第166話 お届け物でーす
五号機が普段の純白の騎士姿に戻る。
喉と目頭が熱い。
……なんなんだよ、もう、こいつら。
話し合いで解決、できるんじゃねーかよ。
「ヒューバート様」
「ああ」
レナが俺の肩を叩く。
そうだな、このままだとあの二人、沈黙したままこれ以上話を進めなさそうだもんな。
「じゃあ、シズフさん。これからどうしますか?」
『……』
「もし行く宛がないなら、しばらくうちの国に来ませんか? えーと、ディアスとラウトは今、ルオートニスを拠点にしているんです。あと、ナルミさん、って人がいて」
『ナルミ? 鳴海紫蘭か?』
あ、やっぱり知り合いなのか。
そうだよな、ナルミさんは二号機の登録者の兄の婚約者、のはず。
あら? じゃあシズフさんにとってナルミさんって義理のお姉さん?
……なぜだろう、シズフさんに同情してしまう。
「そ、そうです。今はヒューマノイドという可動式人型量子演算処理システムを利用して、人格をダウンロードして現代の情報収集を行っています」
『ああ、
らしいって言われてる〜。
『——いいだろう、ナルミがいるのならお前に同行しよう』
「わかりました。とりあえず俺の部下たちと合流しましょう。ラウト、大丈夫か?」
一応、戦う意思はなくなったみたいだけど、一緒にいるのが嫌、とか言われたらとりあえず二手に分かれるしか。
『特に問題はない。合流するならここのポイントに向かえ』
「あ、ああ、ありがとう」
360度モニターの一箇所に赤い点が出た。
すごい、こんなこともできるのか、ギア・フィーネ。
「ジェラルド、ランディたちと合流する。スヴィア嬢は問題ないか?」
『うん、困惑したままだけど、大丈夫。ついていくよ〜』
「よし、じゃあ行こう」
スヴィア嬢はまだ怯えているようだが、俺とラウトとジェラルド、新たに二号機——シズフさんも共に行動することになった。
まあ、スヴィア嬢が怯えてるのは、二号機と五号機の戦いぶりか怖かったからみたいだけど。
『そもそも反乱を企てておきながら、戦闘が怖いとは愚かすぎる』
「まあ、それはちょっと俺も思うけれども……」
『ヒューバートは操縦に慣れていないのか?』
秒でバレましたね。
その通りです。
「
『難しい……?』
『訓練も受けていなければそんなものだ。
特に貴様は強化ノーティスなのだろう? 絶対に一緒にするなよ』
そうですね、さっきのあの大量の火球をサラッと全部避けていたこの人ととてもじゃないけど一緒にしないでほしい……。
「あそこか」
村——キャンプ場みたいなのがある。
トニスのおっさんから事前に聞いていた、エドワード・ハニュレオの反乱軍の拠点の一つ。
近くに行くと
その隣につけて、ひとまずランディとトニスのおっさんと合流。
「スヴィア! スヴィアはどこだ!」
「スヴィア嬢、大丈夫か? 誰か呼んでるけど……」
「エド! あ、ありがとう」
「どういたしまして〜」
手を差し出して、スヴィア嬢をエスコートする様に地上に下ろしてやるジェラルド、マジ紳士。
しかも顔がいいからな。
スヴィア嬢も少しまんざらでもなさそう。
けれど、地上に降りると少しふらつきながら駆け寄ってくる男のもとへと近づく。
うわぁ、金髪紫目のいかにもな王子様っぽいイケメンだぁ。
俺と歳も近そうだし、多分こいつが——。
「エド!」
「スヴィア、大丈夫か!? こいつらはいったい……」
「あ、こ、こいつらは……アタシが結界を張り直しに行ってたら、
「なん、だと?」
い、言い方ぁ……!
さっきのを見たらまあ気持ちはわかりますけれども!
「ヒューバート様、ご無事のお戻りお待ち申し上げておりました。……これからいかがなさいますか?」
「うーん、スヴィア嬢を無事送り届けたし、このまま王都に向かおう」
「おや、目の前にお尋ね者の頭がいるんですし、手土産に生捕りにしてはいかがですか?」
「やめろよ、トニスのおっさん。こっちはことを構える気も、交渉する気もないんだ。行こう」
ランディはすぐに俺の前に跪く。
キャンプ地の人間たちが、瞬く間に武器を持って駆け寄ってきた。
持ってるのは剣や杖以外にも弓矢や槍。
ハニュレオの文明度もルオートニスやミドレ公国と大差ないようだ。
これなら一斉攻撃されても、俺の防御魔法で防げる。
相手をする必要はないだろう。
「待て!」
「なんだ? スヴィア嬢は無傷で送り届けただろう」
「貴様たちは何者だ! スヴィアに何をした!?」
お、さては聖殿の偉いヤツらみたいにあんまり話を聞けないタイプだなぁ?
スヴィア嬢を抱き締めて、キャンキャンと吠えてくるのはあのいかにも王子っぽい容姿の少年。
見た感じこいつがエドワード・ハニュレオ王子なんだろう。
周りの男たちも、スヴィア嬢がしがみつく少年を守るように固まっている。
ただ、その配置は訓練されている感じではないけど。
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