お姫様の年賀状

バブみ道日丿宮組

お題:小さな年賀状 制限時間:15分

 騒動が起こったのは、新年を迎えた朝。

「……お前は一体何をしたんだ!」

 乱暴に扉を開いて、父親が入ってくる。

「入るときはノックしてっていってるじゃん」

「そんなこと言ってる場合じゃないぞ」

 手渡してきたのは、小さな年賀状。

 英文だった。

「あぁ……お姫様か。年賀状の書き方知らなかったんだろうな」

 びっしりと書かれた文字は、ちょっと読めない。ルンルン気分で書いたんだろうけど、伝わるものが伝わってこない。

 絵に書かれた雪だるまが、日本のお正月をあまり理解してないのがぷんぷんとしてる。

「どうして……」

 父親は信じられないような表情をしてきた。

「最近友だちになったんだ。学校に体験入学しにきたの知ってるでしょ?」

 もっとも最初の出会いは、子どものとき。お姫様が迷子になったときからの付き合いだ。

「知ってるが……」

 今ではチャットアプリで毎日話す仲になってる。

 好きとも言われてるし、愛してるともいわれてる。

「問題じゃないか。逮捕されてしまうんじゃないか」

「お父さんビビりすぎでしょ。大丈夫だよ。清く正しく美しくってね」

 肉体関係を持ってることはさすがに黙った。

 別にあれをあれに入れたわけじゃない。

 だって、あれついてないもの。

 お互い愛撫ぐらいはしたけれど、細長く太いものは入れてない。

 指がせいぜいで、それ以上の発展は今はない。同性でも子どもは作れるし、そのうちそういう話もでるかもしれない。

「……大丈夫なのか」

「ダメだったら、年賀状だってこないよ。規制されるだろうね」

 国際便なのに、正月に届いたのはお姫様だからということもあるかもしれないが、

「本人も今日本ついて、こっちにくるって」

 震えたスマホにはそう書かれてた。

 中身は年賀状というよりかは、パーティのお誘いとかそういうものかもしれない。

「くるのか? この家に……?」

「飛行場から直でくるだろうね。ほら、パトカーの音も聞こえるじゃん。たぶん、警備だよ」

「一大事じゃないか! 母さん! 母さん!」

 叫び声をあげながら、父親は部屋からでていった。

 それにしても、本当に自由気まま。

 昔から変わらない。

 だからこそ、迷子になって私と出会えた。

 そう思うなら、お姫様の行動力は良いところ……なのかもしれない。

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お姫様の年賀状 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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