第120話 フィリスのプレゼント
クレスとクラトスがどんな話をするかは気になるが流石に聞き耳をたてるわけにはいかないので、フィリスとの買い物を続ける。
この魔法使いカフェ『メディア』でおきるイベントは好感度がもっとも高い魔法使いキャラが主人公にアクセサリーをプレゼントするというイベントである。ゲームではフィリスが来ると強力なアクセサリーをくれる上にフィリスエンドかハーレムエンドのどちらかが確定するのである。
まあ、今のフィリスは俺を義兄として見ているからフィリスルートには進まないだろうがな……そんなことを考えながら、にこにことほほ笑みながら店員さんの説明を聞いているフィリスを眺める。
「それじゃあ、使い魔。この石に渡す人への想いを込めてね。その気持ちが強ければ強いほどアクセサリーは強力な力を秘めるよ」
「はい……では、始めますね……」
店員さんの一言を聞いたフィリスは俺の方に一目見た後に魔力を石に込めるのが見える。ゲーム内では一枚絵だったが、実際に見るとやはりテンションがあがるものである。
そして、俺は思ってしまうのだ。俺がちゃんと話していれば実の妹とももっとこんな風に一緒にでかけることができたんじゃないか……などと……
無意識にフィリスの頭をなでるとびくっとする。
「お兄様……?」
「ああ、つい……集中力が乱れるか?」
「いえ、こうやって髪を撫でていただくとお兄様を感じれて頑張れそうです」
つい、頭を撫でてしまったがフィリスは嬉しそうにほほ笑んでくれる。店員がなぜか「え、お兄さま? 兄妹なの……? それにしては仲が良すぎるんじゃ……そういうプレイかしら?」などと混乱した顔でつぶやいているが気にしない。
そして、ネックレスの輝きが収まった。
「完成したわよー、使い魔!! じゃあ、これをそこの人につけてあげてね。そこまでが儀式だからね!!」
「「え?」」
ゲームでもなかった展開に俺とフィリスは同時に驚きの声をあげる。もちろん、ゲームではただ受け取るだけであり、のちにステータス画面で装備をしたりするのだが……
「わかりました……では、私がつけますね」
「あ、ああ……」
フィリスが緊張した声で俺にネックレスをつけようとする。吐息を感じるほどに正面で見た彼女はメインヒロインの一人なだけあってやはり美しい。
落ち着け!! 俺はお兄ちゃんだぞ!!
俺が脳内で必死に素数を数えていると、フィリスの気配が離れるのを感じた。
「で、できました!!」
フィリスが俺につけたネックレスは彼女の瞳と同じ色をした宝石を埋め込んだネックレスだ。せっかくだし、効果を確認する。
-----------------------------------------------------------------------------------------------フィリスのネックレス
装備したものの魔力への抵抗を高める。まれに魔法をはじき返す。無茶をしがちな大切な人の身を案じた少女の想いがこめられている。
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ゲームと効果が違う……確かゲームでは武力と魔力があがるはずだったが……俺とクレスへは思いが違うという事だろう。
「ほら、使い魔。こういう時はなにを言うかわかっているでしょう?」
「あ、ああ、そうだな。ありがとう。似合っているか?」
「はい、とっても似合っています」
俺が少し照れながらお礼を言うとフィリスも顔を真っ赤にしながらそういった。
「それにしても、使い魔ったら独占欲が高いわね。自分の瞳と同じ色のネックレスを渡すなんて、私のものっていうことでしょう?
「え……? あ、違うんです!! 私は離れ離れになるから私のことを思い出してほしいと思ってですね……」
「まったくフィリスは甘えん坊だなぁ」
「うう……お兄様、私の反応を見て楽しんでますね」
フィリスが可愛らしくほほを膨らますのを見て思わずにやけてしまう。だけど、その時にVIPルームの扉が開く。
そして、そこから出てきたのはクレスだった。だけど、彼は俺と視線があうとなぜか逸らしたのだった。
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