ニューラグーン国王への謁見

 ——ニューラグーン王国城


 応接間に通されることになった二人は、

案内人について行き、

やがて長い廊下の最奥にある部屋へ。


その入口にて。


「念の為、武器はこちらへ」


腰に携えた剣と脚に括った短剣を外す。

武器を置くと、身体が一気に

軽くなったように感じた。


——アインズさんはずっと

  こんなのを提げてたんだ……



案内人の騎士が去ったのを見て、

アインズが部屋の扉をノックした。


「お入りください」


応接間の中から返事が聞こえた。

深呼吸をひとつして、扉開けた。


「失礼いたします。

ブライトヒルから参りました、

アインズと申します」


その場で、国王らしき男性に頭を下げ、

アインズが名乗った。


「お、同じく、ユウキと申します」


見様見真似でユウキも名乗る。


ブライトヒルの王よりも若く見える。

容姿的には五十代くらいだろうか。


地位を引き継いでから

日が浅いのだろうと想像させる。


「どうぞ、そちらへおかけ下さい」


「「失礼致します」」


着席の許可に対して一礼し、

椅子の左側から着席。


ユウキは無論、アインズの模倣である。


動作を終えると、早速アインズが口を開いた。


「本日は、文も出さず唐突に

申し訳ございません。

大変不躾な訪問、ご容赦願います」


「いや、構いませんよ。

して、どの様な要件で?」


──王様も、暇じゃないんだろうな


「本日は……そうですね、

まず経緯からご説明致します」


王とその左右に立つ近衛兵が

聞き耳を立てる中、アインズが経緯と

目的の説明を開始。


「ご存知かと思いますが、現在、

鎖によって地表に月が固定され、

異形のバケモノが出現しております」


「我が国の騎士からも、

犠牲者が出ています」


「……我がブライトヒルでも、

バケモノの襲撃で被害が出ております」


「おっと、お話を遮って申し訳ない」


「いえ。そこで彼──ユウキの発案で、

私共は現在、その鎖を全て破壊しようと

旅に出たところでございまして」


「旅?」


そう聞き返す王の視線はアインズではなく、

ユウキに向いていた。


それに気付いた彼は、緊張しながらも口を開く。


「はい。鎖を破壊し、月を解放する

事が出来れば、バケモノの出現を

止めることが出来るのではないかと、

そう考えての事です」


「なるほど。確かに、因果関係は不明ですが、

月が落ちてからバケモノが現れた。

やってみる価値はありそうですな。

いや、しかし……」


ユウキの話に賛同したニューラグーン国王だが、

一つ、大きな疑問が生じたようである。


顎に手を当て、首を傾げて再び問うた。


「そのような壮大な目的の旅を、

お二人で?」


「……ええ、

旅に出ているのは我々のみです」


「何故です? 

もっと大々的に部隊を出せば、

効率よく進むのではないですか?」


「それに関しましては……

本国の防衛も必要ですし──」


「貴国ほどの騎士団であれば、

と思ってしまいますが」


「それは──」


「アインズさん」


疑問を解消しようとする王。


そろそろアインズが返答に困り始めた時、

彼女の言葉をユウキが遮った。


「僕が、言います」


「うん、じゃあ……お願いね」



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