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その後、心肺蘇生法や魔法の道具の使用や降霊術など何だかんだ行った結果、凛太郎さんは息を吹き返した。
不死鳥の如く蘇ったそうだ。
つまり一度死んでいたらしい。
生き返れたのは、龍子さんとの愛の力だそうだ。
その龍子さんに殺されかけた事は、もう忘れているらしい。都合のいい脳みそだなと思いました。
そんな訳で、本格的な会議をする為、僕達は電車に乗って自分達の住む街へと帰る。
そしてそのまま、凛太郎さん宅にて会議を行う事となった。
部室を使わないのは、この一件が解決するまで全員学校を休むと凛太郎さんが豪語した為だ。休むのに部室だけを使わせてもらうのは気が引ける、との事。
当事者の一人である僕が言うのも角が立つけれど、『学生の風上にも置けない奴だな』と思いました。
そんな訳で、僕達ゴーストドール除霊研究部の面々は、ぞろぞろと凛太郎さん宅へと向かう。
凛太郎さん宅へ……。
え!?
あのゴミ屋敷で会議するの!?
以前の話を聞く限りでは、三人衆の面々は凛太郎さんの家に行った事がなさそうだったけれど……大丈夫なんだろうか?
特に、花鳥さんは潔癖症だから……あれ?
「花鳥さんは?」
「花鳥なら、準備がある言うて一旦家戻ったで」
爆睡している亀美さんを引き摺っている虎白さんが答えてくれた。
準備……?
何の準備なのだろう? ひょっとして、凛太郎さんの家が綺麗だと思って、お泊まりの準備でもしているのだろうか?
一歩中へ入れば即帰りたくなる事間違いなしなのに……気の毒だな。
そして遂に
凛太郎さんが鍵を取り出し、解錠。
扉が開く。
ゴミ屋敷への扉が……。
果たして……虎白さんと亀美さんは、広がる光景を見て、どういう反応を見せるのか? 楽しみである。
「ったく、あいっ変わらず汚い家やのぉ! 借りてるアパートの人にちゃんと頭下げろや? エグいでコレ、ホンマに」
あれ?
「何を言っている。今日はちょっと片付けしている方だ。朝、ゴミ袋一つ捨てたからな」
「はぁ? コレで? こんだけのゴミ溜まりで、ゴミ袋いっちょ捨てたからって何やねん。うわっ、ゴキがおる! 何とかせぇや凛太郎!」
「ゴキとは共存共栄すると決めている」
「何やそれ」
あれれ?
「ぐぅぅー……うぅん? うぅー……ぅあぁあっ!! 臭いっ!! りーくん家みたいな匂いがするっ!!」
「おっ、起きたか亀美。正解や、ここ凛太郎ん家やで」
「何でっ!? 何でここにっ!?」
「何でも糞もあるかい、凛太郎がここでやろ言うたからに決まってるやろ」
「愚策にも程があるよぉっ!!」
「何言うてんねん、お前かて納得してたやろが」
「寝ぼけてたんだよっ!」
「寝とるんが悪い」
「うわぁーん!! せっかく忘れてたのにぃー! またこの地獄へ足を踏み入れちゃったよぉ!! 二度と来たくなかったのにぃー!!」
あれれれ?
ひょっとしてこの人達……この家に来た事ある?
