閑話1-2

 「それで、相手はどいつでどうやって負けたんだ?」


 「ああ、そうだったねぇ」


 マーサはフィルから聞いた話を思い出す。


 「確かパーティー戦って言ってたかねぇ。レオちゃんとフィルちゃんの二人とティナ…エルフの娘の四人組と戦ったとか」


 「エルフ…精霊魔法か。それなら、うーん…」


 「レオはフィル君と二人だけなのね…」


 二人はお互いに引っかかっている点は違うものの考え込んでいる。

 いくつになっても子離れしそうにない二人をマーサは微笑ましく見ていた。


 「こんにちはー。マーサ様遊びに来ました!」


 そんな中、元気よく錬金工房に新たな客?が入ってくる。卒業式を終えて、フィルの家に立ち寄った帰りのティナ達エルフの娘四人組だ。

 

 「あらあら、久しぶりだねぇ」


 マーサは笑顔で迎えるが、内心ではちょっと困っていた。

 ちょうど話題に上がった子達が連れ立ってきたからだ。


 「ちょっとフィルっちのとこに用事があったからついでに寄ったんですけど」


 「お客さんがいるぞー」


 「ち、ちょっと、ティナちゃんフィナちゃんもうちょっと静かに」


 「そうですよ。お静かにお願いしますわ」


 一気に姦しくなる店内。客がいることにティナとフィナをニーナとレナが窘めるが二人が気にした様子はない。


 「フィルっち? エルフの娘四人…」


 「まあっ」


 なにかを気付いた先客二人の雰囲気が変わったことにエルフ達が気付く。


 「ん? 白獅子の人が二人?」


 「おいおい嬢ちゃん達か、うちのレオを倒したってのは」


 白獅子族というのはそう多くいるものじゃない。

 そして、ここにいるということは探索者である可能性が高い。じゃあこの人たちはと四人が疑問を抱いているのを遮ってシンが絡むように話しかける。


 「うちのレオ?」


 「ほっ?」


 「レオさんのお父さまとお母さま?」


 「それって特級探索者っていうあのですか?」


 約一名良く分かっていない者がいるものの二人の正体を知ったエルフ達は驚きに目を見開く。


 「おう、レオの父のシンだ。よろしくな」


 「母のアレサよ」


 特級探索者の二人に挨拶をされた四人は戸惑いながらも挨拶を返す。


 「ところでレオが世話になったようだな、ん?」


 シンが凄みながら詰め寄ると、四人は縮こまってしまう。


「その辺にしときなさいな」


 揶揄っていることが分かっているマーサがため息をつきながら助け舟を出す。

 いい年をして若い少女を怖がらせるシンに呆れていた。

 アレサもそんなシンの頭を叩いて説教をし始める。

 

 「嬢ちゃん達、悪かったな。まああいつらと仲良くしてやってくれや」


 「この人がごめんなさいね。本当はレオの鼻っ柱をへし折ってくれて感謝してるぐらいなのよ」


 やがてひと段落付いたシン達が少女たちに詫び、去っていった。

 嵐が過ぎ去り、少女たちも疲れたのかぐったりしている。


 「シンちゃんはいくつになっても困ったもんだねぇ」


 そんな中マーサはいつもと変わらない雰囲気で紅茶を飲んでいた。


 「うちらも帰ります」


 そう言って帰って行ったティナ達を見送ったマーサは店番に戻る。


 「やれやれ、静かになったねぇ」


 マーサは明後日にフィルに話してあげようと笑みを浮かべる。

 その後も迷宮を探索し終わった探索者たちが立ち寄って買い物をしていくのを捌いて店仕舞いをする。外はすっかり日も落ちて夜となっていた。

 夕食を終え、入浴を済ませたマーサは寝る態勢に入る。


 (明日は久々に一人で仕事だねぇ)


 ちょっと寂しくなったものの、数百年を一人で過ごしてきたマーサには慣れたものだ。

 こうしてマーサはちょっと騒がしくも普段通りの一日を終えたのだった。

 


 

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