第121話 クラトスの助言
ヴァイスたちと合流したクレスはクラトスに言われたことを思い出していた。
「君の活躍はダークネスから聞いているよ。邪教の内通者の貴族を倒し、拠点を突き止めてくれてたそうだね」
「はい、僕は邪教の連中の存在が許せないんです」
「ふふ、本当に心強いな。君のような人間がいて助かるよ」
クラトスはクレスの功績をたたえるように笑顔を浮かべていった。そして、彼は自分の能力を明かしたのだ。
「私はこの世界の神々の加護を得ている人間の未来がある程度見えるんだ。君の未来はとても複雑だ。だけど、君の選択がゼウス教徒の未来を大きく左右することになる。覚えておいてくれ」
「わかりました。俺はゼウス様のために戦いますから安心してください」
そんなクラトスにクレスは驚いたふりをしながら答える。なぜならば彼は前の人生でも同じことを言われていたのだ。
その時はなんだこいつ? みたいな反応をしてしまったが、二回目のクレスは彼が仲間だとわかっていたので、反応も柔らかい。
「そういえば……君と一緒にいた青年は誰だい?」
「ああ、ヴァイスという貴族です。俺たちがハデス教徒のアジトに入った時も一緒に戦ってくれた頼りになる人ですよ。もう一人の女の子は彼の義理の妹です。だからまあ、恋人ではありませんよ」
この人はどうやらカップルが逃げてっぽいので言葉を選びながら返事をする。どんな反応を示すかとちょっと楽しみにしながらクラトスを見つめる。
『義理の妹とイチャイチャしてんのかよ、死ね!!』とかいうのだろうかと……だけど、返ってきたのは予想外の反応だった。
「信じられないかもしれないが彼は……彼の魂はおそらくこの世界の人間ではない」
「え……?」
「なぜならば私は彼の未来を見ることができなかったんだ」
クラトスの言葉にクレスは驚愕の顔を浮かべた。もちろん、演技である。なぜならば彼は前の人生でカエデという異世界から転移してきた少女に出会っていたからだ。彼女は言っていた。
『異世界へ来て怖いかですか……? 大丈夫ですよ。私たちの世界ではこういう異世界に転移したり、転生する物語が流行っていまして……むしろ、あこがれていたんです!!』
『そういうものなのか……』
『はい、それに何があってもクレス様が守ってくれるんですよね?』
そんな風に可愛らしく微笑むカエデを思い出して、クレスは頑張らねばと思ったものだ。何やら小声で『うふふ、ドワーフXエルフとか見れるかな』とか言ってたのは意味がわからなかったが……
本来の聖女だったアステシアが闇堕ちした代わりに聖女として召喚された彼女がクレスの仲間になったように、ヴァイスも同様なのだろう。
そう考えていたので、次の言葉には本当に驚いてしまった。
「そして、彼からは禍々しい感情を感じた。おそらくだが、彼は異世界の邪神に力をもらっているのだろう」
「は……?」
「だから、気を付けたまえ、今は味方のフリをしていても、いつの日か裏切るだろう」
そして、クラトスとの会話は終わりを告げた。
最後に彼が「邪神の使徒のくせに、義理の妹とイチャイチャしやがって死ねよ!! しかも、お兄さまととか呼ばせやがって、私にはなんで妹がいないんだ、くそが!!」とか言っていたが耳には入らなかった。
「クレス、何をボーとしているんですか?」
「ああ、ごめん、なんでもないよ」
クレスはフィリスに肩をたたかれて、回想をやめる。心配そうにこちらを見つめているフィリスと、彼女からもらったであろうアクセサリーを嬉しそうに見つめているヴァイス。
もしも、ヴァイスが敵だったらフィリスはどう思うだろう? そして、ヴァイスは本当に敵なのだろうか、頭をもやもやとさせながらクレスは二人についていくのだった。
------
やはり異世界の神がネックになりますね……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます