第65話 ヴァイスの新しい魔法

本日は二話更新です!! 前の話を見ていない方は気を付けてくださいね。

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彼女の影が獣を模して、目の前にある大きい木を引き裂く。その光景に俺とロザリアは驚愕し、スカーレットは感嘆の笑みを浮かべていた。



「うふふ、流石ね、フィリス。やはりあなたはすごいわ。たった一回で上級魔法を完璧につかいこなすんだもの」

「……ありがとうございます」



 そう、俺とロザリアが驚愕したのは彼女が上級魔法を使ったのもあるが、それ以上に使いこなしていたからだ。俺がゲーム知識を使用して放つ上級魔法に比べてその練度がかなり高い。彼女が参考にしたのは魔法学園の教師だろうか? 俺が王級魔法を使用したときの話を参考に彼女もまた誰かの魔法をイメージをしたのだろう。まさしく天才である。

 ロザリアに情けなく甘えたおかげだろうか。不思議と俺の胸にモヤモヤはなかった。ゲームではこの段階では上級魔法を使えなかったはずなのに、俺の真似をして使いこなすのは流石はフィリスといったところだろう。だけど、それが才能だけではないという事は今の俺ならば良くわかる。これは裏技が努力をせずに使えるようなものでは無い。彼女は教師の魔法をよく見て、魔法の鍛錬を続けていたのだろう。だからこそ、今の俺と同様に覚えていないはずの上級魔法が使えたのだ。

 そして、それは俺の前世の妹も同じだったのだろう。俺よりも要領よく勉強ができていたが、決して努力をしていなかったわけではないのだ。



「フィリス……」

「はい、なんでしょうか、お兄様」



 俺が呼び掛けると、彼女は一瞬びくりと震え、恐る恐るこちららを見つめてきた。スカーレットがそれを怪訝な顔で見つめ、ロザリアは俺に信じてますとばかりに微笑みを向けてくる。



「すごいじゃないか、流石は俺の義妹だな。学校でも頑張ってたんだな」



 俺は笑顔を浮かべながら優しく彼女の髪を撫でる。その髪の毛はとてもサラサラで触り心地が良い。



「あ……え……う……」



 最初はまたびくりとしていた彼女だったが、変なうめき声をあげ……そして俺はちょっとした衝撃に襲われた。フィリスが抱き着いてきたのだ。

 そして、俺の胸元に顔をうずめながら、くぐもった声をあげる。



「はい、私頑張ったんです。私には魔法しかないから……だから、一杯頑張ったんです。褒めてください……自慢の妹だって言って下さい、お兄ちゃん」

「ああ、お前は偉いよ。本当にすごい……俺の妹だ」



 俺の胸元で半泣きになっているフィリスの頭を落ち着かせようと優しく撫でてやる。柔らかいを感触と、甘い匂いがなんとも心地よい。



「うふふ、良かったですね……ヴァイス様、フィリス様」

「え……何が起きているの? なんで、フィリスは泣いているのよ?」



 ロザリアが嬉しそうにうなづき、スカーレットはなにがおきているのかわからず困惑している。

 てか、フィリスってメインヒロインの一人なだけあって可愛いんだよな……こんな風に無防備な姿を見せられると変な気持ちになってしまいそうである。いや、落ち着けって、俺はおにいちゃんだぞ!! そうお兄ちゃんなのだ。だったら……お兄ちゃんらしいところも見せてやらないとな。

 


「今度は俺の番だな、スカーレット様。俺の魔法もお見せしましょう。可能ならば的を作っていただきたいのですが……」



 胸元のフィリスが少し寂しそうな顔をしながらも、俺から離れる。ヴァイス……ロザリア……そして、俺をこの世界に転生させた何者よ、ありがとう。お前たちのおかげで俺は妹を認める事ができた。



「へぇー、その顔何かを掴んだのね。見せて見なさい」



 俺の言葉にスカーレットが満面の笑みを浮かべて炎の鳥を出す。炎の上級魔法であり、対象を焼き払うまで消える事の無い魔の炎だ。

 それはまるで彼女に仕えるかのように指示通りに動き、俺の前を舞う。



「フィリス、ありがとう。俺の魔法はお前のおかげで一歩進歩したよ。お兄ちゃんの力をみせてやるよ。ホワイト!!」

「きゅーーー!!」



 俺の掛け声とともにそれまで大人しくしていたホワイトが鼓舞するように鳴いた。そして、俺はいつものように……だけど、いつもより鮮明に王級魔法をイメージする。

 俺は今までゲームで闇魔法を見ただけだった。だけど、今は違う、フィリスが本物の……ゲームではない闇魔法を見せてくれたのだ。イメージを修正し、より緻密に繊細にイメージを固めると、どっと疲労感が襲い掛かってくる。

 俺は信頼しきった顔で俺を見守ってくれているロザリアを見て、内なるヴァイスに語り掛ける。



 確かにフィリスは天才だ……だけど、俺は一人じゃない。ヴァイスがいて、ロザリアが信じてくれて……これまでの経験がある。だったら……フィリスにだって負けられないよなぁ!!



