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中宮木凛太郎ハーレム三人衆。
その存在は、僕達が通っている
街ゆく人に『中宮木ハーレム三人衆』を知っているかインタビューを取ったら九割以上の人が『知っている』と答える事だろう。
所謂、有名人というやつだ。
良くも悪くも、だけれど。
彼と彼女達には、色んな噂が呟かれている。
つい先程凛太郎さんは、僕が密かに行っていた活動を、つらつらと並べ立てていたけれど、そういった活動の数は、彼らの方が多いんじゃないか? というのが僕の印象だ。
きっと彼、彼女達は、僕の目の届かない所で沢山の人を救っている。いる筈だ。
良くも悪くも。
まぁ……警察に目をつけられているって話は本当らしいから、一概にそれが良い活動と呼べるのかは、疑問符が打たれる訳だけれども。
とにもかくにも、昼休み。
僕はその、ハーレム三人衆とその中心人物である凛太郎さんに連れられ、理科室にて会議を行う事になった。
『対ゴーストドール会議』という、怪しい会議に参加する事となった。
その開催場所が理科室、というのにも理由がある。
僕は先に述べたような活動を、あまり周りの人達に知られたくない。そこを配慮して、凛太郎さんがわざわざ、昼休みという時間帯なら人の少ない理科室を会議室に選んでくれたという訳だ。
凛太郎さん曰く、僕の活動内容については、ハーレム三人衆のメンバーにすら話していない、との事。
守って欲しい秘密は守ってくれる人なのだ。
守りたい秘密はどんな手を使っても見破ってくる人だけれども……。
ここで一つ補足しておくと、正確にはハーレム三人衆の三人には、僕の活動の一定数はバレている。何故なら、一緒に問題解決に動いた事があるからだ。
当然、凛太郎さんもそれを知っている筈だ。
だけどまぁ、それぞれの活動はそれぞれ該当する問題しか知らない筈なので、必要以上に認知されない事を、凛太郎さんが気にかけてくれたのだろう。
さて、そんな訳で会議は開催される。
口火を切ったのは、ゴーストドールに呪われ青ざめた表情の凛太郎さんだった。
「それでは、『第一回 対ゴーストドール会議』を開催する。先ずはメンバーそれぞれの自己紹介から始めようか」
自己紹介っ!?
そんな、社会人の新人研修のグループワークみたいな事するの?
「先ずは名前。そして学年。次に血液型。最後に趣味は何か。そうだな、先ずは俺からいこうか」
そんな訳で、全員が顔見知りの中、今更感の漂う自己紹介が始まった。
「俺の名前は、中宮木 凛太郎。二年だ。血液型はO型。趣味は掃除! よろしく頼む!」
「掃除?」
え? 今この人、趣味は掃除って言った?
聞き間違いかな?
掃除が趣味? あんな汚部屋に住んでるのに?
ギャグなの?
でも誰も笑ってない。まさか本当にそうなの? 掃除が趣味なの?
あの汚部屋で?
嘘でしょ?
それともただ滑っただけ? それなら納得出来るけれど……。
「という訳で次は……虎白から順番に、時計回りでいこうか」
僕の困惑を置いていくように、凛太郎さんが会議を回していく。
「おっけぇ」と、三人衆最初の女性が返事をした。
「ウチの名前は、
こ、殺……んんっ!?
「言うとくけど、タイマンなら未だかつて負けた事ない。よろしゅう頼むわ」
虎白さん……相も変わらず、野蛮な事言うなぁ。
殺し合いって、そんな言葉フィクションの世界でしか耳にしないものだと思ってたけど…………もしかして、した事あるのかな? 殺し合い。趣味で。
流石に冗談だよね?
「ふむ。なかなかにインパクトのある自己紹介だったな。はい、では次」
「はい、私ですね」と、次の女性が礼儀正しく挙手をした。
「私の名前は、
花鳥さんの両手には、分厚い手袋がいつも装着されている。
何故か? 尋常じゃない程の潔癖症だからだ。
本人は『ちょっと』と言っていたが、それは自虐だろう。ちょっと所ではない。花鳥さんの潔癖症がちょっと、という言葉で済まされるのであれば、僕らは今、汚物まみれだ。
しかし、この人は本当に魅力的だと思う。
重度の潔癖症と、変人っぷりさえ無くせば……の、話だが。
何にせよ、花鳥さんの趣味が掃除――というのは納得出来る。
誰かさんとは違って。
「お、花鳥は掃除が趣味なのか。俺と同じだな。趣味が同じという事は、話がこれまで以上に合いそうだ。またいつか、掃除談義しようぜ」
「はい、是非とも」
凛太郎さんのは絶対違う。
というか、花鳥さん『是非とも』って……この三人はひょっとして、凛太郎さんの部屋に入った事がないのだろうか?
「さて、次は亀美、なんだけ、ど……おいっ、亀美」
「ぐぅー……ぐぅー……」
そして、自己紹介は三人衆最後の一人へ。
現在進行形で、寝ている、最後の一人へ。
「まったく……」と大きく溜息を吐きつつ、凛太郎さんが近寄って行く。
「おいっ! 亀……」
「しぃー、私に任せてください」
花鳥さんに、何か手があるようだ。
寝ている最後の一人の耳元で、何かを囁いた。
すると次の瞬間――
「ちょっ! チョコレートっ!!」
と、勢いよく立ち上がりつつ目覚めたのだった。
あーなるほど。餌で釣った、的なやつか。
「
「はい、よく出来ましたね」
「わーい! チョコだチョコだぁー! おいしぃー! 頭がよく回ってくるぅー! 幸せぇー!」
ものすごく幸せそうな表情で、チョコにかじりつく亀美さん。
何で釣ったかは明白だった。
でもこの人、こんな感じだけど、凄い人なんだよなぁ……めちゃくちゃだけど。
「お前、ホンマにチョコすっきゃなぁ? 太んで?」
「へーんだっ! カメミはこーちゃんとは違うもんねー! 食べても食べても太んないんだもんねー! 羨ましいかー? やーい!」
「喧嘩か? 買ったろうやないか!」
虎白さんの一言から。ほら、騒がしくなって来た。
本当に、この人達は……。
こういう姿だけを見てると、とても先輩とは思えないんだよなぁ……。
「静かにしろ、お前ら。まだ自己紹介は終わってねぇんだぞ。まだ――一人、残ってる」
凛太郎さんが、そう声を発した瞬間。
ピタリと、騒がしい声が止まり。四人の視線が、一気に僕目掛けて集まった。
最後の一人――即ち、僕だ。
いやはや……こうして、改めてこの四人が勢揃いしている光景は、何と言うか……その、緊張するなぁ……。
自己紹介……しなくちゃいけないんだろうなぁ。
仕方ないか。
「僕の名前は、
「おう、よろしゅう頼むわ」
「ありがとう。心強いです!」
「なーくんも参加するんだぁー。お願いしまーす」
快く、受け入れてくれたようだ。
「そんな訳で、この五人でゴーストドールの呪いに挑む事なる! 皆頼んだぞ! 俺を――助けてくれ!!」
「おおっ!」という返事が揃う。
『助けてくれ』――この言葉を簡単に言える程度には、このメンバーの仲は深いんだなと思いつつ、対ゴーストドール会議は本格的に始まったのだった。
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