第110話 スカーレットとバイオレット
クレス達と別れた俺たちはスカーレットと共にハデス教徒の拠点を進んでいく。
「む、侵入者か!! 運が悪かったな!! われらはハデス様より強力な加護を得たものである」
「その名もイレギュラーズ!! 十二使徒に選ばれこそしなかったもののその特異すぎるの力から恐れられしものである。『腐敗のモルドバ』の力をみせてやろう。腐腐腐!!」
「イレギュラーズだと!?」
予想外の相手に俺は思わず声を荒げてしまう。そいつらはゲームでも登場したサブイベントのボスキャラ達である。一体一体が強力で癖のあるの加護を持っており、場合によっては全滅の危機もあった難敵なのだ。
「武力よ、やはり、武力が解決するわ!!」
「炎を司る不死鳥よ、その姿を現さん!!
「「ぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
しかし、モルドバともう一人のなんかかっこつけていたやつはスカーレットが放った火の鳥と魔剣を構えたアイギスに瞬殺されてしまった。
まあ、冷静に考えれば、今の俺たちはゲーム中盤の主人公達より強いし、ましてや、主人公たちよりもずっと強いスカーレットと、元はハデス十二使徒になるくらい強いアイギスが、ラインハルトさんに鍛えられた状態でいるのだ。こんなやつらに負けるはずないな。
「ふふ、心強い仲間ですね、ヴァイス様」
「ああ、そうだな。これならハデス教徒なんてこわくないぜ」
ほほ笑むロザリアにうなづいて、俺たちは先に進む。そして、宝物庫にいくまでの道のりにあるのは牢獄で少し足を止めてしまう。
血の匂いと何かが腐ったようなにおいがこちらまで漂ってきやがる。
「これは……」
「ひどいわね……」
ロザリアとアイギスが顔をしかめるのも無理はない。そこにいるのはまるで拷問にあったかのように両手、両足の爪をはがされている人や体中を焼かれた魔物など、様々な傷を負わされて息絶えている死体が放置されていたからだ。
「バイオレット……やっぱり、破壊衝動は収まっていないのね……」
「……スカーレット様はハデス十二使徒の一人のバイオレットを知っているんですか?」
「……そうね……これから戦うのかもしれないから聞いておいてもらった方がいいかもしれないわね」
俺が訊ねるとスカーレットは少し遠い目をして、傷つけられて牢獄に閉じ込められている連中を見つめる。俺もスカーレットとヴァイオレットが姉妹で、バイオレットはスカーレットを嫌っており、自分と彼女の両親を殺したという事実しか知らない。ゲームでもスカーレットがバイオレットをどう思っていたかは語られていなかったから知らないのだ。
「私とバイオレットは姉妹なのよ。十二使徒だった父に一緒に魔法を学んでいたわ。ただ、才能に関してはあの子の方が圧倒的に上だった……」
「姉妹ですか……」
「あなたよりも才能があるってどれだけなのよ……」
ロザリアが悲痛そうに眉をひそめて、スカーレットの力を認めているアイギスが息を飲む。ゲームでは確かにスカーレットとバイオレットが直接たたかうことはなかったが、敵キャラであるバイオレットの方が確かに強いうのは納得である。だが、それだけではないのだろう。
「その……バイオレットはなんでハデス教徒なんかになったんですか?」
「それは私のせいなの……私たち姉妹がのっていた馬車が山賊に襲われたことがあって……その時にバイオレットが魔法で山賊たちを皆殺しにしたのよ……それだけならばよかった……その時にあの子は笑っていたのよ。楽しそうに……それを見て私は恐怖してしまって……彼女にひどい言葉を投げつけてしまったの……それから数日後だったわ、スラム街の人間が魔法でいたぶられる事件が発生して……そして、その犯人として両親がバイオレットを咎めると、彼女は私の目の前で殺して、笑いながら去っていったのよ……」
「それは……」
あまりのことに俺たちは絶句する。予想よりも重く辛い過去だ。そして、彼女がそれを引きづっている事はその表情からわかる。
「あの時私が恐怖をしなければ、あの子は暴走しなかったかもしれない。あの時あの子が何をかんがえているか知りたいから私は会わなければいけないのよ」
そう決意に満ちた目で語る彼女に俺はなんと声をかけていいのかわからなかった。そして、しばらく進んでいくと牢屋に閉じ込められている人間たちや魔物の様子が変わっているのに気づく。
それは、いたぶられて死んでいるわけではなく、まるでどうやったら死ぬかを確かめるかのように解剖されており……その光景に俺は一つの思い当たることがあった。
「いやな予感がする。クレス達と合流するぞ!!」
「どうしたのよ、ヴァイス?」
怪訝な顔をするスカーレットに俺は答える。
「ここにいるのはバイオレットだけじゃない。もう一人ハデス十二使徒がいる!!」
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イレギュラーズ……本当はもうちょっと強いんですけどね……あと、イレギュラーズって響きが好き
ちょっと色々バタついているので、来週は更新休みます。すいません。
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