第3話 最強の護衛
ヴァイスの家……ハミルトン家はそこそこ歴史のある貴族だ。屋敷も古いがその分立派であり、隠し通路がある。そして、そこには先祖の隠し財宝も存在する。ただその存在は代々領主にのみ知らされているのだ。
ゲームではヴァイスの義妹にて、メインヒロインのフィリスが隠し通路の存在を知っていて、そこへ移動するときに、レア装備と共に発見して、主人公たちが領地運営をする際の軍資金になるのである。これだけ金に困っているのにヴァイスが手をつけなかったのは、その存在を知らなかったからだろう。
「全く優れた妹を持つと苦労するよな……」
俺は自虐的に笑いながら剣を持ちレザーアーマーを装備して、待ち合わせの場所へと向かう。この胸の疼きは俺のものだ。俺も前世では優れた妹の存在に頭を悩ませたものだ。同じ悩みを持っていたのも俺がヴァイスを推す理由の一つである。
ちなみに俺が武装しているのは隠し通路はあまりに使われなかったため魔物の巣になっているからである。ロザリアに行って信用できる兵士を集めさせているので問題はないだろう。これで借金も返せるはずだ。
「あれぇぇぇぇ? ちょっと人望なさすぎじゃない」
待ち合わせ場所には誰もいなかった。いや、正式に言うとロザリアしかいなかったのだ。俺はあまりの状況に思わず情けない声を上げてしまった。これ、どうすりゃいいんだ?
「なあ、ロザリア……まさか、俺が信用できる兵士ってもしかして誰もいないのか……」
「その……ヴァイス様は誤解されやすい性格ですし、最近は荒れてらしたので……」
「いないって事かよぉぉぉぉぉ、どんだけ人望が無いんだよ!!」
流石民衆の忠誠度10は伊達じゃないぜ!! 正直ギリギリだから、うかつな事はできないっていうのに……
「正式には一人はいるのですが、彼は今忙しくて……それに、ヴァイス様には私がいるじゃないですか」
「いや、ロザリアが信用できるっていうのはわかっているけどさ……このさきは戦いなんだぜ……いや、待てよ」
そう言ってロザリアはどや顔で胸を張った。そのせいか一瞬形の良い胸が揺れる。目で追ってしまったのは仕方ないだろう。
俺はゲームの時のことを思い出す。ヴァイスを倒すときにロザリアとも戦うのだが、魔法と槍を使ってきて苦戦をした記憶はある。てか、序盤の敵なのに無茶苦茶強かったんだよな……ああ、そうだ……ゲームの様にステータスがわかるならもしかしたら……
「ちょっと悪い……」
「え? ヴァイス様? いくら寂しいからって……ああ、でも……ヴァイス様が望むなら……」
俺はなぜか顔を真っ赤にしているロザリアの肩を掴んでじっと見つめる。すると、なぜか彼女は目をつぶった。一体どうしたのだろうか? よくわからないがチャンスとばかりに俺は彼女のステータスを覗く。ゲームではカーソルをあわせればキャラのステータスがある程度わかったのだが……
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ロザリア
武力 60
魔力 80
知力 62
スキル
氷魔法LV3
上級槍術LV3
ユニークスキル
主への献身LV3
主人のために戦うときは、ステータスが30%アップ
職業:メイド
通り名:殺戮の冷姫
主への忠誠度
100
好感度
100
ヴァイスのメイド。かつて命を救ってもらったことに恩を感じて、彼の事を自分よりも大切に想い、彼の幸せを願っている。
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いやいや、ステータス高!! なにこれ、敵キャラだからって適当に設定しただろ? てか、殺戮の冷姫ってなんだよ。過去に絶対なんかあるじゃん。こんな重要っぽいキャラだったの?
どうりで序盤なのにくっそ苦戦したわけだわ。だけど、これならいける!! 彼女がいれば魔物だって倒せるだろう。
まあ、ヴァイスもだが、敵キャラだからこそ主人公たちよりもステータスは高いんだよな。
「むーーーー」
「え? どうしたの? すっごい不満そうな顔をしているけど……」
「なんでもないです!! でも、ヴァイス様が元気になってよかったです」
俺がステータスを見て驚いていると、なぜかジトーとした目で見ていた彼女だったが、ふっと嬉しそうに微笑んだ。
「私がヴァイス様の事は絶対守ります。だから安心してくださいね!!」
そうして、俺とロザリアは一緒に隠し通路に入ることにしたのだった。
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