第25話 学院入学式(2)
寝てる時に襲われたのは怖かったけど、食事に毒が入っててもレナが一緒にいたおかげですぐ解毒してもらっていたし!
「やっぱりレナは優秀だよ。俺が毒殺されかけても、レナが側にいてくれたおかげで全部ことなきを得てるもん。ジェラルドとランディが強いから暗殺も全部未遂だし! 護衛騎士とか要らないよ、俺!」
「「そういう問題じゃありません!」」
「え!」
「ついに暗殺に慣れ始めてるヒューバート……可哀想に」
「え!?」
哀れまれた!?
なんで!
「ほら、ぐだぐだ話してないで足を動かして! 入学式に間に合わなくなりますよ!」
「「「はーい」」」
パティに言われて馬に乗る。
ふふん、俺も12歳になったので、乗馬許可が出たんだぞ。
レナと二人乗りだって許されてるんだからな。
「さあ、レナ様! 後ろに乗ってください」
「よろしくお願いします、パティ」
「…………」
もちろん俺は弁えているから百合展開の邪魔はしないぜ……。
レナと乗りたかったけど、俺は弁えているからな。
ま、本来ならボックスの馬車で行けばいいんだろうけど、父上と母上用、メリリア妃のボックス馬車以外はなんと聖殿が持って行ってしまったのだ!
父上は「俺用のボックス馬車作る?」って言ってくれたんだけど、今の王家にそんな予算はない。
無理して捻出してもらうより、民のためにお金を回してくれと頼んだ。
本当なら学院の入学パーティーもすんなよ、と思うがこちらは聖殿派の貴族が希望を出しているため中止にはならない。
俺の立太子お披露目パーティーは、入学パーティーに付随する形にして経費を節約。
やらない、という選択肢は聖殿派により王家が舐められ、立場を危うくしかねないのでそれは無理であった。
締めるとこ締めて、出すとこ出さないとダメってことだな。
「ヒューバート様、学院に入りましたらランディかジェラルドを必ずお側に置いてくださいましね。王太子となることから、より聖殿派のレオナルド殿下側から暗殺を企てる者が送り込まれることでしょう。それでなくとも殿下には護衛騎士がいないのです」
「うーん。うん、まあ、了解」
「なんですかその微妙な反応は!」
パティに怒られながら学院に辿り着き、そこからは一度男子寮、女子寮に別れる。
俺は一応、王子ということで二部屋が繋がっている一等部屋。
これが今日からの六年間、使う部屋となる。
「荷物が少ないから広すぎるな」
寝室の隣は客間兼執務部屋って感じ。
正確には勉強部屋だけど。
寝室横にはトレイと風呂場もあるし、きっと破格の待遇なんだろうな。
城の部屋が一部屋だけだから違和感。
いや、慣れなければ。
これ以上王家が舐められるのは困る。
「ヒューバート〜、講堂に行こう〜。入学式そろそろだよ〜」
「はーい」
ジェラルドが呼びにきてくれたので、部屋を出た。
今日はこのあと入学式と立太子式を学院講堂で行い、立食式のパーティーに参加する。
王太子のお披露目ということで、俺がメインなのだ。
「バックれてぇ〜」
「がんばれぇ〜」
実質、俺の社交界デビューだ。
俺というか、レナもジェラルドも。
貴族の関係性は6:3で王家派が少数派。
残りの一割は中立派だ。
そういう貴族たちを相手にするので精神的にとても疲れる。
「味方を増やさないと。ぼくとレナとランディも近くにいるから」
「うん」
で。
「制服のレナがかわいい〜〜〜〜」
「あ、ありがとうございますっ」
膝から崩れ落ちたよ。
ジェラルドとパティに両腕を持ち上げられて座り込むのは阻止されたけど。
はぁーーー、可愛い!
レナの髪色は薄いから、白い制服が本当によく似合う。
もう天使……いや、妖精?
いくら勉強してもレナの可愛さのすべてを表す単語が出てこない。
可愛い……可愛い……可愛い……。
「しかも髪型が違う!」
「は、はい。パティが編んでくれました……!」
右側に髪をまとめ、ゆるふわの編み込み!
いつもの左右編み込みも可愛いけど、大人っぽくなって爆可愛い!
「ヒューバート様も、とっても素敵です……!」
「うあああぁぁぁ、かわいい……! 俺の婚約者かわいいぃぃぃぃ」
「んもう、レナ様! 少し可愛さを抑えていただかないと! 殿下が悶絶して使い物にならなくなるじゃないですか!」
「ええ!? 整えてくれたのはパティなのに!?」
周りがざわざわするが、レナが可愛くて立ってられないのさ。
恐ろしい……いつか俺の心臓はレナの可愛さで砕け散ってしまうんじゃないのか?
「ヒューバート、新入生挨拶もあるんだからがんばって戻ってきて」
「えええぇん……」
間もなく始まる入学式。
『救国聖女は浮気王子に捨てられる〜私を拾ったのは呪われてデュラハンになっていた魔王様でした〜』では、回想でちょびっとしか描かれていない学院生活。
しかし、俺はこの学院生活の中でレナを裏切るきっかけ——平民の少女と出会うはずだ。
……平民の女には気をつけよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます