……結局なんなの?」
「「うふふふふ」」
はぐらかされてしまった。
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