 尽きた魔力を補充するように、心の中から力が湧き上がってくる。そして……俺は真の意味で王級魔法を理解した。




「常闇を司りし姫君よ、我にしたがい、その力を振るえ!!」



 詠唱と共に、俺の影が力を変え、巨大な人影と化す。そして、その影は自らの身体を帯のように伸ばし、火の鳥を包むとその生命力を一瞬にして喰らい尽くした。



「これが本当の王級魔法なんだな……」



 今までの俺は王級魔法を武器などに宿して無理やり制御する事しかできなかった。だけど、今は違う。俺の傍にいる影はまるで王に仕える配下のように頭を垂れている。これまでは力に飲まれそうになり、かろうじで使っていたと言うのに、まるで手足のように思うがままだ。



 俺は完全に王級魔法を使いこなしたのだ。



 俺の胸の中にすさまじい達成感に満たされる。みんなの反応はどうだろう……と思っているとなぜか、押し黙ってる。あれ、俺なんかやっちゃいました?



「流石です。お兄様……まさか、ここまで王級魔法を使いこなせるなんて……」

「おめでとうございます、ヴァイス様。でも、あんまり無茶をしてはいけませんよ」



 と思っていたら興奮した様子で、フィリスとロザリアがかけよってくる。リアルさすおにいただきました!! そして、スカーレットはというと……何やら震えている。



「あの……スカーレット様」

「あなた、やっぱりうちに来るべきよ!! この短期間で成長するなんて……まあ、私の方がすごいんだけどね!!」

「申し訳ありませんが、ヴァイス様は領主なので……」



 荒い息をしてすさまじい勢いでこちらにせまってきたスカーレットをロザリアが割り込んでおしとめる。やはり身体能力は彼女の方が上の様だ。

 そして、俺はフィリスに声をかける。



「どうだ、お兄ちゃんはすごいだろ? だから、お前ももっと全力を出していいんだぞ」

「……はい!!」



 俺の言葉にフィリスは嬉しそうに返事をして笑顔を浮かべた、これで今まで通りの日常が戻る。

 しばらくは、戦争も起きないだろうし、あとはハデス教徒を警戒しつつ、何とか民衆の忠誠度を上げなければな。

 そう思った時だった。息を切らしたカイゼルがこちらにむかってやってくる。一体何があったというのだ? この時期におきそうな問題はないはずなんだが……



「ヴァイス様、大変です!!! 例の魔物の巣から大量の魔物が現れたそうです。スタンビードの前兆だそうです」



 その一言で場の空気が凍った。



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ヴァイス=ハミルトン


武力 55

魔力 75→80(闇魔法のレベルが上がったことにより魔力が上昇)

技術 30→40(魔法を完全に理解したことによってアップ)


スキル


闇魔術LV2→LV3

剣術LV2

神霊の力LV1


職業:領主

通り名:普通の領主

民衆の忠誠度

50→55(メグの噂話がひろがったことにより、街の住人の忠誠度がアップ)


ユニークスキル


異界の来訪者


 異なる世界の存在でありながらその世界の住人に認められたスキル。この世界の人間に認められたことによって、この世界で活動する際のバットステータスがなくなり、柔軟にこの世界の知識を吸収することができる。


二つの心


 一つの体に二つの心持っている。魔法を使用する際の精神力が二人分使用可能になる。なお、もう一つの心は完全に眠っている。



(推しへの盲信)リープ オブ フェース

 

 主人公がヴァイスならばできるという妄信によって本来は不可能な事が可能になるスキル。神による気まぐれのスキルであり、ヴァイスはこのスキルの存在を知らないし、ステータスを見ても彼には見えない。


神霊に選ばれし者

 

 強い感情を持って神霊と心を通わせたものが手に入れるスキル。対神特攻及びステータスの向上率がアップ。




異神十二使徒の加護 


 ゼウスでもハデスでもない異界の神に認められた十二人の強者にのみ与えられるスキル。異神の加護にステータスアップ及び、自分より下の存在に対して命令を下すことが出来る。

 ヴァイスは異界十二使徒の第二位であり、第三位から第十二位は空位。世界が異神の存在を認識したことによってスキルが目覚めた。


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 というわけで義妹編+中の人編は終了です。

 ようやく主人公が新しい力を手に入れたぜ。

 

 今回の話は中の人の前世に力をいれた話でしたがいかがだったでしょうか?


 おもしろいなって思ったら星やレビュー、感想を頂けると嬉しいです。




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