太陽の岩戸隠れ

 大勢の住民に抵抗できるはずも無く、

巫女は、いとも容易く捕らえられた。


裏切者を捉えた。


邪神を討ち取った。


そんな報告を叫びながら、

暴徒がクライヤマを練り歩いた。


散々痛めつけられた

巫女の意識は朦朧としている。


抵抗はおろか、声を上げる事さえ、

彼女にはもうできなかった。


「嘘つきだったのか」


「私たち、散々尽くして来たのに」


報告を聞いた住民は、

口々に恨み言を吐き捨てる。


それだけ、巫女に対する

疑念が広まっていたのだ。


もはや、彼女の心配をする者など——


「リ、リオ……⁈」


——この少年、ユウキを除いて存在しない。


「ユウ……キ……?」


この場においては異質な、

自分を心配する声。


それを聞いた巫女

——否、リオは、枯れた震える声で

声の主を呼んだ。


「リオ! な、なんで、こんな! 

放せ! リオを放せよ!」


大きな籠に、無造作に入れられたリオ。


数人の大人がそれを担ぎ、

ある場所へと向かう。


少年ユウキは彼女を救わんと、

その進路上に立ちふさがった。


しかし——


「どけ、小僧!」


「ぐあっ⁈」


もはや、何かに憑りつかれたような

顔の男によって、蹴り飛ばされてしまう。


通り過ぎる人々に踏まれたり、蹴られたり。


巫女だけでなく、

彼女に味方する者に対しても、

酷い仕打ちが待っていた。


「リオ! リオ!」

「……っ‼」


地に倒れた少年と籠がすれ違う一瞬。

リオはとっさに胸のさらしを剥いだ。


胸の間から自身が大切にしていた

日長石の首飾りを出し、籠の隙間から落とした。


少年はそれを、咄嗟に懐へしまった。


「ま、待ち……やがれ!」


あばらが痛んだが、

ユウキは必死に立ち上がった。


その頃にはもう、

籠は何メートルも離れていた。


口の中には鉄の味と、

砂の触感が広がる。


それでも彼は、追いかけた。


だが——


「よし、そっちから押せ!」


「いくぞ、せーの!」


体格の大きな男たちが数人で、

大きな岩を動かした。


日の巫女は、

巨大な岩戸に監禁されてしまった。


「リオっ‼」


どうすることも出来なかった。


いくら探しても、リオの救出を

手助けしてくれる住民は居なかった。


ただただ、泣いていた。


岩戸に縋りつき、ただ、ひたすらに。

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