悪役好きの俺、推しキャラに転生〜ゲーム序盤に主人公に殺される推しに転生したので、俺だけ知ってるゲーム知識で破滅フラグを潰してたら、悪役達の帝王になってた件〜おい、なんで主人公のお前も舎弟になってんだ?
悪役たちの原点(オリジン)アステシア編、〇〇〇〇編
悪役たちの原点(オリジン)アステシア編、〇〇〇〇編
アステシアはハデス教徒の地下宮殿で、最後になるであろう食事を済ましながら、扉をまもっていた十二使徒の訃報を聞き眉をひそめる。
「勝負は決したわね……」
ハデス十二使徒も自分とミノス以外が討伐されて、今ここにいる信者たちもほとんどが戦闘力のない連中である。そもそもアステシア自体もその魔力が高いため十二使徒に選ばれたものの、戦闘が得意というわけではない。基本的にはサポートなどの方が得意なのである。
「だからといって私達にはもう逃げ場も行く場所もないのよ……」
ハデスの手段は狡猾だ。アステシアのように無理やり従わざるおえないように巧妙な作戦で教徒にされる場合だってあるし、状況が状況でハデス教徒になったものもいる。
だが、敵からすれば皆同じハデス教徒である。
「アステシア様……私に戦う力をください!! このままやつらに殺されるよりも戦って死にたいのです」
「……」
そういう少女はたしか親がハデス教徒になったために街を追放された少女だった。街にいることができくなり仕方なく合流したと泣きながら訴えていたことを覚えている。
「俺もお願いします!! 恋人を殺したやつらに復讐する力をください」
そういう青年は、権力者に求愛されたのを断った恋人が邪教を信仰しているという噂を流され殺されたのだと涙ながらに語っていた。元はパン屋らしく彼がつくるパンは子供たちも喜んだものだ。そして、そんな子供たちの顔を見ると笑顔を浮かべていた彼の表情には怒りに染まっている。
「いいのね……? 私の加護をすべて注げばあなたたちは一流の戦士とも戦えるようになるわ。だけど、その代償として命を燃やすわよ」
「「はい!!」」
彼らは皆が皆即答だった。もう、わかっているのだ。投降したとしても命が助からないという事を……ならば、自分もまた決意を決めるべきだろう。
「わかったわ。ならばやつらに見せましょう、一生に一度の輝きを……我らは汝の信徒なり、我が神ハデスよ、我らに恐怖を凌駕する信仰心を!! 異教徒を打ち倒す力を与えん!! 『聖戦』!!」
アステシアを中心に黒き禍々しい輝きが広がっていきそれはハデス教徒たちを包んでいく。
「おお、力がみなぎってくるぞ!! これならアンリの復讐もできる」
「邪教ってきめつけたやつらをぶったおすぞ!!」
血気盛んに叫ぶ彼らを見つめながらアステシアは無表情のまま自虐的に思う。
非戦闘員を無理やり戦わせる……ふふふ、確かに私は聖女じゃないわね、偽聖女の称号こそ正しいわ。
そして、迷いを振り払うようにして彼女は自分の持つ杖を手に取った。
「ハデス十二使徒が一人『冷酷なる偽聖女』アステシアについてきなさい!! 私たちの働きはハデス様が見守ってくださるわ」
勝てない戦に信者たちを引き連れて思う。ああ、はじめて自分の通り名がしっくりきたと……だってハデスは私たちに興味がないってわかっているもの……
偽りの言葉で信者を先導するその姿はまさしく偽聖女と呼ぶふさわしい。
そう、自虐的に思ったときに懐から一枚の手紙が落ちる。届主の名前は『アンジェラ』と書いてあり、一瞬……本当に一瞬だがアステシアの表情が年相応な泣きそうに少女に戻り……その手紙を拾うことなく進むころにはいつもの無表情に戻っていた。
ああ、だけど、最後にアンジェラ姉さんに謝りたかったわね……
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ここはハミルトン領の近くの植物とポーションの生産地として有名なとある領地である。そこで一つの命が今力尽きようとしていた。
「ああ、坊や……私の坊や……なんで目を開けてくれないの……」
「神よ……我が息子を助けてくれ……」
高価そうな服に身を包んだ貴族の男女が嘆き、部下たちはそれを悲痛な目でみつめることしかできなかった。それも無理はない。
ようやく生まれた世継ぎの命が今にも消えそうになっているのだ。そして、その子供は……自我すらもあいまいなままその生涯を終えようとしてた。
『残念だったね、バグっていうのかな? 君は圧倒的な魔力を持ってしまったがゆえに、その力に耐えられず、息絶え事になるだろう』
それの声は今死にいくであろう赤ん坊にしか聞こえていないのか、他の者は何も反応することはなかった。
『それはゼウスや、ハデスが戦いをしているこの世界では何回くりかえりしてもかわらない。でも……僕ならばその運命を変えることができるよ。どうする?』
「……」
赤ん坊は虚空を見つめまるで最後の力を振り絞るように何かに手を差し伸べて……そして、息絶えた。
これはゲームではポーションの出来がいい街としての名前しか登場しないとある領地での出来事である。
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というわけで書籍発売記念の短編はこれで終わりです。
本日発売日です。よろしくお願いいたします。
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