第51話 ヴァイスの仲間たち
「我が名はスラッシュ!! ヴァサーゴ様が配下の三将軍の一人『剛力』のスラッシュだ。貴様の命はもらい受ける!!」
「そりゃあ、ご丁寧に自己紹介ありがとうよ!!」
「貴様を屠る相手の名前を知らずにあの世に行くのはかわいそうだからな!!」
俺とスラッシュの言葉に兵士たちが道を開ける。『剛力』という通り名的に魔法とかには弱そうだよな……ならば俺に勝算はありまくるぜ!!
俺は馬に乗ってスラッシュに向かっていき、そのままの勢いで飛び降りて、スラッシュに斬りかかると同時に魔法を放つ。
「影の腕よ、我に従え!!
「魔法なんざ使ってんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!」
俺の斬撃と、影の手によるコンビネーションだったが、スラッシュの剣がまずは影の手を切り裂き、返す刃で俺の剣をはじくことであっさりと潰された。
「くはっ」
何らかのスキルを持っているのだろう。すさまじい力にそのまま俺は吹き飛ばされる。確かにスラッシュは強い……だけど……ハデスほどじゃない。
それに……これまでの特訓の成果か、やつの剣は見えた。
「魔法なんかに頼ってるからこうなるんだよ。雑魚領主!!」
「それは違うな……魔法こそが……ヴァイスの力なんだよ!!」
そうだ……これは、ヴァイスがフィリスという天才と比べられても努力をし続けて手に入れた力なのだ。これを馬鹿にすることは誰にも許されない。そして、俺は許すつもりはない。
にやにやとした笑みを浮かべたスラッシュが俺を見下すような表情でこちらへと向かってきた。そんなやつに俺は再び斬りかかる。
「影の暴君よ、その腕を我に貸し与えん!!」
「え?」
影の獣の腕が俺の手の上から剣を握り、先ほどのが俺の全力だろうと油断したスラッシュの想像以上の速さで振るわれる。上級魔法は伊達ではない。人間が振るえる限界を超えた一撃が彼を襲う。
そして、そのまま油断をしていたスラッシュは間の抜けた声を上げて、そのまま首を切られて絶命する。
「敵将をうちとったぞぉぉぉ!!」
「うおおおお」
その一言で俺達の周りに士気があがった。スラッシュか……確かにこいつは強敵だった。ロザリアと同じくらいの力を持つというカイゼルの評価も間違いではなかった。まともに戦ったらもっと苦戦しただろう。俺が勝ったのはこいつが俺の事を無能な領主だと思って油断していたからだろう。
どんな能力をもっていたんだろう? なんとなく気になった俺は彼の手に触れる。
------------------------------------------------------------------------------------------
スラッシュ=ブレイド
武力 80
魔力 20
技術 40
スキル
上級剣術LV3
戦場のカリスマLV2
(戦場にいる場合に周りの兵士の士気があがる。戦いによって功績を重ねたものにのみ発動するスキル)
ユニークスキル
怪力LV3
剣に生きるものLV2
剣をひたすら振り続けたものに飲み到達できるスキル。剣を持った時のステータスがあがる。
バットステータス
傲慢にて慢心
相手を格下だと思っていると、ステータスがダウン
職業:将軍
通り名:インクレイの剣将
主への忠誠度
50
代々武官として生きているインクレイ家の将の血筋の人間。強いものと戦う事にしか興味が無いが、戦場の兵士たちの受けはいい。自分の領内で邪教がはびこり始めたことは知っていたが戦いにしか興味を示さなかったため放置していた。
------------------------------------------------------------------------------------------
やはり魔法は使えないようだがステータスもかなり高い。だけど、こいつは俺を終始舐めていた。だから奥の手である上級魔法に反応することができなかったんだ。
あれ? でも、なんでこいつのステータスは読めて、ナイアルのステータスはわからなかったんだ? こいつもナイアルもゲームに出ていないんだが……そんなこと思っているとカイゼルがこちらに向かって走ってきた。
「ヴァイス様!! 勝利おめでとうございます。しかし、私の心臓が止まるかと思いましたぞ」
「ああ……悪かった。だけどこうしなきゃこの戦いもっと苦戦したと思うんだ」
「ですが……こういう時は我々に相談をしていただけると嬉しいです」
「そうだな……すまなかった」
カイゼルが真剣な表情で言った。そうだ……俺にはゲームで得た知識があるがこれはゲームとは違うんだ。今回だってスラッシュの存在によって兵士たちの士気は大きく左右した。本当だったら今回の戦争はもっとあっさりと勝てるはずだったのに……
そして……俺はスラッシュの死体を見て思う。今回はうまく行ったが次もうまくいくかはわからない。ステータスがすべてではないし、ゲームとは違うことも起こり始めている。だから俺も慢心せずに心配してくれているカイゼルのような人間には頼ったり相談をする事も必要なのかもしれない。
