第173話 結晶病の可能性(2)
「しかも、なんだこの濃度……!」
「すごい……すごいよ、ヒューバート! この
「ああ……これを使ったら
カモ。
なんて、言いそうになって口を噤んだ。
「……シズフさん、これ、吐いたんですよね……?」
「ああ」
「ゥァァ……」
さすがのジェラルドもそれを思い出したのか、なんとも言えない声を出す。
見たこともない、凄まじい濃度の魔力が詰まった
人間が。
……吐く?
「冷静になるとマジでどういうことなの……? 人間が
「お、俺は知らんぞ」
ラウトさん、どういうことですかね、これ。
結晶病はラウトの権能のはず。
恐る恐るラウトを見るが、やはり安定の自覚なし。
いっや、怖い怖い怖い!
謎が謎を呼び謎が深まってる!
ラウトの権能、結晶病っていったいなんなの、ほんと!
「あの、ヒューバート様」
「う、うん、なに、レナ。なにかわかる?」
「いえ、正直全然わからないんですけど……ディアスさんの時と似てるな、と思いました」
「ディアスの時と……? ……あ」
そういえばそうかもしれない。
四肢爆散という、あの善人ぶりからは想像もつかない無惨な最期を迎えたはずのディアスは、直後覚醒したラウトの“権能:結晶病”を繋ぎ目にすることで生きながらえていた。
ディアスの場合は目に見える形だが、シズフさんの場合は体内だ。
体中が細胞劣化でズタボロになっていると聞いているし、シズフさんも
感染しているのは間違いないのに、表面上は結晶化していない。
つまり、中身だ。
ディアスのように、体の悪いところが結晶化して、結晶が“繋ぎ目”として機能しているのだとしたら……この吐き出された
「もしかして、結晶病ってそもそも本来は
「どういうこと〜?」
「いや、つまりさ……どうしようもない怪我や病気も、結晶化させることで悪い部分を補うってこと。ディアスの首が繋がっていたり、シズフさんの体の中の悪いものを固めて外に吐き出させたり、ってこと。……治す方法がなくても、延命させられるってこと」
「え、それじゃあ……」
レナが、俺が、ジェラルドが、シズフさんも、ラウトを見る。
だってそれ以外に考えられないんだよ。
特にディアスの時はわかりやすく生かそうとしていた。
血は吐いているけど、少量だ。
毎日この量を吐かれたら心配だけど、ディアスと同じように結晶化が“繋ぎ目”になっているのならシズフさんは、薬がなくても大丈夫。
まだ確信があるわけじゃないから、様子見は必要だと思うけど……そう考えると、なぜか焦ってシズフさんをルオートニスへ帰そうとは思わなくなる。
なぜなら、ラウトがシズフさんの体を中から守ってくれているから。
「お、俺はそんなこと……」
「シズフさんは、俺たちに会う直前のことは思い出せますか?」
「ああ……血を吐いて倒れた。薬を絶っていたので、体は限界だった。……そういえばめまいや頭痛や怠さや息苦しさ、歩くたびに感じていた痛みや軋む感覚も消えているな……?」
……めちゃくちゃ重病人だったのでは?
「今は普通に息ができる……」
結晶に取り込まれる前のこの人、末期だったのでは!?
「『クイーン』と差し違えるつもりだったのに、眠気以外は……とても楽になっている……」
「寝ないでくださいね」
「ん……」
大丈夫ではなさそうだ、引き続き。
「ジェラルド、シズフさんの体調を[鑑定]してくれないか? 治療が必要なら今できることをしたい」
「了解〜。うーん……『貧血』と『栄養不足』『痩せすぎ』『過労』」
「よし、シズフさんは城の中のお部屋を借りて休みましょう!」
「……俺もディプライヴの中で……」
「ダメです。ランディ、連れて行け」
「はっ!」
「レナ、ラウト、明日はシズフさんに力ずくでも食事させるから手伝ってくれ」
「はい!」
「……」
ラウトの微妙な表情を見ながら、とりあえず血を拭き取った
凄まじい高純度。
その分、一メートル級の
これを
やばい、ワクワクしてきた。
明日ハニュレオの技術者と話し合って、ハニュレオの技術も取り込めたならば
ギア・フィーネ並の運動性能にはまだまだ届かないだろうが、
「楽しみになってきたな」
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