第97話 王都へ
馬車に揺られながら、俺は手紙を見てちょっと興奮気味に口を開く。
「まさか、十二使徒から王都への招集とはな」
「うふふ、それだけヴァイス様のすごが認められたっていうことですよ。腐敗していた領地を発展させ、戦争にも勝ち、ハデス教にも大ダメージをあたえているんですから。むしろ、遅かったくらいです」
馬車の隣に座っているロザリアが当然のことですとばかりにほほ笑むが、もちろん、当然のことではない。十二使徒は戦闘に限ったことではないが、この国での最強クラスの人物だ。ダークネスは言動こそアレだが、圧倒的な戦闘力を持っており、スカーレットは興味のないことにこそアレだが、魔法に関しての技術は天才的だ。
いや、アレなやつしかいねえな!!
「それにしても、部下の十二使徒候補もいるだろうになんでわざわざ俺に……」
「やはり、ハデス教徒がらみでしょうか……」
「だよなぁ……十二使徒が絡んでいそうだよな」
ロザリアが険しい顔をして答える。エミレーリオもパンドラも恐ろしい相手だった。事前情報があったからかろうじで倒せたエミレーリオや、パンドラとの戦いもハデス教徒の力にも目覚めたアステシアがいなければあんなに簡単にはいかなかっただろう。
一歩間違えたら俺たちの方が負けていたのかもしれないのだ。と考えると、また十二使徒と戦うのは正直しんどい。
「ですが……ヴァイス様は今回の招集を断る事も出来ましたよね? なぜ即答して引き受けたんですか?」
「ああ、俺の尊敬する人の言葉に逃げれば一つ、進めば二つ手に入るって言葉があるんだ」
「逃げても……手に入るですか……?」
怪訝な顔をしているロザリアに俺はどや顔で答える。まあ、アニメキャラの言葉の受け売りだけどな。
「逃げた場合は俺達がいることによってハミルトン領の平和が安寧が得られるだろう。そして、進んだ場合は十二使徒への人脈と、王都での知名度が手に入る。俺は所詮地方領主だからな。ここで活躍すれば俺という存在が王都でも知られ、ハミルトン領の発展にもつながるだろう」
「逃げても何かが手に入るですか……素敵な言葉ですね。それに、とっても前向きで、ヴァイス様にぴったりです!! 歴史上の統治者の言葉でしょうか? その方の自伝などありましたら、読んでみたいです」
やっべえ、前世で見ていたアニメのキャラセリフとか言えねえ!! ロザリアが尊敬に満ちた視線を送ってくるのを感じ、罪悪感で胃が痛くなってきた。
コンコン
何か話題を変えるきっかけを……と思っていると意外な所から救世主が現れた。馬車の扉がノックされたのだ。
「「え?」」
普通に開けようと思って、今は走行中じゃねえかと俺とロザリアは顔を合わせる。まさか、敵襲か!? と警戒していながらロザリアが扉を開けると……突風と共にドレスを身にまとった少女の炎のように赤い髪の毛が舞うようにして風に流されているのが見えた。
「ヴァイス!! 久しぶりね!! 馬車を見つけたから、挨拶をしに来たわ!!」
「あ、ああ……久しぶりだな。アイギス。でも、どうやってきたんだ?」
「えへへ、ヴァイスだーーって思って嬉しくって走ってきちゃったの」
そんな、チャリできたみたいに言われても……そういうと彼女は当たり前のように俺の隣に座った。いや、マジでどうやってきたんだよ……って気になり、馬車の扉から外をのぞくと、少し後ろにブラッディ家の紋章が彫られた豪華な作りの馬車が見えて、御者が頭をかかえているのが見えた。
うわぁ……胃が痛くなりそう……
「アイギスも王都に何か用があるのか?」
「ええ……お父様の弟子のダークネスにちょっと渡すものがあるの。それで、お父様が忙しいから、代わりに私がいくことになったの」
ニコニコ笑いながら彼女が俺に見せたのは何か細長いものが入った金属の筒状の箱である。あれって、絶対魔剣じゃ……
王都に待つ存在に俺は嫌な予感を隠せなかった。
ーーーーーー
すいません、昼間バタバタしてて投稿できませんでした。
さあ、王都には何が待ってるのか……
ちなみにヴァイスがパクッたセリフをいったのは水星の魔女というアニメの主人公です。
面白いのでぜひ!
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