第125話 アステシアと??
ロザリアに人払いを頼んだアステシアはホワイトと一緒にベッドに横たわるヴァイスを眺めていた。ハデス十二使徒と戦ったと聞いて心配したのは自分に呪いをかけたやつと戦った可能性があるので彼が知らないうちに呪われている可能性があると思ったのだ.
そして何よりも、王都から帰ってきたヴァイスとロザリアを見た時にヴァイスにだけ違和感を感じたのだ。ゼウスとハデス両方の力を得た彼女は成長しており感知能力もあがっていたのである。
「それにしても、ヴァイスって結構いい体をしてるわよね……」
主に魔法や魔剣による遠距離攻撃やからめ手を得意としているヴァイスだったが、剣の鍛錬だって継続している。並みの剣士よりも優秀な彼の体はそれなりに整っているのだ。
無防備な想い人の服からのぞく胸筋に思わず生唾を飲んだアステシアは、つい引き寄せられるように彼の胸元に顔をうずめてしまう。
「うふふ、ヴァイスの匂い……落ち着く……」
暖かい体温と、大好きな匂いに思わずだらしない声を上げてしまう。彼女はハデスの呪いで人と関われなかったこともあり、心を開いた人間には甘えてしまうのである。
彼が王都にいっていたこともありずっとこうしていたいと思っていた時だった。
「きゅーきゅー!!」
「はっ、私は何を……これもハデスの力を得た代償かしら……」
ホワイトの鳴き声で正気?に戻ったアステシアは慌てて頭を上げる。ちなみにだが、アステシアは完全にハデスの力をものにしているため、影響は受けていない。単に欲望に忠実なだけである。
「ありがとう、たすかったでちゅよーー」
「きゅーきゅー」
ホワイトを撫でて落ちついたアステシアは、精神を集中させて、ヴァイスの胸元に触れる。まばゆい光が彼女の手からヴァイスへと広まっていく。
特に違和感はない……私の気のせいかしら……
そこまで思った時だった。確かに体に違和感はない。だが、魂とでもいうのだろうか、彼の中身に違和感を覚えたのた。
これは……一体……?
とにかくもっと調べてみようとした時だった。
「きゅーきゅー!!」
「ホワイトちゃん!?」
急に騒ぎ出したホワイトに思わず集中力を解いた時だった。天から声が聞こえてきた。
『ははは、まさかこの世界に僕の存在に気づく人間がいるなんて……これも君がヴァイスを信仰しているからかな? それでリンクしたのか?』
「な……」
「きゅーーーー!!」
どこか禍々しい輝きと共にヴァイスの体からあらわれたのは、不思議なモヤだった。それが人の形をとってしゃべっているのだ。そして、それが放つプレッシャーには覚えがあった。パンドラが降臨されたハデスの力……それに近いものを感じたのである。
「あなた……邪神ね……」
『あははは、邪神? 善神? それは君たちの基準だろう? だが、ここはあえて正解だと答えよう。僕はきみたちが神だと読んでいる存在だ。異世界の神。そうだな、異神とでも名乗らせてもらおうか』
ただ目の前で会話をしているだけだった。だが、それだけでアステシアのほほを冷や汗が流れ、精神が摩耗していくのがわかる。
そんな彼女を心配するようにホワイトがすりよってきてくれて……
「きゅーきゅー」
『ゼウスの犬が、耳障りだぞ』
霧が触手のようにしてかたどってホワイトを絡めとる。
「ホワイトちゃん!? あんた何を……」
『心配は不要だ。少し黙っててもらっただけさ、それよりも僕は君に興味があるんだ。「堕ちた聖女」アステシア』
一呼吸して異神と名乗った存在は楽しそうに、愉しそうにアステシアに問う。
『君は君の想い人であるヴァイスを……いや、ヴァイスを名乗る異世界の人間について知りたいと思わないかい?』
「異世界ですって……何を言っているの?」
聞きなれない言葉にアステシアは思わず聞き返すのだった。
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