第124話 久々の我が家

「おかえりなさい、ヴァイス、ロザリア」

「きゅーきゅー!!」

「ただいま、みんな元気そうで何よりだ」

「アステシアさん、ホワイトちゃんただいま戻りました」



 アイギスとわかれてハミルトン領に戻るとさっそくアステシアと、ホワイトが出迎えてくれる。そして、そのままホワイトはアステシアの腕から飛び降りると俺の肩にのってほほをぺろぺろとなめてきた



「うふふ、ホワイトちゃんは相変わらずヴァイス様がお好きですね」

「ああ、お留守番ありがとうなー、寂しかったろ?」

「きゅーきゅー♪」



 かわいいな、おい……ホワイトに夢中になっていると、アステシアがうらやましそうに見てくるからちょっと罪悪感を感じたので話題を変えることにした。



「ただいま。領地で何か変わったことはなかったか?」

「きゅー♪」

「とくにはないわね。せいぜいナイアルが遊びに来たくらいかしら?」

「あー……最近会ってなかったし悪いことをしたな……」



 あいつもなんだかんだ忙しそうだし、頑張って時間を作ってくれたのだと思う。まあ、事前に連絡をくれよとは思うがスマホもない世界なのだ。仕方ない。

 あとで手紙を送ろうと思って部屋に戻ろうとすると、アステシアに肩をつかまれた。



「それで……あなたの方は何かあったわね。邪教の気配がするわ。まさか、ハデス十二使徒と戦ったんじゃないでしょうね?」

「え……あー……それは……」


 

 二人の十二使徒と戦って何とか命拾いしたとか伝えたら無茶苦茶心配されるんじゃないだろうか? ごまかすかどうか……悩んでいるとロザリアと目が合い……頷く。


 『ヴァイス様はもっと私たちを信じてください』そう訴えていた。



 そうだよな……俺が自分の正体を明かしてもロザリアがついてきてくれたように、アステシアには俺がハデス教徒と本気で戦うことになるであろうことは伝えた方がいいだろう。

 それでも彼女はついてきてくれると思うんだ。本当はハデスの呪いのせいで苦しい思いをした彼女を巻き込むのは抵抗がある。だけど、俺には今の彼女の力が必要なのだ。




「ああ、戦ったよ。ハデス十二使徒のうち二人がいた。倒すことはできなかったけど、何とか囚われていた人たちは助けられた。だけど……あいつらに俺の顔がばれた。これからは本格的に戦うことになるかもしれない」

「そう、ハデス十二使徒と……」



 アステシアが目を見開く。元々彼女の呪いはハデスの力である。それにパンドラに苦しい思いをさせられたばかりだ。もしかしたら、ハミルトン領からでるって言ってくる可能性もあった。

 だけど、彼女なら……一緒に戦ってくれると思うのだ。そして、俺は思った以上にアステシアを頼りにしていることに驚く。



「ちょっと、ついてきなさい。ロザリア悪いけど私の部屋から聖水を持ってきてくれるかしら?」

「え……?」

「はい、わかりました」



 真剣な顔で俺の手を握るとアステシアは、そのまま俺の部屋につれていく。いったいどうしたというのだろうか?



「とりあえずベッドに横になりなさい。まずはあなたに呪いがないか調べるわ」

「いや、呪いって……?」

「ハデス教徒はどんな加護を持っているかわからないんですもの。接触したら調べないと……」



 ああ、そうか……俺はゲームのおかげでハデス十二使徒の力を知っているが普通はそんなことはない。彼女は俺の身に何か呪いがないか心配してくれているのだろう。

 アステシアに優しさに感謝しながらベッドに横たわるとなにか甘い匂いがする。香水かなにかだろうか? メグあたりが留守の最中に気を遣ってくれたのだろうか?



「どうしたの、変な顔をして……」

「ああ、ベッドが甘くていい匂いがするなって思って……でも、この匂いなんか嗅いだことがあるような……」

「き、きのせいじゃないかしら?」



 なぜか顔を真っ赤にするアステシアによって儀式がすすめられるのだった。

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