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「はぁ……はぁ……無事、巻けたか……」
あの後、パトカー三台と警官六人に追い回されたけど、無事逃げ切る事が出来た。
一市民に容赦ないな……。
僕を捕まえてたら百パーセント誤認逮捕なのに……その熱意を本物のストーカーにぶつけなよ……力振るう場面間違えてるから……。
まぁ、僕が疑わしい格好してたのも悪いんだろうけども……。
とりあえず。
「はぁ……疲れた……」
ヘトヘトだ……。
流石は警察だった……しつこいったらありゃしない。
逃げても逃げても追い掛けてきて……。
危うく、怪談マニアさんが言っていたデマが真実になる所だった……。
あー……逃げ回ってたら、もうこんな時間だ……。
今日は休もう……。
ゴーストドールについて本格的に動くのは、明日からでも良いか……。
泊まろうと思うホテルに目星は付けてある。
「今日はゆっくり休むとしよ…………うっ!」
身体が重いっ!
頭がボヤーっとして、目が霞む……。
ゴーストドールの呪い。
闇雲に走り回ったせいか……少し気を抜いたら、すぐコレだ。
「……はは……こりゃ、動けなくなる日も近いかな……」
やっぱり、一刻も早く、動かないと……。
警察と鬼ごっこしている場合じゃないんだよ……こっちは。
今からでも……少し、動いておくことにしよう。
一先ずホテルにチェックインを……いや、いざ部屋に入ってしまったら、動きたくなくなってしまうかもしれない。こういうのは、決断した直後からの行動が最適だ。
「行こう……こうして立ち止まってる間にも、凛太郎さん達の手が忍び寄っているかもしれない……もう……本当に、時間がないんだ……」
「ふむ……せやけど、自分呪われてて、もう身体重々やろ? 今日はゆっくり休んでた方がええんと違うか?」
「そうも言ってられないんです……何としても、僕が死ぬ前に、衣ちゃんを成仏させてあげないと……。見つかったんです、この絶望的な状況を引っくり返す……手だてが」
「ほぉ……誰に聞いたんや?」
「怪談マニアさんです」
「怪談マニア? 何やそれ、変わったやっちゃなぁ」
「変わってるって……貴方ほどじゃないですよ。虎白さん」
「……せやろか?」
「はい、そうで……す…………ん?」
虎白さん……?
え?
「やっぱ呪われとってんな。自分」
「――――――っ!!」
僕は咄嗟に逃げ出した。
何で!? 何でだ!? 何で虎白さんが!?
何故居場所がバレたんだ!?
幾ら何でも、早過ぎるだろう!?
鳥か!? いや違う、それには細心の注意を払っていた。
ならば犬や猫? それも違う、そうだった場合伝わるのが早過ぎる。
何処だ? 何処から情報が漏れた!?
「凛太郎とだけ一緒に仕事してなかったんが仇となったな」
「っ!!」
速い! あっという間に追い付かれた!?
うおっ! 危なっ! この人、容赦なく蹴り入れてくるな!
というか、凛太郎さんと!? 一体どういう事だ!?
「ウチら相手に、逃亡する奴が陥りがちな失敗や。誰しもが、亀美の異質な耳の良さの話を聞いたら、そっちばかり意識してまう……それと同等……いや、ややもするとそれ以上の探索能力を持っとる化け物がその背後におる事に誰も気付けへん」
「亀美さん以上の……探索能力……?」
「いや、正確には、それがバレんよう立ち回っとんやろなぁ。ミスディレクションって奴や、ほら、手品師がよう使うスキルやな」
「ミスディレクション……」
「最近やと、とあるバスケ漫画の主人公が使っとったな。影の薄い主人公が」
「分かってますし、知ってます」
僕、それでミスディレクションの事知ったし。
「おかしいと思わんかったか? あれ程、自分を追い掛け回してきていた警察が、急にピタリと追うんやめた事に、違和感持たんかったか?」
「え……」
確かに……言われてみれば、妙だ……。
巻くには巻いたけど、そこで捜査や包囲網が打ち切られるのはおかしい。
見失っても、捜索を続けるのが普通だろう。
……と、いう事は、まさか!!
「そのカラクリ教えたろか?」
「もう良いです……分かりましたから……」
凛太郎さん……あなたは本当に――――恐ろしい人だ。
「この街の警察と、凛太郎さんの間に――繋がりがあったという事ですよね」
「正解や」
つまり――あの警官に声を掛けられた瞬間、僕は詰んでいたのだ。
ストーカーの件も恐らくデマ、元々あの警官は――僕を探していたのだ。
やられた……見事に上を行かれてしまった。
「竜生……自分は確かに凄い。ウチが認める、数少ない男の一人や……せやけど今回に関しては――――相手が悪かったのぉ!!」
「っ!!」
凄まじい速さで接近し、拳を放ってくる虎白さん。
やっぱり強いなっ! この人!!
「がはっ!」
虎白さんの拳が、僕の腹部へとめり込む。
あまりの威力に後方へ激しく転がってしまう僕。
痛い……。
背負っていたリュックサックがクッション代わりになって助かった……。
「竜生には悪いけど、凛太郎が出し抜かれる姿は想像つけへんわ。情報戦も、何もかもがあの男の方が自分より上やった……それだけの話や。悪いけど――しょっぴかせて貰うで。ウチは手荒やから、骨の五本か六本折れるのは覚悟しいや」
「……それは……勘弁願いたいですね……」
僕は応戦しようと身構える。
しかし――
「あれ? ひょっとして自分……応戦しようとしとる? やめときやめとき――――絶対無理やから」
「っ!?」
虎白さんの拳が、何十個にも映る。
その手数の速さを前に、僕は防御の構えすら取れず、殴られる。
「……がはっ!」
為す術なし――とはまさに、この事だ。
強い。
これが、中宮木凛太郎ハーレム三人衆――実践担当者――西野虎白の強さか……!
敵に回して改めて思う――この人も、充分恐ろしい。
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