第5話 年老いた老女の話

はい、えぇ、そうです。

娘に相違ありません。

あんな優しい子が、そんな恐ろしいことに加担することになるなんて。

きっと何かの間違いだと信じたいです。

ですが、死体があり、娘婿もそのことを認めているのなら、きっとそれが真実なのでしょう。

捕まるのは、裁かれるのは、娘もでしょうか?

それとも、娘婿だけでしょうか?

言えない。

そう、そうですよね。


え、娘婿について、ですか?

知人からの紹介でした。

それで、お見合いをして一緒になったんです。

仕事の関係で、国のあちこちを転々としている方でしたから、中々嫁がみつからず、うちに話が来たんです。

娘も年頃でしたし、お見合いをして気があったようで。

婚約までスムーズすぎるほどスムーズに進みました。

そして、娘達は結ばれました。

結婚式はささやかなものでした。

なにしろ貧しい家でしたので、あまり派手なものは行えず。

娘婿も国をあっちに行ったり、こっちに行ったりで。

友人たちとの都合を合わせるのも難しかったのです。

娘婿のご両親もすでに亡くなっていた、というのもありました。

出席したのは、母である私だけ。

娘と娘婿と、そして私の三人でお祝いをしたのです。

式を挙げてすぐに、娘婿は仕事のために旅立たねばなりませんでした。

娘は当然それにくっついて行くことになっていました。

それから、もう何年たったでしょうか。

いきなり手紙がきて、帰ってくるって書いてありました。

そして、少しして、手紙通りに娘たちは帰ってきたんです。

手紙が届いてから、二ヶ月後でした。

でもまさか、こんなことになっているなんて。

話してくれれば良かったのに。

包帯?

娘婿が帰ってきた時は、顔の怪我はすっかり治っていましたよ。


……それで、娘婿が手にかけた人は、何処のどなただったのでしょう?


はぁ、そうですか。

まだ調べている最中なんですね。


あ、あらあら、起きちゃったの。

すみません、孫にミルクをあげる時間ですので。

娘も話を聞くということで連れていかれたので、ヤギの乳をやっています。

最初の子は残念なことにしてしまったけれど。

でも、お陰でこの子が来ましたから。


えぇ、それではお気をつけて。

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