第99話 予想外の遭遇
俺たちはアイギスに連れられて、王都の市場へと足を運ぶ。そこでは屋台がそこらかしこで開かれており、まるでバザーのようになっていた。
「安いよー、安いよー。肉串が安いよー」「
「そこのお兄さん、王都限定十二使徒クッキーはお土産にどうかな?」
「かの十二使徒スカーレット様と同じモデルの杖だ。これがあれば学校の成績もアップ間違いなしだよー」
客引き達の声とともに美味しそうな香りが食欲をそそる。行きかう人々は、一般的な平民と、ちょっと高そうな服に身を包んだ貴族たち、そして、特徴的なゼウスを模した紋章が縫い付けられたローブを身にまとった魔法学園の生徒たちがいる。
うおおおおおおーーーーこれは、クレスとフィリスの回想でしか見れなかった平和な時の王都だぁぁぁぁぁ!! 俺は今猛烈に感動している!!
だって、俺は今、ヴァイスで!! 彼が憧れながらも行くことのできなかった王都へと足を踏み入れているのだ!!
あとで、フィリスへの挨拶がてら、魔法学園にも行ってみよう。
「ほら、ヴァイス!! こっちのお店のお肉美味しいのよ!! お父様も昔はこっそりと弟子たちと一緒に訓練を抜け出して食べていたの!!」
「お、マジか!! なんだこの味付け。胡椒か? いや、違うな……無茶苦茶うまいぞ!! ハミルトン領にはない味だ!!」
「でしょ、あとはここのはちみつ水がとっても美味しいの!!」
「お、はちみーか、ウマ娘かな?」
「ウマ……娘……? はわからないけど、キラービーっていう魔物のはちみつを使ってるらしいの。疲労にいいらしいわ!!」
テンション高めのアイギスに連れられながら俺は王都を満喫する。ロザリアはなぜか嬉しそうにこちらを見守ってくれていた。王都は様々の食べ物だけではなく、武器や防具、生活に仕えそうな魔道具などもあり、とても刺激的だった。考えてほしい。ゲームの世界のお祭りに参加したような気持なのだ。
そして、まだ楽しそうに買い物をしているアイギスに一言断ってカフェで休憩していると、隣に座っているロザリアが嬉しそうに微笑む。
「ヴァイス様、とても楽しそうで何よりです」
「あーちょっと、はっちゃけすぎたかな……」
初めての王都に子供のように騒ぎすぎたことに恥ずかしがっていると、彼女は俺をみつめながら首を横に振って俺の手を優しく包むように握って言い聞かせるように言った。
「いいえ、ヴァイス様はまだ18歳です。たまにはこんな風に騒いでもいいんですよ」
「そうか? 俺の年はもう成人だろ?」
俺の言葉にロザリアが珍しく首を横に振る。
「そうですね、ですが、ヴァイス様は領主として色々と頑張っていたじゃないですか。ここ最近はハデス教徒との戦いや、戦争などとても忙しかったでしょう? だから、私はヴァイス様が、何も考えずにこうして楽しんでくださって本当に嬉しいんです。今は色々なことを忘れて楽しんで下さい」
「そうか……ありがとう。でもさ、俺はロザリアにも楽しんでほしんだけどな」
彼女の気遣いに感謝しながらも、俺は訊ねる。すっかりアイギスと楽しんでいたが、彼女はどうだったのだろうか? 保護者のように俺たちを見守っていてつまらなくはなかっただろうかと思っていたがそんなのは杞憂だとばかりに彼女は笑顔で答えてくれる。
「うふふ、私はヴァイス様が楽しそうにしているのを傍で見ているだけで幸せなんです。だから、これからもずっとあなたと共にいさせてくださいね」
「ロザリア……なんかプロポーズされているみたいだな」
「それはその……そういう意味ではなくてですね……」
俺の軽口に顔を真っ赤にしている彼女に目を奪われて、見つめていると、うるんだ彼女の瞳と目が合った。それはいつもの大人っぽい彼女とは違いどこか可愛らしくドキドキしているとと遠くから大きな声が聞こえてきた。
「ヴァイス、ロザリア!! 次はこっちに行きましょう。珍しいお店があるのよ!!」
俺とロザリアは急に恥ずかしくなって目をそらして、アイギスの方へと向かう。
そこは路地裏の、看板もない今にもつぶれそうなお店だった。
「うふふ、すごいでしょう。ここは掘り出し物がたくさんあるってお父様がおしえてくれたの。うちにある魔剣の何振りかも、ここで買ったのよ」
「……」
「ヴァイス様?」
アイギスに連れられた俺は目の前の光景に思わず絶句していた。だってここは……ゲーム中盤でダウンロードコンテンツを買うことのできる課金ショップだったからだ。
まあ、ここが同じ世界ならあるよな……
「ああ、なんでもない。入るぞ」
俺は内心わくわくしているのを隠しながら足を踏み入れる。ここで買えるのはちょっと攻略が楽になる程度だけど、強力なアイテムが売っているのだ。きっと俺達にも役に立つアイテムがあるだろう。
「いらっしゃい!! おお、こんなところに今日は二組もお客が来るなんて幸先がいいなぁ」
店の外装とは違い、フレンドリーな店員にゲームの通りだと思いながら、俺が店内を見回すと一人の金髪の少年が商品をを見ているのに気づく。彼もこちらに気づいたのか、視線を上げると目が合って……俺は二度目の衝撃を受ける。
「クレス……だと……」
「君は……アイギス=ブラッティ?」
そいつはアイギスを見て、信じられないとばかりに目を見開いたのだった。
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中の人無茶苦茶楽しそうだなぁ……
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