突然の来訪者

 ——ニューラグーン王国城、城門前


 ニューラグーン国王への挨拶と、

増援の獲得と言った目的のため、

王国城へとやってきた二人。


騎士であることの証明のため、

両名とも装備を身に着けての訪問である。


事前に文書などを送った訳ではないが故、

まずは謁見の交渉からする必要がある。


「恐れ入ります」


「何でしょう」


アインズを先頭にして、門番の騎士に話しかける。


「私、ブライトヒルから参りました、

王国騎士団のアインズと申しますが」


彼女が名乗ると、細かった門番騎士の眼が見開いた。

思わぬ客人に驚いたからだ。


「なんと、ブライトヒルから?」


疑問を呈した彼に、アインズは自身の剣に刻まれた

ブライトヒル王国の紋章と、

王国騎士団の紋章を見せた。


これを持っていることが、一応の身分証明となる。


——あ、これか


メーデンがユウキに贈った剣と防具にも、

同じ紋章が刻まれている。


「急で申し訳ないのですが、

国王様にお会いしたく……

今からなんとか謁見を許可願えませんでしょうか」


「少々お待ちくださいませ」


門番が少し戸を開け、

その向こう側に居た騎士を呼び寄せた。


「そこの者、少し良いか」


重厚感のある足音を鳴らしながら、

一人の騎士が近づく。


二人が小声で何か話しているのを見守る。


「そういう事だから、確認を頼む」


「御意」


了承の返事をした後、

再び重い足音を鳴らして離れて行った。


「ただいま確認いたします。

もう少々お待ちください」


「ええ。ありがとうございます」



 それから数分、何もない時間が流れた。

その間にユウキは、周辺を観察した。


故郷では見ない景色ばかりだからだ。


大きな荷台をひいた馬車が次々と到着している。


そのどれもが決まった場所で一時停止し、

守衛の騎士に書類を提出している。


入城許可書や積み荷情報書の類である。


許可を受けていない馬車は

追い返されるのだろうが、

今のところそう言った事件は

起きていないようである。



——来た


扉の向こうから、

再び例の足音が聞こえた。


「お待たせいたしました、アインズ様。

どうぞお入りください」


「感謝いたします」


アインズが一歩踏み出した。

ユウキもそれに倣うが、

そんな彼を見て門番が問う。


「ところで、貴方様は?」


「この子は私の連れです。

騎士見習い中でして。

ほら、紋章をお見せして」


「はい」


先ほどアインズがやったように、

剣に刻まれた二種類の紋章を見せる。


「なるほど。お引止めしてしまい

申し訳ございません。お進みください」


「ありがとうございます」


礼の言葉と共に軽く会釈をし、

アインズの背中を追って城へと

足を踏み入れた。

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