第136話 私知っているんだからね……

 アイギスに抱きしめられて俺は固まってしまった。いやいや、まじでどうしろって話だよ。アイギスはじゃれついてきているだけっていうのはわかっている。

 だけど……彼女の俺を見る目がここ一年でかわりつつあることもわかっているのだ。



「ねえ、ヴァイス……少しは元気がでたかしら?」

「え……?」



 むしろ下半身は元気になりそうで困っているが? などとはいえずにききかえすとアイギスはちょっと照れ臭そうに言った。



「その……男の人は疲れている時に女性に抱き着かれるとリラックスするって聞いたの。どうだったかしら?」

「ああ、そういうことか……ありがとう。おかげでちょっと元気になったよ」

「よかった。ヴァイスったらずっと難しい顔をしていたんですもの。心配したのよ」


 

 そういうとアイギスはニコッと笑って俺から離れる。どうやら彼女はマジで俺を元気づけるためにうやってきてくれたらしい。

 エッチなことを考えてしまった自分を恥じながら心配させてしまったなと申し訳なく思う。



「だけど、いつもそんな恰好で寝ているのか?」

「ううん、ヴァイスの部屋に行くって言ったらこの格好で行きなさいってくれたの。似合っているでしょう」



 得意げにくるりと回るアイギス。マリアベルさんは絶対既成事実をつくるつもりじゃねえかよぉぉぉ!! もちろん、貴族に手を出したら責任とって結婚ということになるだろう。絶対避けねばならない。まあ、幸いにもアイギスにはそういう気はなく純粋に心配してきてくれたから大丈夫だろう。



「お母さまとヴァイスの話をきいていて思い出したの。ヴァイスは知っているけど、私もね、お母さまが病気だったときに色々な人にひどいことを言っちゃったじゃない?」

「ああ、懐かしいな……あの頃のアイギスはとがってたな」



 最初は開口一番「あなたのことが嫌いよ」って言われたんだよな。ツンツンとしているアイギスを思い出して懐かしくなる。



「うう、自分で言っていてはずかしくなっちゃたじゃない……」



 思わず思い出し笑いしているとアイギスが顔を赤らめて顔を手で覆う。



「ごめんごめん、それでどうしたんだ?」

「あのあとね、うちに来てくれた人には色々と謝ったのよ。その時の反応は様々だったわ。苦笑した人もいるし、軽くあしらう人だっていた。だけど、笑顔で次から話しかけてくれる人もいたわ。だから、ヴァイスがそうやって過去の罪と向き合うことはすっごく大変だけど、ぜったいそれを見てくれる人もいると思うわ。だから、頑張って!! わたしもできることはするから」



 それはアイギスなりの激励だったのだろう。そして、俺は自分の決断を……領主としての決断をアイギスがこうやって肯定してくれたのはうれしくおもう。



「ありがとう、アイギスのおかげで頑張れる気がしたよ」

「そう、よかったわ。あとね、ヴァイス……」

「どうしたんだ?」



 なにやらごにょごにょと呟くアイギスに耳を貸すと、顔を真っ赤にしながら小声でささやいてきた。



「その……私ももう子供じゃないから、夜中に男性の部屋に行く意味だってわかってるからね。みんなとの協定があるからこっちからは襲わないけど、ヴァイスがその気ならいいって思っているのよ」

「な……え……?」



 突然の爆弾発言に思わず驚きの声をあげると、アイギスはこちらと目があうと顔を真っ赤にしてベッドにもぐりこんでしまった。



 それは……そういうことですよね? そして、協定ってなんだろう?



 そして、俺は先ほどとは違う意味で眠れなくなってしまうのだった……ちなみにそんなこと言われてアイギスと同じベッド寝るわけにはいかずに床で寝た。

 そして、俺とアイギスはお互い寝不足のままマリアベルさんに意味深な笑みでうかべられながら帰宅するのだった。





アイギスがヒロインとして本気を出してきました。



カクヨムコンテストように新作をあげました。

読んでくださるとうれしいです。


『せっかく嫌われ者の悪役領主に転生したので、ハーレム作って好き勝手生きることにした~なのに、なぜかシナリオ壊して世界を救っていたんだけど』


本人は好き勝手やっているのに、なぜか周りの評価があがっていく。悪役転生の勘違いものとなります。


https://kakuyomu.jp/works/16817330667726111803



『彼女たちがヤンデレであるということを、俺だけが知らない~「ヤンデレっていいよね」って言ったら命を救った美少女転校生と、幼馴染のような義妹によるヤンデレ包囲網がはじまった』

ヤンデレ少女たちとのラブコメ


https://kakuyomu.jp/works/16817330667726316722





よろしくお願いいたします。




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