ん? それじゃあひょっとして、花鳥さんの準備……というのは……。
「かーちゃんは!? かーちゃんはどこなの!?」
「花鳥は何やら準備や言うて帰ったで」
「えぇー!! 逃げた! きっと逃げたんだ! ずるいっ!」
「んな訳あるかい……まぁ、話でもしながら待っとこうやないか。ほら亀美、ここ空いてんで」
「そこさっきまで真っ黒でネバネバしていた液が漏れ出してた袋が置いてあった所じゃんっ! やだよそんな所座るの!!」
「ん? ほなこの椅子の上座るか?」
「ゴミ袋を椅子とか言わないでっ!」
「ゴミ椅子も座り慣れりゃ、座り心地ええで」
「慣れたら座り心地良くなっても衛生的には悪くなる一方だもん!!」
「往生際の悪いやっちゃなぁ……」
「きゃーっ!! こーちゃんこーちゃんっ! ゴキ! ゴキがいるよぉー! あ、こっちにも! うわっこっちにも! もうやだぁー! 何とかしてよぉー!!」
「お、久しぶりやなぁ、元気にしとったか? ゴキ美にゴキ丸にゴキ郎……それとお前は……ゴキ助か、お前は相変わらず元気そうやなぁ。見てるとこっちも元気になってくるわ」
「ならないよっ!! 何でゴキ見て元気になってんのさっ! 何でペット気分で名前つけてんのさっ! もうホントむりぃー! カメミ帰るぅー!!」
めちゃくちゃな言われようだった。
当然……この一連の流れは、家の主である凛太郎さんの耳にも届いており……。
「そ……そんなに言わなくても良いじゃんか……俺だって一生懸命……ぶつぶつぶつぶつ……」
凹んでいた。
片や隣の部屋の龍子さんはと言うと……。
「だ、だだだだ大丈夫よね? 私の部屋は……大丈夫。きっと、大丈夫だもんっ。うんうんっ」
いや……あなたの部屋も似たり寄ったりですよ?
仕方ないな……。
「じゃあ、少しの間、皆でこの部屋の掃除を……」
「その必要はありません! 竜生くん!」
玄関の戸が激しく開く音がした。
この声は……。
現れたのは――――
「私に任せてください!!」
宇宙服を着た花鳥さんだった。
もう一度言います……宇宙服を着た花鳥さんだった。
宇宙服です。
宇宙服を着てるんです。
ここは月なのかと錯覚してしまいましたよ。
てゆーかその格好でここまで来たの!?
「毎度毎度、私はこの家に苦渋を舐め続けさせられているんです!! 今日こそは! この家を完璧に綺麗にしてみせます!!」
「おぉー! 凄い心意気やなぁ!」
「かーちゃん! 救世主だぁー!」
「頼んます! 宿主の俺の分までお願いします!」
「ついでに私の部屋もお願いします!!」
最後二人がおかしな事言ってるなぁ……。
てゆーか会議は? ミーティングは? ゴーストドールは? 僕呪われてるんだけど? 死期が刻々と迫ってるんだけど?
「先ずはですね! このゴミ袋の山を何とかします! これらを全て外に出して……」
ひょいっと花鳥さんが持ち上げた袋に、でっかいクモが着いていた。
ゴキをハントする。超でっかいやつ。
僕も苦手なのでついつい後ずさりしてしまった。
「…………」
花鳥さんがフリーズしてしまった。
宇宙服を着てるので、表情までは見えない。
生きては……いそうだけど……。
「花鳥……さん……?」
ぐらりと、花鳥さんの身体が傾いた。
どしゃーんっ! という凄い音と共に、彼女はゴミ袋の山の中へと仰向けに倒れたのだった。
「花鳥さん!?」
「花鳥!?」
「かーちゃん!?」
慌てて駆け寄ると、そこにはゴミ山に埋もれた花鳥さんの姿があった。
泡を吹いてピクピクと痙攣している……。
異常な程潔癖症な人なのに……可哀想に……。
この一連の流れを経験した事で、僕は思ってしまった。
この人達と協力して……本当に大丈夫なのかなぁ? と。
余談だが。
この家に入った直後から、ゴーストドールである衣ちゃんがガクガクと震え始め。
『ここは綺麗な所、ここは綺麗な所ここは綺麗な所ここは綺麗な所ここは綺麗な所ここは綺麗な所ここは綺麗な所ここは綺麗な所……』等と、壊れたラジオのように呟いていた。
きっとトラウマが蘇ったんだろうなぁ……。
つづく。
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