「しかし……相手もやりますな。変な能力を使っている奴らが紛れているようです」
「まだ、油断はできないようだな」
士気が上がったわが軍の兵士たちがどんどん敵を追いやっていくが、ついに鉄砲水がとまり敵の増援がやってくる。
そしてその中には使い魔を行使するもの。巨大な大剣を持ってくるもの、連続で魔法を使ってくるものなどハデス教徒のモブ共まで紛れてやがる。
確かにこれは一筋縄ではないかないなと思った時だった。
「全く、貴族が邪教と手を組むなんて世も末よね。神の雷よ、我が敵を浄化したまえ!!」
俺の隣にやってきた無表情な少女の言葉と共に、その胸元から強力な雷が発生して、川を渡っている敵を襲う。川に雷はやばいな……
それに、神の雷はダメージのほかに異教徒の加護を一時的に無効化させる効果があり、ゲームでは無茶苦茶苦戦させられたのだが、味方が使うとこんなに頼もしいとは……そして、何よりも……
「うおおおおお、生おっぱいサンダーだ!! すげぇぇぇ!! 本当に胸元から出てる!!」
「神の奇跡に変な名前を付けないでくれる!? それに別に胸は見えていないでしょうが!!」
やっべえ、思わず、口に出していた。アステシアは顔を真っ赤にして胸元を隠す。ちなみに今の彼女の服装はプリーストが着るローブなので露出は低いのだが、ゲームではもっと谷間が見えていたり、下半身にはスリットが入っていたりと。色々とセクシーなのである。
ハデスの趣味だったのだろうか? ゲームでも闇落ちをすると露出高くなるキャラとかよくいるよな。
「そんなことよりも、これであいつら無力化できるはずよ。今のうちに攻めなさいな」
「そうですね……では、私もいかせていただきます。このまま何の功績もなければ部下に示しがつきませんからな。相手の将軍の一人でも倒して見せます。アステシア殿、ヴァイス様を頼みますぞ」
アステシアの言う通り、神の雷を受けてダメージを受けているのはハデス教徒たちが驚愕の声を上げる。しばらくは加護が使えなくなるため、敵の使い魔は消えて、怪力持ちは巨大な剣を落として大惨事を産みだしている。これでハデス教徒もただの人である。
カイゼルは元気に飛び出して、敵兵士をなぎ倒していく。あいつもいつの間に無茶苦茶強くなっているな……最初にステータスを見た時はモブより少し強いくらいだったのに……俺ももうひと踏ん張り……と思ったが、彼女が俺を押し止める。
「心配しなくてもあなたの仲間は強いわ。あなたは指揮をした上に、相手の将軍の一人を倒した。十分でしょう? だから、私達にもう少しくらい任せなさいな。みんなヴァイスの事が好きなんだから……」
彼女は無表情ながら優しい目で俺の傷を癒す。暖かい光が先ほど吹き飛ばされた時に負った擦り傷を暖かい光が包む。
「そうだな……ありがとう」
アステシアの言葉に張りつめていたものが切れたのかどっと疲れが押し寄せてくる。なんだかんだ緊張していたのだろう。
「ヴァイス=ハミルトンめーー!! 無能な悪徳領主の癖に卑怯な手を使いってわが友を殺しおって!! 私が倒してくれるわ!!」
「何を!! 言いがかりをつけて戦争を仕掛けてきたのは貴様らの方だろうが!! 名を名乗れ!!」
まだ別の指揮官がいたのだろう。立派な鎧を着た敵兵が川の上で叫び、それにカイゼルが言い返す。二人が対峙をしている時だった。
川の上流からすさまじい殺気を感じた気がする。一体何が……と思って、上流の方を見上げると丸太のような氷に乗ってすさまじい勢いで下ってくる人影が目に入った。
そして、そのまま氷が敵に襲い掛かる。
「我はヴァサーゴ様の配下が三将軍が一人……うおおおおおお!?」
「自分たちの無能さを棚に上げて、ヴァイス様を侮辱するとは不敬ですよ!!」
「ぐがぁ!?」
相手の指揮官は氷の丸太こと回避したものの、ロザリアの槍による一撃までは回避できず、柄で頭を叩かれてそのまま倒れていった。
「ヴァイス様のメイド、ロザリア。敵将を打ち取りました!! ここが正念場ですよ、皆さんがんばっていきましょう!!」
「「うおおおおお、流石ロザリア様だぁぁぁ!!」」
「え……いや、私の立場が……」
かっこつけて出陣した者のいい所をロザリアに持っていかれて泣きそうな顔でカイゼルが、俺を見つめてくるが何と言葉をかければいいか俺もわからない。
「ヴァイス様、指輪を返しにまいりました。無事でなによりです」
「あ…ああ……」
あの川を下ってきたのか、結構高さがあるんだが……ちょっと驚きながらロザリアに返事をする。なにはともあれ、初戦はこっちの圧勝で終わったのだった。
-----------------------------------------------------------------------------
ゲームではアステシアの攻撃をくらうとダメージを受けた上に魔法が一切使えなくなります。ヒーラーがくらうとやばいですね……
そして、ロザリアというセコムが優秀すぎる……三将軍さん……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます